Thinkings株式会社
執行役員CHRO
佐藤 邦彦 氏
さとう・くにひこ/1999年東京理科大学理工学部卒業後、アクセンチュア入社。2003年にアイ・エム・ジェイに転職し事業会社人事としてのキャリアをスタート。2011年以降、様々な事業会社の人事を歴任し2020年4月よりリクルートワークス研究所に参画。2022年8月まで『Works』編集長を務める。2022年10月にThinkings株式会社執行役員CHROに就任。
2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。
今回はThinkings株式会社の佐藤氏に、これまでに起こった採用の変化と10年後の人事担当者のあるべき姿についてお話を伺いました。
「採用難化時代の入口」に突入し、人事担当者の難度は高まる
Thinkingsの佐藤氏によると、過去10年の人事・採用の現場は「『働き方改革』と『採用メディア・ツールの変化』、2つの大きな変化への対応に追われた10年だった」と言います。
「2010年代に入ってから、法改正などの影響で残業のルールがより厳しくなりました。現場でも『成果を出していればプロセスは問わない』という状態から『限られた時間の中で成果を出す』へ方針が変わり、多くの企業はマネジメントのあり方を大きく変えざるを得なくなりました。それにより人事部門では、従業員の勤怠管理・労務管理の刷新という業務に奔走することが非常に増えました」
また2010年代は、「ダイレクトリクルーティングサービスやSNSなど、新たな採用手法が増えた時代だった」と言います。
「2000年代における就職活動は、大手就職ナビサイト上でほとんどのコミュニケーションが行われてきました。そのため『ナビサイトにさえ求人を出していれば、最低限の応募者を獲得できる』と考える企業も多くいました。しかし、近年は就職情報を扱う採用サービスも多様化しています。さらにTwitter・FacebookなどのSNSでも採用のコミュニケーションが行われるようになりました。
これらの変化が起こったことで、企業側では『これさえやっておけば大丈夫』という採用活動のスタンダードが無くなってしまいました。求職者の減少と求人数の増加による採用の難化もあいまって、以前よりも採用ツールや採用手法を試行錯誤している企業は増えているのではないでしょうか」
そのような変化を踏まえて、佐藤氏はこの10年を「採用難化時代の入口」だと語ります。
「これからの日本の状況を考えると、採用の難度は高まる一方です。裏を返せば、常に『今』が一番採用しやすいという状況がこの先ずっと続きます。そういった意味で、現状は『どんどん採用が難しくなっていく世界』に足を一歩踏み入れた状態と言えるでしょう」
テクノロジーの力で「人事が挑戦するための余力」を生み出していく
これからの10年で人事・採用の現場はどう変化するべきか尋ねると、「リソースとして本当に人を採用すべきなのか、各社が問い直す必要がある」と回答しました。
「今後、限られた人材を奪い合う消耗戦を続けても、日本企業の勢いはなかなか盛り上がりません。日本の経済全体を上向きにさせるには、従来の『仕事に人を充てる』という考え方から脱却する必要があります。
今後AIなどのテクノロジーが発展すれば、システムで自動化できる業務はさらに増えていくでしょう。これからの人事はそのようなテクノロジーの発展を見据えた未来を想定し、『人にしかできない仕事は何か』を特定した上で、会社全体の人員配置をコーディネートすることが求められます。人の採用が難しいからこそ、人事部門は自らの領域を広げ、現場や経営にきちんと未来思考で踏み込む必要があるのです」
この状況を踏まえて、これからのHRTech企業の役割は「テクノロジーを活用することで、人の余力を生み出すこと」だと語ります。
「私たちが提供している『採用管理システムsonar ATS』は、本来多くのリソースが必要な採用オペレーションという業務を自動化・省力化するサービスです。サービスの提供を通して、毎日のルーティン作業に疲弊する人事の方を一人でも減らし、本質的な組織課題に向き合う時間の創出に貢献したいと思っています。
人的資本経営の重要性が叫ばれる現代、人事という役割や業務範囲は大きく変わりつつあります。新しいチャレンジが次々に求められることも多く、人事部門に携わる方の中には苦労を抱える人も多いでしょう。しかし、この人事部門を取り巻く変化は、自分の市場価値を上げる非常に良い機会です。大変なことも多いと思いますが、ぜひこの変化を前向きに捉え、人事としての挑戦を積み重ねていってください」
(ライター:鈴木智華)
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