
株式会社リクルートホールディングスの2025年3月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!
2025年3月期第3四半期
2025年3月期通期(当記事)
リクルートの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

売上収益のみ計画に若干届かなかったものの、増収増益で利益面では2桁成長を達成。売上収益と調整後EBITDAは過去最高となりました。
リクルートの今期決算について、主に決算短信をもとにセグメント別の業績について詳しくまとめました。
HRテクノロジー事業は、グローバルで展開する求人プラットフォーム「Indeed」および「Glassdoor」を中心とした事業です。マネタイゼーションの進化を通じて、1件あたりの有料求人広告から得られる収益の最大化を進める一方、プロダクトの改善やUX向上にも継続的に投資を行いました。
米国では有料広告数は減少したものの、広告単価の上昇がこれを上回り、売上収益は7,456億円(前期比+6.6%)と増加しました。欧州およびその他地域もプロダクトの改善や営業強化が奏功し、売上収益は2,619億円(同+9.3%)と引き続き成長を維持しました。
日本では、マッチング&ソリューション事業に計上されていた転職およびアルバイト・パート領域の求人広告収益が、Indeed PLUSを通じて本事業に移行されたことにより、売上収益は1,189億円(同+63.5%)と大きく増加しました。
この結果、HRテクノロジー事業全体の売上収益は1兆1,265億円(同+11.3%)、4,041億円(同+17.3%)、調整後EBITDAマージンは35.9%と、高い収益性を維持しました。
マッチング&ソリューション事業は、主に下記のサービスを展開しているセグメントです。
販促領域
・ 不動産情報サイト 「suumo」
・ 美容サロン予約サイト 「HOT PEPPER Beauty」
・ 飲食店予約・クーポンサイト 「HOT PEPPER グルメ」
・ 旅行・宿泊予約サイト 「じゃらん」
人材領域
・ 新卒向け就職情報サイト 「リクナビ」
・ 転職情報サイト 「リクナビNEXT」
・ アルバイト・パート求人情報サイト 「タウンワーク」
・ 転職支援サービス 「リクルートエージェント」
SaaS
・業務・経営ツール 「Air ビジネスツールズ」
国内における販促・人材・SaaSの各サービスを担う本事業では、Airビジネスツールズを含む業務支援SaaSのアカウント数拡大に注力しつつ、主要サービス群の収益基盤強化に取り組みました。
販促領域では、美容、旅行、飲食、住宅といった主力分野すべてが増収となり、売上収益は5,295億円(前期比+7.5%)と好調でした。Airビジネスツールズのアカウント数も434万件(前年同期比+14.7%)と堅調に拡大しています。
一方、人材領域は、求人広告サービスのIndeed PLUSへの収益移行が通期で進行した影響を受け、売上収益は2,753億円(同-9.7%)に減少。ただし、人材紹介サービスは引き続き堅調に推移しました。
事業全体では、売上収益は8,160億円(同+1.0%)、調整後EBITDAは1,859億円(同+13.6%)、調整後EBITDAマージンは22.8%となりました。
日本、欧州、米国、豪州で人材派遣サービスを提供する本事業では、地域によって業績に明暗が分かれました。
日本国内では、人材派遣ニーズの増加に伴い稼働人数が増加し、売上収益は8,051億円(前期比+7.1%)と増収。一方で、欧州・米国・豪州では経済の先行き不透明感から派遣需要の減退が続き、3地域合わせて売上収益は8,618億円(同-2.4%)に減少となりました。
結果として、セグメント全体の売上収益は1兆6,669億円(同+2.0%)、調整後EBITDAは974億円(同-0.5%)、調整後EBITDAマージンは5.8%でした。
リクルートは2026年3月期の業績予想として、売上収益3兆5,200億円(前年同期比-1.1%)、営業利益5,400億円(同+10.1%)、調整後EBITDA6,970億円(同+2.7%)、親会社帰属当期利益4,280億円(同+4.8%)と、売上は微減ながらも利益面では増加を見込んでいます。
- 日本における求人広告がクリック課金のIndeed PLUSに移行したことで、収益の計上方法が代理店手数料込みの「グロス」からリクルート取り分の「ネット」へと変更されたため(決算説明会書き起こし,p.6)
- 米国を中心とした求人需要の低下(最大で-10%)が続くと見られるため(決算説明会書き起こし,p.2)
- 米国を中心に求人需要の低下が予想されるも、広告単価引き上げなどマネタイゼーションを強化(決算説明会書き起こし,p.6)
- 引き続き生産性改善を背景に、調整後EBITDAは来期においても過去最高を見込む(決算説明会書き起こし,p.5)

20年前、オンライン上の求人をクローリングするアグリゲーション型サイトとして登場したIndeedは求人市場に大きな変革をもたらしました。
リクルートは今期決算において、その次なる変革としてAIを活用した新たな仕事探し・採用体験の創出を目指していくと発表(サービス説明動画)。求職者向けの「Career Scout」と採用企業向けの「Talent Scout」といったサービスが紹介されており、これらは現在アメリカでテスト・開発されています。
求人検索の効率化
┗従来のような検索ではなく、AIとの会話で完結
┗スキルや経験を踏まえた求人を紹介
┗想定給与やキャリアステップも提示
選考プロセスの効率化
┗履歴書と応募書類を自動生成
┗AIとの面接練習も可能
求人作成の効率化
┗求人タイトル、給与、職種内容を最適化
候補者検索・選定の効率化
┗AIとの会話で完結
┗資格や適正を元に有効な候補者を特定
選考プロセスの効率化
┗面接のスケジュール設定を自動化
┗AIを使った自動面接も可能

日本市場向けにもAI開発が進められており、就職活動を行う学生向けの応募書類作成をサポートする「ガクチカAIアシスタント」や、ユーザーの悩みや希望を理解しキャリア選択肢を示す「キャリアアシスタント」といったサービスが開発・提供されています。キャリアアシスタントは一部の既存会員に試験的に提供されていますが、2025年夏以降にはより多くのユーザーに提供できるよう準備が進められているとのことです。

また、リクルートは「Simplify Hiring」の戦略を加速するため、2025年4月に人材領域をHRテクノロジー事業に統合し、販促領域に特化したマッチング&ソリューション事業を「マーケティング・マッチング・テクノロジー(MMT)」事業と改称しました。
出木場CEOは「1年間で300万~400万件の応募を送る大手クライアントから、10分の1程度のマッチする人の応募だけに絞りたいという切実なお願いを頂いている」と発言しています(説明会書き起こし,p.8)。
HRテクノロジー事業ではそうしたクライアントに応えるため、「Simplify Hiring」の経営戦略のもとAIを活用し、事業を展開しているすべての人材マッチング市場においてより速く、より効率的で、より求職者・採用企業双方にとってベストなマッチングを目指していく方針です。
MMT事業は「Help Businesses Work Smarter」を掲げ、SUUMOやHotPepper、Airビジネスツールズなどを通じて販促と業務効率化を支援。SaaSや決済サービスの拡充を通じて、企業の生産性向上とエコシステムの拡大を推進します。

米国での求人件数が減少を見込まれる中でも増益が予想されているのは、AIの活用がリクルート自身の生産性向上にもつながっているからです。出木場氏によれば、例えばHRテクノロジー事業において新しいプログラムコードの3分の1はAIを利用して書かれていると言います(説明会書き起こし,p.2)。
ガバナンス刷新を掲げて注目を浴びた前期のリクルート。4月に始まった今期(2026年3月期)から、その新体制がいよいよ本格始動していきます。
特に注目すべきは、リクナビ(新卒)を除く日本国内の求人広告をIndeed PLUSに集約し、人材紹介サービスもHRテクノロジー事業に移管したことで、Indeedのテクノロジーと国内事業のデータ・ノウハウの連携が強化された点です。これにより、応募から採用までのグローバルな情報がIndeedプラットフォーム上に統合的に蓄積され、AIによる学習とマッチング精度最適化が加速していくでしょう。
またリクルートは今期決算で、仕事探しから採用までを会話型AIで一気通貫させるAIエージェントサービスを発表しました。これにより「より早く、より簡単に会いたい人に出会う」という仕事探し/採用体験が加速すると思われる一方、従来人が担ってきた業務は縮小していくと予想されます。
人材サービス事業社にとって、Indeedとの連携戦略も含め、自社ならではの付加価値をどう組み合わせて提示するか、この戦略がさらに重要になっていくかもしれません。
Indeed登場から20年の節目で、再び人材業界を大きく変えようとしているリクルート。HRog編集部では引き続きその動向を追っていきます!
2025年3月期第3四半期
2025年3月期通期(当記事)
【参考URL】
リクルート25年3月期通期 決算短信
リクルート25年3月期通期 決算説明資料
リクルート25年3月期通期 決算説明会書き起こし
リクルート25年3月期通期 アナリスト向け説明会書き起こし