採用成功には法則がある!ワンキャリアCSOが教える「採用の9か条」

採用の難易度が上がっている今、必要なのは自社の現状を正しく認識し対策していく「採用のサイエンス」です。今回は株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO 北野唯我氏著・「『うちの会社にはいい人が来ない』と思ったら読む 採用の問題解決」より一部を抜粋、採用に強い会社を科学して分かった「採用の9か条」を紹介します。

書籍著者
株式会社ワンキャリア
取締役 執行役員CSO
北野 唯我

きたの・ゆいが/神戸大学経営学部卒業。2010年に株式会社博報堂に入社。経営企画局・経理財務局で勤務した後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年にワンキャリアへ入社。2020年に取締役CSOに就任、2023年より現職。主な著書に『転職の思考法』『OPENNESS』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)など。

「仲間集め」はサイエンスできる

経営の根幹であり、企業にとって最も重要な仕事である採用活動。しかし転職が当たり前の時代になり、企業のクチコミがweb上で簡単に検索できるようになった今、この「仲間集め」における課題が積み重なり、疲弊している人事も多いのではないでしょうか。

さらに採用現場では、担当者が責任者が変わると採用できる人の数・質も大きく変化してしまうという現象がよく起こります。この再現性の低さは「仲間集めが、企業活動の中でサイエンス(=科学)されていない」がゆえに起きていると北野氏は指摘します。

同氏が取締役を務める株式会社ワンキャリアは、新卒採用プラットフォーム「ONE CAREER」を運営する会社です。これまで不透明だった「企業の社員体験・選考体験」を可視化した点が評判を呼び、東京大学・京都大学の学生の95%以上、全国でも約3人に2人※1の利用率を誇るプラットフォームとなっています。

この本で紹介されている問題の解決法は、ワンキャリアが保有する累計180万人※2の求職者のデータと、同社の日経大手・外資系を含む累計3,000社以上※2に及ぶ採用支援実績がベースとなっています。

今回はデータにもとづいた「再現可能なマニュアル」として紹介されている本書のノウハウの中から、採用に強い会社が取る行動パターンを体系化した「採用の9か条」をご紹介します。

※1「ONE CAREER」調べ。各大学もしくは大学院を卒業するユーザーの、就職者数の総数に対するシェア率。2023年12月末時点。
※2  2024年6月末時点。

採用の9か条

タイミングの法則

タイミングを制するものが採用を制する
採用で成功するには、タイミングを外さないことが極めて重要になる。どれだけ魅力的なオファーでもタイミングが悪ければ決まらず、反対にタイミングさえ良ければ、他社に抜けがけしていい人材を獲得できるチャンスがある。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

他の営業活動(商品・サービス)と採用活動との最大の違いは、前者が「購入する人・しない人がまじっている」のに対し、後者が「ほぼ全員がどこかで働く(働き続ける)という意思決定をする」点にあります。

だからこそ採用する側は優秀な人材との接触頻度を落とさずに、相手が意思決定をするタイミングを待つ「オンタイム戦略」が重要です。知名度のない会社も、このオンタイム戦略を徹底することが、他社との大きな差別化要素になり得るのです。

本書ではマーケティングの概念「CEP(Category Entry Point)」を応用したオンタイム戦略の実践法を紹介しているので、気になる方はぜひ読んでみてください。

コミュニティの法則

いい人材は固まる。コミュニティをおさえるべし
「自分の周りの数名の平均値が自分である」という言葉がある。いつの時代も、いい人材はいい人材同士でつるむ。情報とクチコミはそこで回る。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

新卒採用であれば部活、サークル、研究室、ゼミなど、自社の採用ターゲットとなる人材がどんなコミュニティにいるか把握しましょう。中途採用の場合は、年齢、地域、業界、会社などを設定することでおおまかなコミュニティのイメージをつかみます。

ターゲットのコミュニティを可視化することで、最適な採用スケジュールが固まります。またキャリアの指向性は所属するコミュニティに影響を受けるため、コミュニティを可視化すれば採用競合やキャリアの悩みも想定しやすくなるでしょう。

演出の法則

新卒採用は、デザイン、オフィス、演出、採用サイトに投資せよ
採用は第一印象が重要。特に新卒採用では、資料デザイン、バナーデザイン、オフィスの立地や外観、内定出しのときの演出で歩留まりは大きく変わる。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

上場企業だけで約4,000社あるとも言われる中、求職者から選ばれるためには、第一印象が大切です。北野氏は「デザインやオフィスの演出を絶対に馬鹿にしてはならない」と、新卒採用における第一印象の重要性に言及しています。

企業の第一印象を左右するもののうち、特に採用現場でコントロールしやすいのはデザイン(資料やバナー・求人票)・演出(インターンシップや面接、内定出し)・採用サイトの3つ。例えばインターンシップの場合、「学び」「驚き」「つながり」を演出するコンテンツを盛り込むことで学生はポジティブな感情を抱きやすくなります。

本書ではインターンシップの他にも、各種クリエイティブや採用フローのタッチポイントについてGoodケースとBadケースを紹介しています。

ジャイアントキリングの法則

求職者理解の徹底を怠るな。ここからジャイアントキリングが生まれる
採用活動の現場では、たまになもないスタートアップや中小・中堅企業が業界大手や超人気企業に勝つことがある。そういった企業の採用戦略を見ると、必ず、徹底した求職者理解がベースにある。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

採用マーケティングの成功のポイントは自社の候補者を徹底的に知り尽くすことにあります。

採りたい人物はどんな人生を歩み、どんな意思決定をして、どんなコミュニティに所属し、どんな企業を受けているか、何に心を動かされるのか。これらを把握することで狙うべき接点が明確になり、少ないリソース・工数の中で動いているスタートアップや中小・中堅企業でも、業界大手や超人気企業以上の成果を出すことができます。

年間で数名〜数十名単位の採用を行っている企業は、エリアを絞った採用が効率的です。年間の採用人数が1名の会社は、極限までターゲットを絞り込みましょう。先輩・後輩の関係を軸に、「経営者や人事の出身大学や出身企業の社会人」まで絞り込むことで、ターゲットの価値観や土地勘を理解しやすくなります。

企業イメージの法則

企業イメージへの投資を怠るな。特に大量採用の成否はイメージが決める
非常に少数の採用の場合、企業イメージへの投資は不要である。一方で、年間で数十名以上の採用を成功に導く場合、企業イメージへの投資を怠ってはいけない。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

北野氏は「企業イメージはあらゆる人事課題を解決する」と述べています。企業イメージが良ければ、採用業務のオペレーションが弱くても採用人数を確保できる一方、現場の努力だけで大量の人数の採用を成功に導くのはかなり難しいです。

企業イメージの向上は採用課題だけではなく、「育成」「配置」「評価」「報酬」「代謝」といった人事課題にもポジティブな影響を及ぼします。大手商社やシンクタンク、メガベンチャーなど「人が集まり、定着し続ける仕組み」を構築している大企業も、企業イメージへの投資を積極的に行っているという共通点があります。

給与・待遇の法則

初任給、平均年収、ボーナス、家賃補助について人は話したがる。自社を知ってもらうための武器として使え
年収情報は電子シグナル(信号)のように遠くまで届く。組織風土や事業内容の良し悪しと違い、年収(=金)は国境を超えても比較ができる。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

「年収1,000万円」というキーワードには翻訳不要な魅力があるように、報酬面の魅力は伝わりやすく、比較も容易なため、自社を広く知ってもらうきっかけとなります。どんなに企業風土や得られるスキルを訴求しても、報酬制度の面で競合に負けてしまうと、企業イメージを構築できないケースが多いです。

たとえばメルカリが一時期、市場平均に対して20〜25%高い年収を提示したことで採用を成功させたように、市場平均や採用競合と比較した報酬面でのスタンスは企業イメージに直結します。

特に年収や初任給、ボーナス、家賃補助で魅力的な条件を提示することはそれだけで話題になり、自社を知ってもらう広報効果になります。

人材輩出企業の法則

人材輩出企業のイメージを一度でも獲得すれば、人々はそれを一生忘れず他人に語る
「〇〇企業出身者は優秀」という人材輩出企業のイメージは、なぜか人の脳裏にこびりつく。このイメージを一度持った人は、ほぼ一生忘れない。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

「〇〇企業出身者は優秀」「給与や市場価値が高い」という労働市場からの評判は、求職者にとって大きな魅力になります。在籍する人はこのイメージに誇りを持ち、辞めた人すらもその会社を広報する存在になってくれます。

こうした評判を構築するには、人材育成メソッドの確立と積極的な人材への投資をおこなうとともに、転職や独立を許容する「人事ポリシー」を立てる必要があります。人事ポリシーは採用戦略の方向性を決める「採用の土台」の一角をなすもので、下記の要素で構成されます。

引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

人事ポリシーのパターンは「会社の事業特性」と「経営者の思想」によって決まります。

関係性の法則

徹底的に人間関係を見せよ。社員と社員、上司と部下、自社と他社の関係性こそが、最強のコンテンツになる
人が最も面白いと思うコンテンツは、人間関係の中にある。社員と社員の関係性、上司と部下の関係性、自社と他社の関係性。コンテンツで勝つには、関係性を見せる必要がある。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

求職者に会社の社風を理解してもらう上で重要なのが、中で働く人と人との「関係性」を示すことです。関係性の深さや関係性の変化に人はドラマを感じ、強い興味を持ちます。実力があり複数のキャリアの選択肢を持つ求職者にとっても、「誰と、どんな風に一緒に仕事することができるか」は極めて重要なファクターです。

そのため社員インタビューコンテンツを制作する場合も、単独のインタビューではなく対談形式の方がベターです。本書では北野氏が直接支援したグッドパッチ社やワンキャリアが実施した、「関係性」を見せるコンテンツの事例を紹介しています。

トップ人材確保の法則

トップの人材は、トップの人材にしか口説けない
「一流の人材は一流の人材と働きたがるが、二流の人材は三流の人材と働きたがる」と言う格言がある。本当にトップの人を採りたいのであれば、トップの人材が採用にコミットし、追い続けるしかない。
引用元:『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』/北野唯我/ダイヤモンド社

会社の成長を大きく左右する「エグゼクティブ採用」は、中途半端に現場人事に任せるのではなく、経営陣による強いコミットが必須です。

労働市場におけるエグゼクティブ人材は非常に希少で、採用難度も高いもの。そのことを意識せずに採用活動を行っていると、人材ポートフォリオは「オペレーション人材」の方に傾きやすくなります。

企業の経営陣が行うべきは、この自然法則に逆らってエグゼクティブ採用にコミットし、事業や組織の基準値を上げ続けること。実際に、孫正義氏や柳井正氏など日本を代表する起業家・経営者は、常に最善の経営チームを蘇生するために自身が採用にコミットしています。
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まとめ

今回は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』より、採用に強い会社を科学して分かった「採用の9か条」を紹介しました。

ご紹介した「仲間作りの秘訣」を提案に盛り込み、クライアントとの共通認識を作っていくことができれば、人材営業としての介在勝ち向上につながっていくはずです。ぜひこの記事のノウハウをクライアントの採用成功に役立ててください!

(鈴木 智華)