【#01】アシスタントなし!人事2名のみで年間74名を採用した戦略とは?

成長し続けるミドルベンチャーを支える人事部の挑戦

2019年創業から20期目を迎えたインターネット企業、株式会社インタースペース。アフィリエイトサービス「アクセストレード」を主力事業に2006年9月東証マザーズに上場を果たす。その後、順調に右肩上がりに成長を続け、毎年過去最高売上を更新し続けている。今回HRog編集部では、成長し続けるミドルベンチャーの人事部にスポットを当てた。

(左)田代 弓人 氏
株式会社インタースペース 人事部 サブリーダー
たしろ・ゆみと/前職ではゲームアプリの製作・運営会社にて中途採用担当として従事。2017年に当社に入社し「営業・営業事務・デザイナー」を中心に採用を行う。以前の全社表彰では当社にリファラル採用を普及させたこと、内定承諾率の大幅な引き上げに貢献したことで全社表彰を受ける。採用以外にもオンボーディングの啓蒙や制度企画に従事。

(右)長谷川 武蔵 氏
株式会社インタースペース 人事部 サブリーダー
はせがわ・むさし/前職ではWeb系企業の採用コンサルティングや転職希望者のキャリアカウンセラーとして従事。多くの社外、社内表彰を受賞した後、2017年に当社に入社し「エンジニア・Web系職種・管理職種」の採用を行う。応募数・入社承諾数等の各種採用KPIを飛躍的に伸ばし、入社半年後の全社表彰で新人賞を受賞。採用以外でも採用広報や社員教育などに従事。

人事部の仕事は採用だけではなく、人材教育体制の整備やリテンションマネジメントなど多岐にわたる。クチコミサイトやリファラル採用の登場により、組織づくりと採用活動は切り離せなくなっている。

人事の仕事はマルチタスク化し、純粋な「採用活動」に当てられる時間は少なくなっているのだ。そんな中で「少ない工数でいかに成果を出すか(=採用人数を充足させるか)」というのは多くの人事の方にとって重要な関心事ではないだろうか。

インタースペース社の中途採用は2名体制だが、その業務の内容は中途採用業務に加え、教育制度の設計やキャリア開発、人材データの分析など様々だ。しかし、そのような業務負荷の中でも、試行錯誤を繰り返し、年間74名の採用に成功している。今回は採用フロー改善をする中で生まれた中途採用手法について田代氏と長谷川氏に話を聞いた。

責任を明確化!採用チーム新体制への変革

「もともと当社の中途採用チームは『流入経路』で担当を分けていました。大まかには求人媒体担当(転職ナビとダイレクトリクルーティング)と転職エージェント担当です。社内の全職種の募集を2人で追いかけ、充足させようとしていました」と田代氏は話してくれた。

この方式で生じた問題は採用コスト増と責任の不明瞭さだ。

「特に責任の不明瞭さは大きな課題で、どこかで『ひとつの募集枠に対して担当者が2人で追っているのだから、きっとどちらかが内定を決めるだろう』という気持ちがお互いに出てしまっていたと思います」

「私たち人事はどれだけ難しい募集案件からも逃げることはできません」と田代氏は続ける。

「そのため『担当のどちらかで決まればいい』というマインドを排除する必要がありました。また『人材紹介の担当だからコストはしょうがない』『求人媒体の担当だから難しい職種を決めることができない』といった手法による言い訳をできないようにしました」

具体的に行ったのは役割分担の変更だ。

「まずはじめに『どの職種の募集案件をどちらが担当するか』を決め、募集枠に対して責任の所在を明確にしました。結果的に田代が広告営業・デザイナー・ディレクターの職種担当、長谷川がエンジニア・企画/Web関連職・管理の職種担当と分担しました。

そして、職種に紐付く採用手法を分担していきました。手法ごとに各職種の採用成功率が異なるため、例えば媒体A・Cは田代、媒体B・Dは長谷川と窓口を明確化しました」

話を聞いていると、個人プレーで採用活動を行っている印象を持ってしまうが、実はそうではないようだ。

「新しい課題が出たら2人で施策を考え、定期的なミーティングで進捗や業務バランスを確認しました。担当する職種はきちんと決めながらも、長谷川の担当している媒体で営業職が採用できそうな媒体があれば共同活用を提案してみたり、反対に田代の担当媒体でエンジニアからの応募があれば長谷川に共有したりなど、チームとして目標を達成するために細かい連携を取っていました」

この体制になり、「採用業務に対してムダな連携がほとんどなくなった」と田代氏。長谷川氏も「責任範囲を明確化することで、2人が採用決定のために考え抜くようになり、結果採用成功率が飛躍的にあがった」と感じているのだという。

Step2. 徹底的な現場とのヒアリング&すり合わせ

少ない工数の中で採用を成功させるためには、無駄な採用活動をどれだけ削減できるかが重要だ。現場が求める募集要件と全く異なる候補者を面接に呼んでしまう時間は、会社、求職者双方にとってマイナスと言える。

「そのようなミスマッチを減らすため『どんな人を採用したいか』について、現場への事前のヒアリングを徹底的に行うことにしています」という長谷川氏。

具体的には、1つの募集枠に対して以下のことをヒアリングしているようだ。

ミスマッチを減らす現場への事前ヒアリング
  1. 事業部、チームとして今後なにをしていきたいのか、そのための現状の課題は何だと考えているか。
  2. 同じチームの人たち、一人ひとりにどのような役割分担で業務が行われているか。また個々の強みや課題はどこか。
  3. 現状のやりたいことを行うため、または課題を乗り越えるためにはどんなアクションを取っていくべきなのか。
  4. 事業部のやりたいことや課題を解決できる人が持ち得る要素とはどのようなものか。
  5. 4で挙げたの要素を持っている人は、どんな人でどんな仕事をしているのか。またどこで仕事をしていて、どこの流入経路にいそうか。

「ここまでチームのやりたいことや課題を細かくヒアリングすることで、人事は現場に対して一定の共感や想像ができる状況になります。また、ここまで深く聞くことではじめて、人の採用だけではなく配置転換やアウトソースも含めた適切なアクションを提案、実践していくことができます」

事前のヒアリングを徹底的に行うことのメリットは、人事と現場の視点のズレを大幅に減らせることだ。

「そのため現場にムダな負担をかけることなく人事側でのスクリーニングを実施でき、不必要な面接の削減と面接の通過率の向上を達成しました。この2つがこの1年で私たちが大きく改善してきたことです」

このように試行錯誤を繰り返し、採用の精度はかなり向上してきたのだ。

「とはいえ課題が完全になくなったわけではありません。今後も入社者がスムーズに会社に慣れ、中核を担ってもらえる人材となるよう改善を続けていきます」

(HRog編集部)