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2ヶ月で即戦力ドライバーが入社!「お試し勤務」でリアルな働き方を伝える、スポットバイトルの採用戦略

ディップ株式会社
第三ソリューション営業本部 エリアス統括部 営業3部 静岡1課 リーダー
森地 勇太氏(画像・左上)
もりち・ゆうた/2020年、ディップ株式会社に新卒入社。入社後は一貫して静岡県内に特化したマーケットを担当。採用コンサルタントとして、静岡県ならではの特性を踏まえた顧客の課題解決に取り組んでいる。

株式会社静岡オリコミ
物流本部 物流ロジ部 次長
野崎 慶治氏(画像・右下)
のざき・けいじ/1994年に静岡オリコミに入社後、配送部に配属。1999年に営業部へ異動し、2023年より現職。人材採用時の採用担当と受け入れ担当を兼任し、静岡オリコミの業務の魅力を伝えながら、人材の定着に注力している。

新聞の折込広告の企画・制作・印刷・配送を手がける静岡オリコミ。配送ドライバーは、同社の事業に欠かせない存在だ。

同社は「定着率は高いのに応募が集まらない」という採用課題を抱えていた。日勤勤務で運転時間も短く、荷物のサイズも統一されている働きやすい環境にもかかわらず、従来の求人媒体では応募が集まらない状況が続く日々。

そんなときに同社の採用課題を解決したのが、スポットのバイトサービス「スポットバイトル」を活用した「お試し勤務」という新しいアプローチだ。スポットバイトル導入からわずか2ヶ月で経験豊富なドライバーの正社員採用に成功し、現在も即戦力として活躍している。

なぜ「お試し勤務」が採用成功につながったのか。その舞台裏を、静岡オリコミ物流本部物流ロジ部次長の野崎慶治氏と、ディップ担当営業の森地氏に伺った。

「定着率は高いのに応募が来ない」地方運送業の採用課題とは

静岡オリコミが取り扱う新聞の折込チラシは、1日あたり36トンにものぼる。午前中に届いたチラシを倉庫に搬入し、各新聞販売店向けに仕分け。午後に静岡県内約150の販売店に配送するのが業務の流れだ。社内のドライバー9~10名と協力会社で配送しており、1台あたり2〜3トンのチラシを積んで全110コースに分かれて各販売店を回る。

野崎氏「日勤のみで、トラックを運転するのは午後の2時間だけです。荷物は全てB4サイズのチラシのため形が揃っていて扱いやすく、働きやすさには自信があります」

こうした環境にもかかわらず、正社員採用に苦戦していた。

野崎氏「配送以外にも仕分けなどの作業があるため、仕事の内容が求人ではなかなか上手く伝えられないのがネックでした」

ディップが運営する正社員・契約社員の転職求人サイト「バイトルNEXT」で正社員を募集しても応募が集まらない状況が続いていた。

その背景には、静岡県の雇用環境の厳しさもある。

森地氏「静岡県は、神奈川県と愛知県の間にあります。静岡県の最低賃金は神奈川県よりも約130円、愛知県よりも約40円低く、稼ぎたい若手人材は県外に出てしまいます。特にドライバー人材は需要が高く、非常に採用が厳しいのが現状です」

さらに同社では、過去に採用のミスマッチを経験していた。

野崎氏「派遣会社を通じてドライバーが1名入職したのですが、1週間くらいで『私の思っていた仕事と違う』と言われてしまいました。仕事内容を事前に説明し、職場見学で実際の仕事の様子を見てもらっていたのですが…。私たちが伝えようとしていたことと本人の捉え方にギャップが生じてしまい、正直ショックでした」

そんな中、森地氏から「スポットバイトル」を活用した「お試し勤務」の提案があった。しかし野崎氏は当初、効果を疑問視していた。

野崎氏「正直なところ『単発でドライバーが来るわけない』と最初は思っていました。ただ、スポットバイトルは実際にワーカーが稼働して初めて料金が発生するシステムなので、ダメ元で導入してみることにしました」

2ヶ月で正社員採用に成功。ミスマッチを防いだ段階的な体験設計

2025年8月末にスポットバイトルの導入を決定。導入にあたって野崎氏が最も心配していたのは、勤務したワーカーから「仕事内容が求人と違う」と言われることだった。

野崎氏「森地さんに相談したところ、他社のドライバー募集の事例をいろいろ見せてくれました。どのような表現なら求職者とのミスマッチが起きないかを検討し、一緒に求人原稿を作成しました」

森地氏「スポットバイトルの他社事例では、ドライバーはほぼ配送の補助業務として募集しています。さらに仕事内容の欄に、具体的な業務内容を詳しく記載しているケースが多いんです。静岡オリコミ様の原稿もそれにならって作成しました」

最終的に「配送経験者・横乗り補助」という条件で募集を開始。毎日継続して求人を出した結果、すぐに経験者3名からの応募があった。その中の一人が、最終的に採用に至ったSさんだ。求職活動中のSさんは「この日は暇だからちょっと働こう」という気軽な気持ちで、応募したという。

「お試し勤務」を受け入れるにあたって野崎氏が工夫したのが、段階的な体験設計だった。初回は「隣に乗って荷物を降ろす手伝いをする業務」のみに絞り、仕事のハードルをできる限り下げた。

野崎氏「初回はあまり難しい仕事はお任せせず、シンプルな業務だけを切り分けてお願いすることにしたんです」

2回目以降の勤務では徐々にレベルを上げ「伝票を見て、ルールに従って荷物を積み上げる」といったように、より専門的な作業も体験してもらったという。難易度の高い業務を任せても、スムーズに対応できるかを見極めるためだ。

また、仕事終了後のコミュニケーションも重視した。

野崎氏「スポット業務が終わった後に、『良かったらコーヒーでも飲もうよ』と声をかけて、話す時間を設けるようにしました。前の仕事のこととかもちょっと深く突っ込んで聞いてみたんです。すると近くの会社で働いていたことがあり地理に明るく、当社と同サイズのトラックの運転経験があることが分かりました」

何より重要だったのは、実際の働きぶりを通じて人となりを確認できたことだ。

野崎氏「『この作業をしたらいいですか?』と、先輩ドライバーに自分から積極的に声をかけていたのが印象的でした。周囲を見ながら仕事ができる人だと感じましたね」

Sさんは求職活動中で時間があったこともあり、10日間で4〜5回のスポット勤務を継続。野崎氏がスケジュールを聞き積極的に声をかけたことで、双方の理解が深まっていった。

さらに決定的だったのは、現場のドライバーたちからの評価だった。一緒にコースを回った3人のドライバーが「Sさんとなら安心して働ける」と口をそろえたという。

野崎氏「履歴書を持ってきてもらいましたが細かく検討するまでもなく、現場の声で採用が決まりました。上司への提案もスムーズに進み、スポットバイトルを導入してから2ヶ月で入社が決定しました」

段階的な体験設計を支えたのが、スポットバイトルの利便性だ。

野崎氏「最初に少し教えてもらった後は、すぐに自分で操作できるようになりました。SNS感覚で操作できるので、募集したいタイミングと内容に合わせて自分でどんどん募集を立てられます。システムトラブルが起きた際や掲載時の細かい疑問は、森地さんに問い合わせるとすぐに対応してもらえました」

入社後すぐに即戦力として活躍。「求人では魅力が伝わらない」企業こそ体験が重要

採用に至ったSさんは現在、即戦力として活躍している。即戦力として活躍できている大きな要因は、地理に精通していることだ。簡単に説明するだけでスムーズに業務を進められるため、同僚たちからの信頼も厚い。

Sさん自身も「荷物のサイズが揃っているので扱いやすく、荷崩れもしにくい。配送の順番も決まっているため、負担が少なく働きやすいです」と満足しているという。静岡オリコミの強みが、Sさんにフィットした形だ。

「お試し勤務」経験者が自発的に知人を紹介し、母集団形成につながるという想定外のメリットも得られた。Sさんが「うちの会社で1日働いてみない?」と友人を誘い、実際に一度働いてもらったことがあるという。

野崎氏は「Sさんの入社で、『お試し勤務』の価値を実感した」と語る。

野崎氏「当社の場合、給料は大手企業に及びません。ですが、日勤のみ・運転時間が短い・荷物の取り扱いがしやすいといった点は、働きやすさを重視する層にはメリットが大きいはずです。求人票だけでは伝えきれない魅力は、実際に体験してこそ伝わると感じています」

「お試し勤務」はミスマッチの防止にも効果的だ。求職者は実際に現場で働くことで、仕事内容や社風などさまざまな視点から相性を確認できる。企業側も、スキルや現場とのマッチ度などを見極められる。今回の成功体験を踏まえ、野崎氏は今後も「お試し勤務」を採用に活用していく方針だ。

野崎氏「自分に合った仕事だとはっきり認識したうえで入社してもらえば、離職にはつながりません。『お試し勤務』というステップを踏むからこそ、お互いについてしっかり理解してから採用できます」

森地氏も手応えを感じている。

森地氏「当社の静岡オフィスの若手社員もこの事例を参考に他社様を支援し、採用成功を実現しています。これまでは『条件を満たす人であれば誰でも良い』という採用の仕方が一般的でした。しかし『お試し勤務』は、実際に働いてもらったうえで『この人が良い』と採用する方法です。そうした手法にシフトすることで、より良い形で採用・定着を実現できるのではないでしょうか」

野崎氏は、静岡オリコミと同じく採用課題を抱える運送会社にとって、「お試し勤務」は有効な解決策になりうると考えているという。

野崎氏「当社と同じく、入り口で損をしている会社は多いと思います。本当は働きやすくて良い職場なのにもかかわらず、求人票で魅力を伝えきれていない会社こそ、体験の機会を設けることをおすすめします」

森地氏は、「『お試し勤務』は採用支援の手法として汎用性が高い」と締め括った。

森地氏「体験を通した採用は、入社後のギャップを最小限に抑えられる手法だと感じています。採用側と求職者双方にとってメリットが大きいので、物流業界のスタンダードにしていきたいですね。その実現には、営業が現場の課題を深く理解して二人三脚で取り組む姿勢が欠かせません。今後もディップでは、お客様に寄り添い採用課題の解決に尽力します」

(執筆:川瀬ゆう)