Thinkings株式会社
sonar ATS Sales Div sonar ATS Sales Dept
Field Sales Team 3 Manager
山本 順也 氏
やまもと・じゅんや/前職では企業の新卒採用支援と並行して、学生の就職活動支援に従事。2018年にThinkings株式会社の前身であるイグナイトアイ株式会社にフィールドセールスとして入社。現在は、セールスチームマネージャーとして、採用管理システムの新規導入検討顧客を対象に「sonar ATS」の提案をはじめ、採用課題の解決に貢献。※2023年7月時点
株式会社フロッグ
代表取締役 HRog編集長
菊池 健生
きくち・たけお/2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、退職。2017年、ゴーリストへジョイン。2019年取締役就任。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務める。2021年より株式会社フロッグ代表取締役に就任。
労働人口が減少し採用の難易度が上がる中、採用担当者の業務は複雑化している。一方で、採用担当者が日々感じている苦労や喜び、実際の仕事内容などは知られていないことも多い。Thinkings株式会社は2023年6月、採用担当者の視点で採用の仕事を詠んだ川柳を募集する企画「採用あるある川柳2023」を行った。今回は同社の山本氏に、同企画を始めた背景や、応募作品から読み取れる採用の現状を伺う。
また「“裏”採用あるある川柳2023」と題し、本選考では惜しくも受賞を逃した作品から「“裏”採用あるある川柳」をテーマに6作品を選出する。受賞作品を元に、山本氏とHRog編集長の菊池が対談。近年の採用や人材業界の在り方について語る。
採用担当者の仕事にスポットライトを
2023年で3回目となったThinkings主催の「採用あるある川柳」は、採用担当者視点で自身の仕事について詠んだ川柳を公募する企画だ。同企画を始めた背景には「負担の増える採用担当者にスポットライトを当て、応援したいという想いがあった」と語る山本氏。「近年の採用担当者は、2つの原因から業務が複雑となり、負担が大きくなっている」と続けた。
山本氏「1つ目は、働き方に対する価値観の多様化ですね。正社員の中でも大手企業やスタートアップ、正社員以外でもフリーランスや副業など、働き方の選択肢が増える中で様々な価値観が生まれています。そのため採用担当者は、応募者一人ひとりの価値観に合わせて対応を変える必要があります。
もう1つ挙げられる原因は、採用手法の多様化です。以前は大手の求人サイトに求人を掲載するだけで採用できましたが、現在はスカウトサイトや口コミ、SNSなど様々な採用手法がありますよね。自社の欲しい人材像によって、採用手法を組み合わせていかなければなりません」
採用担当者の負担が増える中、「採用管理システムsonar ATS」を通して採用業務に伴走してきた同社。厳しい状況でも「自社に合った採用をしたい」「より良い採用をしたい」という強い想いを持つ採用担当者の多さを目の当たりにし、「採用担当者の仕事にスポットライトを当てたい」と考えたという。「採用あるある川柳」は、採用担当者からの反響も大きかった。
山本氏「第1回目を行った当初は、正直50句集まれば十分だと思っていました。しかし実際に募集を開始したところ、800句以上の作品が集まったんです。第3回目となる今回は、初めてTwitterで募集しましたが、昨年までを大きく上回る1,313句集まりました。より大きな共感が生まれているのを実感しましたね」
「“裏”採用あるある川柳2023」受賞作品
採用担当者の共感を呼び、大盛況となった第3回「採用あるある川柳2023」では5つの受賞作品が発表された。本記事では、惜しくも受賞とはならなかった作品から「“裏”採用あるある川柳」をテーマに6作品を選出。作品の背景や採用の現状について、山本氏とHRog編集長の菊池が対談した様子をお届けする。
Thinkings主催、第3回「採用あるある川柳2023」の受賞作品はコチラ
山本氏「新卒採用や中途採用において売り手市場が続く中、内定を出しても辞退されてしまうことも多いですよね。その上で単純な『辞退』ではなく『不採用』と捉えている部分がポイントの1句。企業が『選ばれる側』だと認識している様子が伺えました。
候補者に自社を選んでもらうという視点を持ち、常に丁寧な対応をする意識を社内全体で醸成することで、良い採用につながるのではないでしょうか」
菊池「面接で候補者の受け答え以外も含めて選考しているように、候補者にとっても採用担当者や面接官の細かい気遣いを含めた全ての対応が選考体験に関わっていますよね。だからこそ、自社に対する『不採用』と捉え、どこが離脱されるポイントとなったのかを振り返ることが重要となりそうです」
山本氏「候補者全員に実施するのは難しくとも、『不採用』になった理由をアンケート等で尋ねるのも良いのではないでしょうか。企業として、不採用の理由にきちんと向き合っていく意識が重要だと感じます」
菊池「最近の新卒採用市場では、就活生から選考体験の口コミを集めているサービスもあります。企業も口コミをその後の採用設計に活かすことができますよね。採用の在り方が変わっていくことで、企業と候補者の双方が『なぜ不採用になったのか分からない』まま終わってしまう状況も変わっていくかもしれません」
山本氏「非常に細かい部分ではありますが、採用担当者が候補者のみならず社内外のあらゆる人にも気を使っている様子が伺える1句でした。採用担当者は、上司や面接に協力してくれる現場担当者など多方面との調整が発生しますよね。選考官と面接日程を調整するのも一苦労で、面接に候補者が来てくれただけで一安心……という採用担当者の気持ちがよく伝わる作品でした」
菊池「正社員の採用現場では少ないですが、アルバイトの採用では面接をドタキャンされてしまうことも本当に多いですからね。それだけ求人がたくさんあって、求職者が選ぶ立場にあると感じているんでしょうね」
山本氏「今の時代を反映していますよね。『面接』という入社よりさらに前の段階から離脱される状況があり、採用する側の立場が弱くなっている様子が読み取れました」
山本氏「ダイレクトリクルーティングを利用する企業は増えつつありますが、求人サイトと比較すると、まだそこまで浸透度は高くないですよね。新しい手法として導入したダイレクトリクルーティングで成果をあげようと、気合いを入れてスカウトメッセージを送ったのではないでしょうか。それでも開封すらされない……、採用担当者の苦労がうまく活かされていない儚さを感じる1句ですね」
菊池「『こういう文面を送付したら返信率が高くなった』といったノウハウがある程度溜まり、広まっていくんですよね。その結果、文面が似てしまって求職者から見てもらえなくなってしまう。成功パターンを知ることも重要ですが、自社らしさを見つめ直して採用を設計し直していくことが必要です。そこがスカウトの面白さでもあり、難しい部分でもありますね」
山本氏「そういう意味では、ダイレクトリクルーティングがそれだけ浸透したとも捉えられますね。独自性をどう出していくかがポイントとなっていきそうです」
菊池「応募の質が悪いのは『求人媒体のせい』と捉える採用担当者もいらっしゃるかなと思っていて。そういう意味では、人材業界の方からの共感が大きそうですね。自社が候補者を選考するように、候補者も会社を選んでいることを改めて認識したい一句です。『質が悪い』とは言いますが、それが自社に対する評価なんじゃないかと」
山本氏「質を『良い候補者が応募してくれたかどうか』で受け身的に捉えるのではなく、質を上げていく姿勢を持つことが重要ですよね。自社のことを知ってもらうための啓蒙をしたり、興味を持ってもらうための取り組みをしたり、『質が悪い』から『どう質を上げていくか』を考えられるとより良い採用ができそうです」
菊池「どんな人にどんなメッセージを出すかによって、求職者のリアクションも変わると思いますね。その設計によって得た反応を応募者の質とするのであれば、自分たちが出した求人やメッセージの質が応募者の質となるのではないでしょうか」
山本氏「そもそも質って言語化が難しいですよね。お客様から応募の質が下がったという話はよくありますが、『御社にとっての質は何を指していますか?』と聞いています』
菊池「一般的にはどういった回答が来るんですか?」
山本氏「性格などのソフト情報ではなく、学歴や学部のようなハード情報を仰る方が多いのが現状です」
菊池「そうなんですね。学歴だけで見るのではなく、自社の欲しい人材はどういう人材なのか、何を持って質とするのかを見直してみてほしいところです」
菊池「『弊社は第一志望ですか?』という質問は、内定が欲しい候補者にとっては『第一志望です』以外の選択肢がありません。そういった意味では、この言質を取る意味は無くなってきているのかもしれませんね」
山本氏「『御社が第一志望』と言われても、きっとすぐに辞退されてしまうだろうと諦めている様子が伺える句でもありますよね。反対に第二志望や第三志望なのであれば、第一志望の企業と自社で迷っているポイントを伺うことで、候補者と正直に話せるとも思うんですが」
菊池「最近は、『色々な企業に応募して複数の内定を獲得し、その中から行きたい企業を選んで他の企業は辞退する』という求職者の方も多くなっていますからね」
山本氏「そうですよね。学生を想定すると、意思決定に対する重要度が下がっている部分はありますね。タイパ(タイムパフォーマンス)を求める動きがあるように、効率を求めることで躊躇せず内定を辞退できる。ある意味ビジネスライクとも言えますが」
菊池「それだけ時代が変化しているんですよね。常にもっと良い企業がないかどうか探しながら働く人が増える中、候補者の本音を引き出してあげることが重要だと思います」
菊池「本来、採用はゴールではなくスタートなんですよね。しかし業務に忙殺され、採用そのものがゴールになってしまっている担当者も多いのではないでしょうか。採用活動が終わったと思ったらまた次の採用活動が始まる……最近だと並行して採用を行っている期間も多いですし」
山本氏「そうですよね。本来、採用した人材一人ひとりがパフォーマンスを発揮できるように、採用後の環境構築も含めて取り組んでいく必要がありますよね。そういう意味では、採用後にいかに定着してもらうかは会社全体の課題とも言えます」
菊池「分業によって現場の担当者と採用担当者での認識齟齬が起こってしまう。この句を詠んだ方は、一体感を持って取り組んでいるからこそ定着率までを自分事として捉えられているのではないでしょうか」
難易度の高まる採用をテクノロジーで支える
1,300句以上が集まった「採用あるある川柳」だが、応募作品には「採用難易度の高さ」が反映されたものが多かったという。
山本氏「これまでに実施した『採用あるある川柳』と比較し、さらに採用の難易度が上がっている様子が伺えました。オンライン採用が普及した上で新たな採用手法も増えてきましたが、それに伴って候補者の意識もどんどん変わっているんですね。
売り手市場が加速する中で、候補者が選ぶ立場にある環境が出来上がっています。『内定を出しても辞退されてしまう』『スカウトメッセージが開封されない』など、採用担当者の苦労が表現された作品が多い印象を受けました。解決できない課題を嘆いているような句が多く、人事担当者の本音が見えましたね」
集まった川柳から採用の難しさを改めて感じる中、「一人ひとりの候補者に向き合っていくことの重要性が高まっている」と語る山本氏。Thinkingsは今後も、テクノロジーの力を活用して採用の支援を続けていく。
山本氏「候補者に対して、自社の悪い面も含めてオープンに伝えた上で、企業と候補者がお互いに分かり合う採用に取り組んでいくことが重要です。一方で、一人ひとりときちんとコミュニケーションを取るためには工数が足りない。そのために、個別の丁寧な対応が難しい採用担当者の方も多いと思います。
だからこそ、我々はテクノロジーの力を活用し、人がやるべき仕事だけに採用担当者が注力できるようサポートしていきます。内定を出した後のフォロー面談ひとつとっても、ただ行えばよいわけではなく、候補者の背景情報を把握することで選考体験を向上させることができますよね。テクノロジーで効率を求めるだけではなく、人の想いを支えるために活用していっていただきたいです」