【採用動画特集#04】多様化する採用広報において、活用すべき動画施策とは

正しく最大限に使いこなせ!採用動画特集

採用活動において動画活用は難しい。そもそも動画制作にかかる工数やコストは大きく、また、その効果を正しく予測し、把握できている人事の方は多くないのではないだろうか。本特集では「採用活動における動画活用」を様々な切り口から科学し、正しく最大限に動画を使いこなすヒントを探っていく。


株式会社プルークス
代表取締役社長
皆木 研二氏

みなき・けんじ/デロイトトーマツグループにて経営コンサルティングに従事した後、2015年に動画マーケティングを支援する株式会社プルークスを創業。オンライン動画広告に強みをもち、これまで幅広い分野で500社2500本以上の動画制作実績を重ねている。企業向け動画専門ニュースメディア「動画アカデミー」の編集長も務める。

売り手市場の新卒採用において、母集団確保や自社に合う学生を採用することがますます困難になっている。それに伴い採用ツールも多様化し、企業ごとのカラーが顕著に表れるようになった今、「採用広報」という言葉を耳にする機会が増えた方も多いのではないだろうか。今回は、採用広報で伝えていくべきことから、採用広報における動画活用方法についてプルークス・代表取締役社長の皆木氏に話を聞いた。

採用広報は何を伝えるべきか

先にも述べた通り耳にする機会が増えた「採用広報」という言葉。そもそも採用広報とはどういうことなのか。

「採用広報とは自社が欲しいと思う人材を確保するために、企業の魅力や方向性について発信をしていくことです。しかし、集客した学生に対し自社紹介をしたものの、あまり響いているように感じられない。そのように感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか」

自社が発信したいことと学生の志望動機が上がることは必ずしても一致していないのである。

「株式会社ディスコの調査によると、学生が企業研究の際に知りたいこととは、『実際の仕事内容』であると回答しています。一方で文化省の調査では、企業側が伝えたい企業イメージの1位に、『商品・サービス・技術が優れている』との回答が1位となっています。2つの調査結果を比較すると、2位の『社風』は一致しているものの、その他項目には少しずつズレが発生していることがわかります」

左図:http://www.disc.co.jp/uploads/2018/03/2019monitor_201803.pdf
(9ページ目、「9.企業研究を行う上で知りたい情報」より)

右図:http://www.careerpartners.co.jp/reseach/bunkahosocp_soukatsu2017.pdf
(37ページ目、「PRしたい企業価値」より)

「いくら採用広報でメッセージを発信しても、第一に知りたいこと・伝えたいことが学生と企業で異なっていると、その訴求力は弱まってしまいます。企業からの一方的な押し売りではなく、学生が知りたいと思っていることを伝えながら、自社からのメッセージを浸透させていく必要があります」

そういった採用広報活動に、動画を活用することができるのだと皆木氏は言う。

「採用広報には、動画の持つ文字だけでは伝えられない企業のカラーを伝えられるというメリットを活かせるのはもちろんですが、まだ学生に知られていない企業であっても、動画内容でインパクトを与えることにより興味を持たせることができるというのも大きなメリットになります」

仕事内容が理解されづらい業種の採用広報にこそ動画を活用すべき

適切な採用広報を行うためには動画をどのように活用すればいいのだろうか。

「学生が知りたい情報の第1位に挙がった『実際の仕事内容』ですが、仕事内容をただ伝えるだけでは学生は興味を持ちません。もともと学生に人気の企業や、学生が興味を持ちやすい商材であれば仕事内容にも興味をもち動画の視聴率もあげることができますが、それ以外だとまず動画を視聴してもらえないでしょう」

「そんな中で、企業側が自社の『商品・サービス・技術を伝えたい』と思っても、学生にとっては取っ付きにくく難しい部分もあるかと思います。動画で何を伝えるか、目的を明確化しPRしていくことが重要です」

OOKABE GLASS HD 新卒採用(https://youtu.be/-pmkFJB-frY

ガラスや鏡等をインターネット販売するOOKABE GLASS HD株式会社の新卒採用動画だ。学生にとっては、なかなか認知が少ない業界・商材である。

「福井県にある企業ですが、地元福井県のチアリーダーとコラボし、ラップにのせて取り扱っている商品やインターネット販売の会社であるということを紹介しています。そのためこちらの動画では、開始直後から視聴者にインパクトを与え、『まずは企業や商材のことを知ってもらう』という目的に特化させてて構成づくりを行なっています」

清水建設「チームで走り続ける」篇(https://youtu.be/ZUex0gnMfuI

こちらは清水建設の新卒採用動画だ。「施工管理」という仕事につく女性を描いている。

「『女性の施工管理』はまだあまり人数は多くはないため、その部分を訴求するために実写を活用し動画化しています。『4年前、自分が施工管理の仕事に着くとは思ってもいなかった』というメッセージで、まだ施工管理という職種を選択肢に入れていない学生の心も惹きつけることに成功しています。また、動画内では実際に現場の様子や仕事をしているシーンを数多く映し出すことで、自然と学生に『女性が働く』というイメージを沸かせやすい内容となっています」

オウンドメディアの活用も広がっている

「採用広報の一環として『オウンドメディア』を活用する企業も増えてきています」と皆木氏は新たなテーマを切り出した。

オウンドメディアとは企業や組織が自社で立ち上げたブログやインタビュー記事などを掲載するウェブマガジンと捉えればよい。会社の発信したいメッセージを伝えていくことにより、採用対象者への企業ブランディングを行っている。

「自社のサイトとして運営していくことで、掲載したコンテンツが自社に蓄積され、企業ブランディングに繋がります。メルカリやサイボウズ、エンジャパンなどがすでに採用広報のオウンドメディアを展開しており、それぞれの会社ごとのカラーを出しながらメディア運営を行なっています」

「こういったメディアは、今は写真とテキストでの記事コンテンツで情報を伝えることが主流ですが、メルカリが運営するメディア「mercan」では、「mercan.fm」と題したPodcastでの音声配信を投稿していたり、編集部に質問を投げかけながらオフィス紹介を行う動画なども公開しています」

(mercan.fm https://soundcloud.com/mercanfm/mercanfm-36-2

(mercan クリスマス企画動画 http://mercan.mercari.com/entry/2017/12/22/170000

「メルカリの一例では、オフィス紹介とインタビューを行なっていますが、他にも新入社員紹介やプロダクトの開発の裏側を社内取材してみる、社内イベントを動画で投稿してみるなど、オウンドメディアにおいても動画活用は新たな活用方法が多数考えられます」

このような動画の活用によって、既存の採用ツールではできなかった新たな採用広報も広がってきているようだ。

PRの場所を広げ、採用広報につなげる

では実際にその動画を見る、ユーザー側はどのような特徴があるのだろうか。

「採用対象となる10代・20代は、私たちが考える以上にSNSやYouTubeを多く利用しています。これまでの採用手法である合同説明会などで、自社をまだ視野に入れていない新たな学生に出会えるチャンスはあります。しかし、そこで出会うことができるのは、合同説明会に足を運び、さらに自社ブースに興味を持ってくれた人だけです。SNSやYouTubeに配信をすることにより、まだ自社を知らない学生の中にいる採用対象者との接点を持つことができます」


ソーシャルメディアラボより:https://www.make-light.work/web/2018sns/

「ソーシャルメディアラボの調査によると、年代・性別によって利用しているSNSが異なり、大きく波が出ています。きちんと自社のターゲットとなる層が見ている媒体に配信ができいるのか、その動画はターゲットに刺さる内容になっているのかを理解しながら動画制作を進めていく必要があります」

目的にあった採用広報を

「冒頭に『学生が知りたいことと企業が伝えたいことにギャップがある』というお話をしましたが、企業によって採用したい学生・伝えたい内容も違います。自社にどういう採用広報が適切であるのかを判断するためには、まずはどういう人を採用したいのかという認識と、企業として発信したいメッセージを統一させることが重要です」

デジタルネイティブ世代の学生たちにとって、広告を目にすることは日常茶飯事である。モノや情報が溢れ、テレビなどのマスメディアから情報を一方的に受け取るだけでなく、SNSやYouTubeなどで自ら情報を取捨選択している世代なのだ。

「そういった学生にとって、企業のアピールや広告色が強いものは受け入れられません。すでにツールとしてある求人広告や説明会のような、企業側がしっかりと『作り込んだ』内容を一方的に受け取るのではなく、本質を見極め本当に『自身に合った企業』を探したいと考えています。そのために、採用『宣伝』ではなく採用『広報』として学生に企業のことを伝える必要性があるのではないでしょうか」

学生・企業双方に、そのような本質的な見極めを行うための1つの情報ツールとして、今後も動画活用は増加していくことだろう。

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(HRog編集部)