社長の見た目も採用を左右する?採用代行会社が語る意外な「採用の定石」とは

マルゴト株式会社
代表取締役
今 啓亮 氏
こん・けいすけ/北海道大学在学中の2006年に家庭教師の仲介サービスで学生起業。卒業後はベンチャー会社に入社して法人営業と支店長業務を担う。2012年にカンボジアへ移住して起業。カンボジア国内の大規模人材紹介会社に成長させ、会社を譲渡して帰国。2015年にマルゴト株式会社(旧株式会社ビーグローバル)を創業。現在、スタートアップ、ベンチャー、中小企業350社以上の採用支援を手掛け、全社員150名がフルリモートで業務を実施する。

採用代行サービス「まるごと人事」を運営するマルゴト株式会社は、350社以上の採用支援を手がけ、数々の企業の採用を成功させてきた。自社の採用でも年間1万人応募が集まるなど採用に関してプロフェッショナルな同社は、2023年9月29日、採用ノウハウをまとめた書籍「『本当にほしい人材』が集まる 中途採用の定石 」を出版した。今回は同書の著者であり、同社代表取締役の今氏に、採用を成功させるための「採用の定石=最善の方法」や、それをもとにクライアントをどのように支援しているかについて伺った。

幅広い企業を支援した経験から得た「採用の定石」

執筆にあたり、今氏が目指したのは1冊で中途採用について網羅できる「採用本の決定版」だ。

「日々企業さんとお話しする中で『中途採用でおすすめの本ありますか』と聞かれることが多かったのですが、その時にいつも私は、『面接術ならこれ』『スカウト方法ならこれ』と6〜10冊おすすめしていたんです。『これ1冊だけ読んでおけば大丈夫』と言える本がなかったため、今回中途採用で知っておくべきことすべてを詰め込んだ本を執筆しようと決めました。

これまでの採用ノウハウ本は、有名な会社の人事さんが自社の事例を紹介していたり、リファラル採用やスカウト方法に特化した本があったりと、内容や事例が限定的で特化しているものが一般的でした。一方で採用代行を行っている私たちは、幅広い業務を行っている点や様々な会社の事例を見れている点で、より網羅的で実用的な本を書けると思ったんです」

同書が他の本と一線を画しているのは、面接の仕方や求人票の書き方といったいわゆる「採用ノウハウ」だけではなく、採用に関わる「総合的な取り組み」すべてについて網羅している点だという。

「『採用が上手くいっている会社』と『上手くいかない会社』の違いについてよく聞かれますが、その答えってひとつではないんですよね。いまの売り手市場の中で、採用を成功させている企業は、求人媒体の使い方からホームページ・SNSでの発信の仕方、スカウト方法まで、あらゆる工夫をして採用を行っています。つまり、『これだけをやれば絶対に採用が上手くいく』というものはなくて、総合的な取り組みが必要なのです。この本では、採用の全体像を把握できるように、ノウハウをひとつひとつ具体例を交えながら紹介しています」

採用は「良い職場づくり」から?ブランディングに頼りすぎはNG

同書は採用ノウハウ本であるものの、いきなり「求人広告の書き方」などから入らない。今氏は採用を成功させる手前の第一ステップとして「良い職場づくり」を挙げている。

「様々な会社を支援する中で、会社をすごく見せようとしてブランディングに力を入れすぎてミスマッチが生まれてしまう例も目にしました。『英語のキャッチコピーでホームページもカッコいいのに、選考に進んでみたら実際は最初のイメージと違った』といったギャップが発生してしまうケースが少なくありません。こうした企業では見せ方と実態がかけ離れることで、選考辞退や早期離職が発生してしまいがちです。

採用のゴールはあくまで『入社後の活躍』です。だからこそ企業さんには、ブランディングにお金と労力をかけすぎるよりも、『いかに新しく入社する候補者が能力を発揮しやすい職場環境を作るか』に力を注いでほしいと思っています。

実際、採用が上手くいっているご支援先を見ると、入社した人が活躍する様子が外からも見えているんですよね。社員の満足度が高ければ、リファラル採用が上手くいったり、面接のときに本音で『うちの会社いいですよ』とおすすめしてくれたりと、良い連鎖が生まれ、採用が成功しやすいんです」

とはいえ採用業務が忙しく、職場環境の改善に時間が割けないケースも多い。同社は採用代行事業で人事の工数を削減し、企業自らが「良い職場づくり」に時間をかけられるようにしている。

「私たちが意識しているのは『業務の切り分け』です。採用代行サービス『まるごと人事』では応募者対応やスカウト送信や媒体運用など、採用業務で一番工数のかかる部分を代行しています。企業様には、浮いた時間を使って本質的な社内の改善に力を注ぐようお伝えしています」

さらに今氏は同書籍において、採用の明暗を分ける一要素として「会社の印象」について言及している。

「求職者は、ホームページや採用サイト、SNSなどで企業の情報を当たり前にチェックしています。面接前の時点では、WEB上で出している情報がその会社の印象なわけです。売り手市場で選びきれないほど求人がある今、事前情報による印象を整えるのは採用成功のために不可欠と言えるでしょう。

中でも、一般的な採用ノウハウではあまり触れられていないけれど大切な要素が、『社長の見た目や写真』です。採用支援をする中で、参考として求人の募集文について新人社員や知り合いに意見を求めるときがあります。すると募集文について聞いているのに、なぜか写真についてのコメントが真っ先に返ってきたことが何度かあったのです。フラットに意見を求めれば求めるほど『なんか社長さん怖そうですね』や『すごいイケイケですね』など、写真によって意図しない印象が生まれてしまっているケースもあることに気がつきました。

私たちもご支援の際には、募集文で使う写真の撮り方について、『カメラ目線よりも少し目線ではなく、社員同士で話している風にしてください』や『インタビュー風景の写真を撮るときはこういう構図がいいですよ』など、具体的にアドバイスしています」

今氏自らも自社の代表として見た目の改善や写真の映り方にも意識をして取り組んできたという。こうしたノウハウは、いままでの支援経験からだけではなく、自社の採用経験からも抽出されている。

「弊社の特徴は、自社での採用活動をある種の実験台としているところです。新しい求人媒体が出たら使ってみるなど、トライ・アンド・エラーを繰り返した結果、今では年間1万人以上の応募が集まるまでになりました。自社での事例や学びがお客様の支援にダイレクトに繋がっていると感じています」

すべての人・企業がやりたいことができる社会に

今回の本の出版に際し、「ここまでノウハウを出しちゃって大丈夫なんですか」と社内から心配の声もあがったという。それでもノウハウを公開しようと思ったのは、採用を通して「すべての人・企業がやりたいことができる社会を実現したい」という想いが大きかったからだと語る。

「ミッションやビジョンなどの『会社のやりたいこと』と、 仕事を通してやりがいを得たい、挑戦したいといった『個人のやりたいこと』を繋げ、双方を叶えられるのが『採用』だと信じています。だからこそ、社内のノウハウを公開する心配よりも、多くの会社に採用を成功させてほしいという想いが大きかったんです」

今後も同社は、採用代行を通して企業の成長やミッションの実現を後押しし続けていく。

「採用代行を通し、支援企業様のミッション・ビジョン・パーパスが実現していくプロセスに関われることに大きなやりがいを感じています。今後も多くの会社のビジョン実現を増やすべく支援を続けていくと同時に、採用に関する困りごとをひとつひとつ解決していきたいです。

私たちはお客様の声を何よりも大切にしています。採用広報代行や採用ピッチ制作の事業は、採用代行をしていた支援先の企業様に『うちのことを知っている御社に社長インタビューを書いてほしい』『採用ピッチ資料を作ってほしい』と要望を頂いたのがきっかけで始めたんです。これからも、利益優先ではなく困りごとの解決のためにサービスを作っていきます」

最後に今氏は、人事や採用に関わる読者に向けて「ぜひ企業の根幹である採用を成功させていきましょう!」とメッセージを送った。

「『企業は人なり』というのは本当にその通りで、採用活動は会社にとって肝だと思っています。ミッションを実現させるには”人”の力が不可欠ですので、ぜひこの本を参考に採用を成功させていってもらえると嬉しいです」