
株式会社クイックの2025年3月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!
2025年3月期通期(当記事)
目次
クイックの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

クイックの今期決算について、決算短信をもとにセグメント別の業績や業績予想について詳しくまとめました。
人材サービス事業
人材サービス事業は、建設・IT・看護師・保育士領域における人材紹介・派遣を主軸としたセグメントです。
当期(2024年4月〜2025年3月)は、看護師・保育士などのニーズが継続し、新規顧客開拓やSNSプロモーションも強化。看護学生向けサイトのリニューアルやイベント開催など、「看護roo!」ブランド全体の拡張に取り組みました。ただし、プロモーション費用の増加により利益は減少しました。
売上高は227億円(前年同期比+10.2%)、営業利益は39.2億円(同-11.5%)となりました。
リクルーティング事業
リクルーティング事業は、「Indeed」「Indeed PLUS」などの採用支援ツールや、求人広告・採用コンサルを展開するセグメントです。
掲載課金型メディアの効果が弱まる中、「Indeed」や「Indeed PLUS」などアグリゲーション型求人サービスの取り扱いが順調に拡大。新卒採用企画や面接官研修といったコンサルティング領域も堅調に推移し、「看護roo! 就活」など人材サービス事業との連携による広告・イベント展開も進みました。
売上高は34.3億円(前年同期比+5.8%)、営業利益は8.8億円(同+58.2%)でした。
地域情報サービス事業
地域情報サービス事業は、地域情報誌の発行やWeb広告、ポスティングサービスなどを展開するセグメントです。
紙媒体である生活情報誌は減収となったものの、顧客のWebシフトが進み、Indeed関連商品を中心としたWeb商材の取り扱いが大きく伸長。顧客移行の促進により事業全体の増収をけん引しました。
売上高は26.7億円(前年同期比+7.2%)、営業利益は3.6億円(同+5.5%)でした。
HRプラットフォーム事業
HRプラットフォーム事業は、人事ポータルサイト「日本の人事部」やHRイベントを展開するセグメントです。
主力イベントである「HRカンファレンス」は全日程で満席となるなど集客面は好調だった一方で、広告出稿を控える企業が増えたことにより、セグメント全体では減収減益となりました。
売上高は12.5億円(前年同期比-5.6%)、営業利益は5.9億円(同-13.6%)でした。
海外事業
海外事業は、北中米・欧州・アジアにおける人材紹介・派遣・人事労務コンサルを手がけるセグメントです。
欧州での転職市場回復やメキシコ・アジアでの採用意欲の高まりにより増収。しかし、米国の採用抑制やコスト増、中国の業績低迷が響き、利益は減少しました。
売上高は24.1億円(前年同期比+33.7%)、営業利益は1.3億円(同-20.9%)でした。
クイックは2026年3月期の業績予想は売上高339億円(前年同期比+4.5%)、営業利益45.7億円(同+0.8%)、経常利益46.2億円(同+0.2%)、純利益37.0億円(同+3.3%)と利益面で慎重な見通しを立てています。
- アメリカの関税引き上げなどの世界情勢から、国内外ともに採用活動が抑制される可能性が高いため(決算説明資料,p.20)
- 人材サービス事業において、引き続き看護師領域への投資を強化するため(決算説明資料,p.22)
- HRプラットフォーム事業において、企業の広告出稿控えが引き続き予想されるため(決算説明資料,p.23)
- 純利益は政策保有株の売却益(約10.7億円)を含む

26年3月期のセグメント別業績予想では、人材サービス事業とHRプラットフォーム事業の減益見通しが、全社としての営業利益の伸びを抑える主要因となっています。一方、リクルーティング事業と地域情報サービス事業は営業利益面で2桁成長を見込んでおり、掲載課金型からIndeedやIndeed PLUSなどのアグリゲーションサイトへのシフトが進み、媒体事業の収益性改善につながっています。

同社は来期も投資を強化する看護師領域において、2024年6月にキャリタス看護の事業を譲り受け、新たに「看護roo! 就活」としてサービスを開始しました。
同年12月にはサイトを全面リニューアルし、看護学生向けの合同説明会も年間13回開催。リクルーティング事業と人材サービス事業が連携し、学生の集客から採用支援まで一気通貫で推進する体制を強化しています。

看護師採用支援をはじめとした専門特化型人材紹介への注力は、同社の中長期的な投資計画の中核をなしています。60億円規模の成長投資を見込み、採用支援機能の強化や開発・マーケティング体制の整備、全社的な生産性向上などを視野に、戦略的な取り組みを進めていく方針です。
株式会社クイックの2025年3月期通期決算は、売上高325億円(前年同期比+10.2%)と過去最高を更新、リクルーティング事業の営業利益も前年同期比+58.2%と大きく成長しました。
注目すべきはリクルーティング事業および地域情報サービス事業において、掲載課金型メディアの効果低下を受け、IndeedやIndeed PLUSなどクリック課金型Web商材の取り扱いを拡大したことです。今後は顧客企業の採用成功に向けたトータル提案型の営業を強化するとしており(決算短信,p.2)、代理店事業の在り方が変わりつつあることが伺えます。
リクルートの体制変更など、人材業界が大きく変わる中で成長し続けるクイック。HRog編集部では、今後もその動向を追っていきます!
2025年3月期通期(当記事)