
パーソルホールディングス株式会社の2025年3月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!
2025年3月期第3四半期
2025年3月期通期(当記事)
目次
パーソルの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

日本国内の堅調な求人ニーズや人材不足を背景に、全SBUで増収を達成しました。その結果、売上収益は1兆4,512億円(前年同期比9.4%増)となり、過去最高を更新しました。
利益面では、COVID-19関連事業の剥落によりBPO SBUは減益となりましたが、Staffing SBUやCareer SBUをはじめとする他SBUの増益がこれを吸収し、営業利益は574億円(同10.3%増)、調整後EBITDAは783億円(同8.4%増)となり、それぞれ過去最高を更新しました。
パーソルの今期決算について、主に決算短信をもとにセグメント別の業績について詳しくまとめました。

Staffing SBUは、国内で事務領域を中心とした人材派遣事業および人材紹介事業を展開しています。
派遣就業者数の増加(前年同期比2.7%増)および平均請求単価の上昇(同1.9%増)、さらに人材紹介事業の好調が寄与し、売上収益は6,024億円(前年同期比4.6%増)となりました。利益については、調整後EBITDAが313億円(同9.5%増)、営業利益が270億円(同7.5%増)と増益となりました。
BPO SBUは、受託請負のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を主として展開しています。
COVID-19関連事業終了による減収を上回るオーガニック成長(前年同期比11.2%増) やパーソルコミュニケーションサービス(旧:富士通コミュニケーションサービス)結合の影響により、売上収益は1,172億円(同5.8%増)となりました。
しかし、期初想定通りCOVID-19関連事業終了(売上総利益で33.6億円強の減益影響)があり、営業利益は42億円(同38.5%減)、調整後EBITDAも66億円(同21.2%減)と減益となりました。
Technology SBUは、IT領域やエンジニアリング領域の製造・開発受託請負事業、および技術者派遣事業を展開しています。
エンジニア採用を強化し、エンジニア数が増加したことに加え、エンジニアリング事業における製造業向け請負需要の伸長やIT・DXソリューション事業の堅調な成長により、売上収益は1,147億円(前年同期比12.0%増)となりました。
これによりコストの増加を吸収し、営業利益は76億円(同34.2%増)、調整後EBITDAも86億円(同11.5%増)と増益となりました。
Career SBUは、正社員の中途採用支援を行う人材紹介事業や、求人メディア「doda」を展開しています。
堅調な求人需要を背景に、売上収益は1,446億円(前年同期比12.8%増)となりました。下期からは将来の成長に向けたマーケティング投資を強化しましたが、増収効果や生産性向上により、営業利益は256億円(同28.6%増)、調整後EBITDAも303億円(同21.5%増)となりました。
Asia Pacific SBUは、アジア地域での人材サービス事業および豪州におけるファシリティマネジメント(施設管理)事業などを展開しています。
豪州のファシリティマネジメント事業の順調な成長や為替影響により、売上収益は4,761億円(前年同期比15.3%増)となりました。現地通貨ベースでも売上は約10%増を達成しています。これに伴い、営業利益は77億円(同60.3%増)、調整後EBITDAも117億円(同19.0%増)と増益となりました。

2026年3月期の連結業績予想では、売上収益1兆5,400億円(前期比+6.1%)、調整後EBITDA865億円(同+10.4%)、営業利益660億円(同+14.9%)、純利益410億円(同+14.3%)を見込んでおり、調整後EBITDAの二桁成長を目標とし、過去最高益の更新を目指します。
SBU別で見ると、特にBPO SBUにおいて調整後EBITDAが前期比+50%と、利益面で大幅な成長を見込んでいます。

パーソルは前期の決算発表において、IT関連のサポート領域、運用支援領域を強化することでBPO事業全体の強みを拡張する目的から、富士通コミュニケーションサービス株式会社を買収したと発表しました。
今期決算で発表されたパーソルコミュニケーションサービス株式会社(旧:富士通コミュニケーションサービス株式会社)の影響額は、売上収益で40.5億円、調整後EBITDAは4.1億円。これは第4四半期におけるBPO SBUの売上収益の約12%を占めており、同社が専門BPOの強化を進めていく方針であることからも、COVID-19関連業務終了の影響を吸収する勢いでの拡大を見込んでいることが伺えます。

また2025年3月31日より、BPO SBUが提供するバックオフィス業務のオンラインBPOサービス「StepBase」と、Career SBUが運営するスカウトサービス「doda ダイレクト」の連携が開始されました。
徳永CFOはこの連携について、「具体的には『doda ダイレクト』のアウトソーシングをBPO SBUで受け、グループ全体としてお客様に提供するというサービス」と述べており(決算説明会書き起こし,p.14)、サービス間だけでなくSBU間での連携も強めていく戦略的な姿勢が伺えます。

このSBU間連携による包括的なソリューション提供は、Career SBU事業の見通しとも連動しているといえます。同SBUでは来期以降の売上二桁成長を目指す中で、中長期的には採用プロセスの省力化による顧客体験の向上を図っています。
2025年4月1日にはグループ全体でAIによる事業変革を推進する「グループAI・DX本部」の設立が発表されました。グループ全体での連携強化による価値提供や生産性向上の取り組みは、今後のパーソルグループの重要な戦略の一端を示しているといえるかもしれません。
パーソルホールディングスの2025年3月期通期決算では、第1四半期から連続して全SBUでの増収を達成したのが注目ポイントです。
特にBPO SBUは、コロナ関連業務の縮小という逆風がありながらも、自社サービスの拡充を通じて成長を維持しました。さらに、ITサポート領域のM&Aを通じて、これまで強みとしてきた汎用BPOに加え、専門BPO領域にも事業を広げる動きが加速しています。

また、来期は2030年に向けた中計の1段階目が終了する節目であり、Career SBUは主力のStaffing SBUに匹敵する事業としての確立が見込まれています。来期以降のCareer SBUの二桁成長について、和田CEOは「報酬以外のチャレンジや環境を求める求職者が一定増え、転職が活発化する」という市場感の変化を根拠の一つとしています(FAQ,p.1)。
市場全体の変化やトレンドを捉えつつ、堅実に成長し続けるパーソルホールディングス。HRog編集部では引き続きその動向を追っていきます!
2025年3月期第3四半期
2025年3月期通期(当記事)
【参考URL】
パーソル2025年3月期通期 決算短信
パーソル2025年3月期通期 決算説明資料
パーソル2025年3月期通期 決算説明書き起こし
パーソル2025年3月期通期 FAQ