ランサーズ株式会社
CEvO(チーフエバンジェリストオフィサー)
根岸 泰之 氏
ねぎし・やすゆき/フリーライターとしてキャリアをスタート。2003年、人材総合サービスを展開するエン・ジャパン株式会社に入社。制作部門長、プロ-モーション本部長を歴任。2013年、ランサーズに参画し、取締役CMOを経て、現職。「地方×DXプロジェクト」などのプロジェクト責任者を務め、新しい働き方、新しい組織の育て方、新しい事業の作り方を全国に普及させる活動をしている。働き方系・マーケティング系セミナー登壇実績多数。
2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。
今回はランサーズ株式会社の根岸氏に、フリーランス市場の過去10年間とこれから成し遂げたいことについて話を伺いました。
※一部、東日本大震災についての言及がありますので、懸念のある方はご注意ください。
日本の働き方の変化は、ランサーズとともにある
ランサーズの根岸氏によると、「直近10年間前後で働き方のターニングポイントは2つあった」と言います。
「1つ目は2011年の東日本大震災です。被災地の方々が仕事できないのはもちろんのこと、関東地方でも帰宅困難者が深夜に歩く光景が見られました。それによって『なぜ、仕事の時間と場所が制約されているのか?』という疑問を持つ人が増えたのです。そのタイミングでお仕事マッチングプラットフォーム『Lancers』の注目度が上がり、いつ、どこで働くのも自由というフリーランスの働き方が広がりました」
2つ目のターニングポイントは2015年頃に実施された働き方改革に、ランサーズが当時掲げていたビジョンである「時間と場所にとらわれない新しい働き方を作る」という考え方が盛り込まれたことでした。当時ランサーズは社会への働きかけを積極的に行っており、「正社員」以外の働き方の選択肢を増やす活動を後押ししていました。その活動が実を結び、副業解禁などの動きに寄与できたのではないかと言います。
「この働き方改革により、自分らしい働き方としてフリーランスを選択する人が増えました。またこの時期からフリーランサーのマッチング市場に、ランサーズ含めて200以上の企業が参入するようになりました。人々の価値観が変化したことで、日本社会に新しい市場が形成されたのです」
また根岸氏にこの10年で印象に残っているエピソードについて聞くと、「無名だったユーザーさんがキャリアや影響力を手に入れたこと」と話してくれました。
「10年前までは、フリーランスで影響力の強い方といえば『大手広告代理店で働いていたクリエイター』『広告賞やデザイン賞を取った方』など、一握りのスーパースターだけでした。しかしサービスが世の中に広まったことにより、一般のユーザーさんがランサーズで仕事を積み上げる中で、自分の本を出したりテレビに出演したりする姿を見ることが増えたのです。私たちがミッションに掲げている『個のエンパワーメント』がまさに実現しつつあることを感じました」
そんな日本の働き方の変化は、まさに「ランサーズというサービスとともにあった」と言えるでしょう。
活躍するフリーランスを増やし、より多くの人の働く選択肢を広げたい
次に、今後の10年間で成し遂げたいことを聞くと「フリーランスの選択肢をより広げ、幅広い人々に選択肢を提供し続けたい」という回答が返ってきました。
「この10年間で働き方が変わったことで、多くの人々の選択肢が広がったと感じています。特に新型コロナウイルスの流行に伴うリモートワークの普及は、新しい働き方を浸透させる後押しとなりました。しかし我々が行った調査によると、国内のフリーランスの数は約1570万人と、労働人口に対して1/5から1/4程度です。もっと多くの人に対して働き方の選択肢を提供できると思っているので、今後もランサーズを通じて、フリーランスの選択肢をより広げたいですね」
またフリーランスの選択肢を広げるため、ランサーズでは「フリーランスのチーム化」に取り組んでいると言います。
「フリーランスという働き方は、自分一人で仕事を仕上げる場面が多く、どうしても大きな仕事にチャレンジすることが難しくなります。そこでランサーズでは、個人同士が集まってチームを形成し、大きなプロジェクトに取り組めるようにサポートしています。指揮命令系統がなく、報酬や役割が明確なフリーランスチームという概念が広がることで、働き方の選択肢をより充実させられればと思います」
また「フリーランスとして活躍できる人を増やすために、経験の浅い人が教育やサポートを受けられる場も作っていきたい」とのこと。最後に根岸氏は、組織の在り方について「多様な働き方を受け入れる組織を目指していってほしい」とメッセージを送りました。
「今後、働き方の多様化を許容できない企業は企業競争に勝てず、徐々に淘汰されると思っています。マネジメントには『監視』『管理』『活用』『開放』『開花』という5つの段階があると考えており、後者のマネジメントほどより多様な働き方や人々の可能性を引き出すことができます。
しかし日本では多くの場合、マネジメントが『監視』の段階で留まってしまっていることが多いのです。その対極である『開放』『開花』段階のマネジメントでは、ミッションを理解したメンバーが各人の個性や強みを活かして試行錯誤できるため、より大きなアウトプットを生むことができます。この『開花』を是とする組織作りをできる会社が、今後も求職者に選ばれ続ける人気企業になるのではないでしょうか」
(ライター:鈴木智華)
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