【地方×HR#05】grooves 根来氏に聞く 地方銀行とともに取り組む地方DX

株式会社grooves
経営企画室 General Manager/「Crowd Agent」事業責任者
根来 啓輔 氏
ねごろ・けいすけ/2009年に大阪大学大学院卒業後、日本IBM社に入社。2014年、リクルート住まいカンパニーへ転職。事業推進担当として、事業計画策定や新規サービス立ち上げを実施。2019に 株式会社groovesに経営企画室マネージャーとして参画。2021年よりCrowd Agent(クラウドエージェント)事業責任者を担当。メディアやセミナーを通じてHR業界の動向や中途採用・人材紹介に関する情報を発信中。

ウィズコロナ時代を見据えて 地方×HRの最前線

新型コロナウイルスは「はたらく」のあり方を大きく変えました。リモートワークが一般的な働き方として社会に受け入れられるようになり、一部の企業では本社機能を首都圏から地方へ移転するなど、ビジネスにおける距離の壁はどんどんなくなってきています。そして地方の中にはこの状況を地域経済成長のチャンスととらえ、人材系企業とともに戦略的な経済・雇用支援に取り組んでいるところもあります。本特集では地方と人材系企業の協業プロジェクトや地方における求人動向のトレンドを取り上げながら、地方×HRの最前線を紐解きます。   

近年、地方採用マーケットのプレーヤーとして地方銀行がその影響力を強めている。またそれに伴い人材業界の中でも、採用支援事業を行う地方銀行をサポートし、地方の採用を活性化させる動きが出てきている。

今回は累計導入実績10,000社超の人材紹介会社・求人企業向け求人プラットフォーム「Crowd Agent」を提供し、また奈良県に本社がある地方銀行「南都銀行グループ」の人材紹介事業立ち上げ支援をおこなっている株式会社grooves の根来氏に、地方銀行を通して見える地方採用の現状について話を聞いた。

ネットワークを生かし地銀の人材紹介事業立ち上げを支援

根来氏によると、ここ数年で様々な地方銀行で人材業界の参入を目指すケースが増えているという。その背景にあるのは地方銀行を取り巻くビジネス環境の変化だ。

金利の下げ止まりや少子高齢化に伴う労働人口減少を受け、地方銀行では徐々に既存の融資業務だけでは収益力を向上させることが難しくなっている。そのような状況の中、新規事業の一つとして人材ビジネスに取り組む地方銀行が増えているのだ。

「地方銀行では、多くの地域企業とのネットワークがあるため、そのネットワークを生かして求人開拓を行い、人材マッチングビジネスにつなげたいと考えている銀行は増えています。またそのような地方銀行の動きを支援するために、国側でも規制緩和や支援を強化しています。その中の取り組みの一つに、先導的人材マッチング事業があります」

先導的人材マッチング事業とは

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で採択された、地域企業の人材ニーズを調査し、人材業界のプレーヤーと連携しながら条件を満たす人材のマッチングを行う間接補助事業者(金融機関)に対して内閣府が支援を行う取り組み。

このような支援制度の拡充を背景として、地方銀行と提携して地方採用の加速を目指す人材業界のプレーヤーも増えている。株式会社grooves もそのうちの一社だ。では、同社ではどのような仕組みで地方採用の支援をおこなっているのだろうか。

「その前に、まずは『Crowd Agent』の仕組みから説明したいと思います。『Crowd Agent』とは、求人企業が持っている求人をクラウド上に流通させることができるサービスです。人材紹介会社は『Crowd Agent』に掲載されている求人票に対して候補者を推薦できる仕組みになっており、自社のRA(法人営業)業務の工数を削減できるサービスとなっています」

そして地方銀行支援の取り組みとして、同社では地方銀行が獲得した求人票を『Crowd Agent』に流通させ、同サービスを使う人材紹介会社から採用候補者を募れる仕組みを実現しているという。(CAアライアンス)

提供:株式会社grooves

「人材紹介ビジネスを立ち上げたいと考える地方銀行の多くが、『地域企業の人材ニーズにかなう候補者を集める』という壁にぶつかります。そこでgrooves ではCrowd Agentを提供し、全国の人材紹介会社のネットワークを活用してもらうことで、いわゆる集客業務やCA(候補者対応)業務をサポートし、法人開拓に集中してもらえるような座組にしています」

また、同社の社員が伴走しながら人材紹介の一連のRA業務のノウハウを学んでもらう取り組みも行っているという。地方銀行の事業戦略と国からの支援を追い風として、このような地方銀行と人材業界の連携は広がっていきそうだ。

エリアの垣根がなくなり採用市場はより苛烈に

地方銀行と連携しながら地方採用の活性化に取り組む同社。新型コロナウイルスによって、地方採用マーケットはどのように変化したのだろうか。

「一番大きな変化は候補者の方の動きです。新型コロナウイルスをきっかけに、多くの企業でリモートによる働き方の実現や採用のオンライン化が進みました。特に首都圏の企業で顕著でしたが、地域企業の中でもそのような対応を進めるところは一定数ありました。このような候補者の変化に柔軟に対応出来ている地域企業は、首都圏や他のエリアからなど、近郊地域以外からの応募者を順調に増やしています」

しかし、新型コロナウイルスは地域企業の採用だけに有利な影響を与えたかというと、そうとも限らないと根来氏は続ける。

「先ほどお話したような『働き方のDX』『採用DX』に取り組んでいる企業は、もちろん地域企業だけではありません。首都圏の企業も同様にリモートでの就業・採用環境を整えています。今まではオフィスの近郊の企業だけが採用競合だったのが、コロナ後は全国に広がったというゲームチェンジが起きた、ということです。

候補者の方にとっては勤務地という制約がなくなり、選べる企業の幅が広がった。これはより望ましい変化だと思います。しかし採用企業からすると、エリアの垣根がなくなって、採用上で競合する相手がどんどん変わっていっています」

実際に、東京に本社をもちながらフルリモートを認めているgrooves社でも、北海道や宮古島、沖縄など様々なエリアへの移住を決めるメンバーが徐々に出始めているという。住まいは地方に置きながら、首都圏の会社で働く意思決定をする人が増えているのだ。

「戦う相手がグローバルに広がっているという観点からすると、一概には『地方採用においてコロナは有利に働いた』とは言えないでしょう」

この状況を受け、よりよい人材を獲得し企業活動を継続するための生存戦略として「働き方のDX」「採用DX」に取り組む企業はエリアを問わず確実に増えている。

「地域企業に限っていうと、もちろん一定数変わり始めてはいるものの、まだまだそのような働き方や採用のあり方は一般的ではありません。またスタートアップやベンチャーがたくさんある首都圏企業とは異なり、地域企業はそのような情報になかなかアクセスしづらいのが現状です。

そのためgrooves では、地方銀行と連携した採用支援の中で『働き方のDX』『採用DX』を積極的に推進しています。地方銀行が持つ地域企業のネットワークと、私たちの知見を掛け合わせて、地域企業のDXを前に勧められるかどうかが我々の腕の見せ所だと思っています」

地銀・人材紹介会社ともに全国の採用を盛り上げる

コロナがもたらした「エリアという条件・制約からの解放」という採用環境の変化は、今後さらに大きくなると根来氏は言う。

「その一方で、『全国から候補者を集める』という成功経験がないために、はじめから採用を諦めてしまっている企業もたくさんあると思います。せっかく面白い事業や組織運営をしているのに、知られていないがために機会を逃すのはもったいないです。

かつてはそのような企業が採用を成功させられるチャネルが少なかったかもしれません。しかし今は多様なチャネルがあり、我々の事業もその一つとして企業の後押しをしていきたいと思っています。

いわゆる求人票だけでは埋もれてしまいがちな地域企業の魅力を、候補者の方へ向けて一緒に伝えてくれる強力なサポーターとなってくれるのが、地方銀行の行員の方たち、そして『Crowd Agent』を介して繋がる全国の人材紹介会社の方たちだと感じています。地域に根差し地域のことをよく知っている方々が採用に関わることで、雇用が流動化し日本で働くことの面白さが広がっていくでしょう。今後もそのようなパートナーの方々とともに、全国の採用・雇用を盛り上げていきます」

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