「リファラル採用」は既存の採用モデルを破壊するのか?

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ここ数年、大手企業を中心に「リファラル採用」の動きがじわじわと広がっています。

「リファラル」とは、「紹介・推薦」という意味。つまり「リファラル採用」とは、自社の社員に、「この人はうちの会社にぴったりだ」「この役割において適任だ」と思える友人や知人を紹介・推薦してもらい、選考するという採用手法を指します。

より自社に合った有能な人材が低コストで採用できるとあって、「従来型の人材採用モデルを破壊する」とも言われているリファラル採用。『Linked IN』や『Wantedly』などのプラットフォームやサービスも徐々に浸透してきている。

(株)リクルートキャリアにおいて新卒採用のリファラル採用促進サービス『GLOVER Refer』(グラバー・リファー)を展開する中山好彦氏に、リファラル採用の現状と今後の見通しを伺いました。

(聞き手:ルーセントドアーズ株式会社 黒田真行)

中途採用において広まり、新卒採用においても活用の動き

リファラル採用の動きは、米国から広まりました。10年ほど前から、シリコンバレーのIT企業を中心に導入の動きが高まり、米国の採用コンサルティング会社CareerXroadsが大手企業71社に対して行った『Sources of Hire2015』調査によると、採用者全体の22%をリファラル採用が占めるほどになっています。

その動きが、日本においても高まりつつあります。数年前から、中途採用を中心にリファラル採用を取り入れる企業が増えており、ここにきていよいよ新卒採用にも広がっています。

従来の一般的な採用の手法は、ナビサイトなどのメディアを通して、自社に興味を持つ学生をできるだけ多く集めて大きな母集団を形成し、その中から自社に合った学生を選抜するというもの。

一方、社員からの紹介・推薦によるリファラル採用においては、エントリーから内定までの「歩留まり率」が非常に高い点が評価されています。リクルートキャリアの『GLOVER Refer』を活用している企業においては、新卒、中途採用とも、歩留まり率はこれまでの一般的な採用手法に比べて約3倍となっています。その理由について、中山氏は次のように分析します。

“カルチャーフィット”は就職先、転職先を決めるうえで重要な要素。自社のカルチャーを理解している社員が、自分の人脈の中から『自社に合う人』を見極めたうえで連れてくるので、マッチング精度が高まりやすいという特徴があります。

応募者側から見れば、外からは見えづらい社風、職場の雰囲気を、社員を通じて知ることができ、不安を払しょくできるという側面もあります。また、社員が自らの意思で、採用選考までをフォローし続けてくれるという点も挙げられます。

自分の友人・知人のために貢献したい、自社のために貢献したいという意欲が、歩留まり率の高さに大きく影響していると考えられます。

社員による推薦情報が、「学歴ラベル」を覆す

従来型の採用モデルにおいては、特に新卒採用において、たとえば「学歴ラベル」で選考の優先順位をつける場合があるようです。「自社で活躍している人材」を分析した結果、有名校の出身者が多く、「有名校=いい人材」とパターン認識されていたということも聞きます。

または、特定の団体や部活動の学生を優先的に選考するようなこともあるようです。リファラル採用は、そういったラベルによる採用の傾向を壊す、と見られています。
社員が紹介・推薦してくれる人材は、自社のカルチャー含めより深い部分でのマッチングが見込め、より自社で活躍してくれる可能性が高い…ということを人事担当者が思い始めているようです。

例えば、『AIの知識がある学生を採用したい』とのニーズを持っていた、ある自動車メーカー。その企業においては、新卒採用において『学歴バイアス』の傾向が強かったのですが、ある社員が推薦した学生はこれまであまり採用をしてこなかった学校の学生でした。

しかし、その学生は、学生自作によるレーシングカーのコンテストにおいて優勝した経験があり、その実績をもとに推薦を受け、人事の目に留まったのです。もしも出身大学名だけで判断されていれば、そうはいかなかったかもしれません。社員による精度の高い人物情報によって、「学歴」というラベルがひっくり返った好例です。

中山氏は以前、「CODE VS(コードバーサス)」という、学生プログラマ日本一を決定するプログラミングコンテストに関わっていた経験があります。ある年の優勝者は、有名校の学生ではありませんでしたが、彼のプログラミング、そして表彰されている姿を見たある大手IT企業が、「彼をぜひ採用したい」と名乗りを上げたのだとか。この経験が、『GLOVER Refer』を推し進める原動力になっているそうです。

人の魅力は学歴などの“ラベル”だけでは表現できません。AIの知識、プログラミング能力などといったさまざまな情報があり、その人ならではの素晴らしい魅力があります。もちろん、文系学部でも同様に、その人を表現するさまざまな有益な情報があるはず。こういう情報を逃さずキャッチできるリファラル採用サービスでありたいと思っています。

リファラル採用を活用すれば、採用コストは大幅に軽減する

採用コスト面においても、リファラル採用は注目を集めています。

『GLOVER Refer』の利用料は年間120万円。メディアへの掲載費用やイベント出展費用など、母集団形成のために使われる新卒採用の費用と比べると、多くの場合は費用が削減できると思います。

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『GLOVER Refer』では、専用のサイトに人事画面、社員画面、応募者画面が作られ、社員への協力依頼や、社員からの招待メッセージ送信、返信状況などの紹介管理などをすべて一元で行うことができます。

なお、社員から友人・知人への招待メッセージは、メールだけでなくFacebookメッセンジャー、LINE、TwitterなどあらゆるSNSの利用が可能です。このツールを通じて、ある情報サービス会社では、年間約40名のリファラル採用に成功しました。つまり、1人当たりの採用単価はわずか3万円にまで下がる、という計算になります。

とはいえ、『料金が安いから』という理由でリファラル採用に踏み切っても、成功するとは限りません。確かに、純粋な採用コストは従来型モデルに比べると大幅に下がるケースが多いと考えられますが、自社の社員が紹介・推薦、フォローなどに割く労務コストを考えると、トータルコストはあまり変わらないかもしれません。

それに、リファラル採用を導入すると、人事の新しい業務が増えます。社員への協力を仰ぐだけでなく、どういう人材を求めているのかを的確に伝え、能動的に動いてもらう必要があります。紹介・推薦方法も統一化、交通整理をしないと、バラバラと返信が来てリファラルか通常の応募かわからなくなる恐れもあります。

そしてそもそも、ES(従業員満足)が高い企業でないと、社員に『うちの会社を友人に紹介したい』と思ってもらえません。リファラル採用を始める前に、まずはES向上に取り組まねばならないというケースも多々あるのです。

中山氏が開発した新卒向けのリファラル採用ツールは、リファラル採用の運用にかかる膨大な人事の負担を軽減するもの。リファラル採用の状況を可視化でき、そこで得た知見を翌年につなげることも可能。紹介・推薦方法がする社員の手間も大幅に減らすことができることが最大のメリットだという。

実際、弊社でお手伝いさせていただいてきてわかったことがあります。リファラル採用を「一人当たり採用単価」というコストの側面ではなく、人材の質や採用プロセスの機能を評価して実施するクライアントは、大手だけでなく地方の中堅企業においても採用に成功しています。

例えば、介護サービスを展開している企業や、中堅スーパーマーケット、パチンコチェーンなど。いずれも企業規模は従業員100名程度で、かつ一般的には人手不足と言われている業種ですが、そもそも従業員満足度が高い企業であり、かつ全社を挙げてリファラル採用に積極的に取り組まれています。

なお、社員が自ら『自社を友人に紹介したい』と思える会社にしたい…とご相談いただくケースも増えています。我々は、そういうクライアントもサポートしています。

10年後には、半数の企業が新卒採用でリファラルを導入するようになる

これらの話を踏まえると、従来型の採用モデルは崩れ、既存のナビサイトの牙城をリファラル採用が壊すのではないかと思われますが、中山氏は「壊すのではなく、共存する時代になる」と分析しています。

リファラル採用の弱点は“量”。社員からの紹介・推薦でマッチング精度の高い人材を集めることはできますが、数多くの学生に広く自社をPRして母集団を形成することはできません。そのため、特に新卒採用においては今後も、ナビサイトなど既存メディアを活用した母集団形成が軸になると考えられます。ただ、例えば、『100人採用予定のところ、80人しか採れない』という場合、残りの20名をリファラル採用で決めるなどという企業は増えています。
全国のあらゆる企業において『ナビサイト+リファラル採用』が当たり前になると、我々は考えています。現在、新卒採用を実施している企業におけるリファラル採用導入率は約1~2%ですが、10年後には30%程度に増えるのではないかと予想しています。