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人材業界売上No.1のリクルート。60年以上の歴史と現在の事業、未来像までまるごと解説!

言わずと知れた人材業界のトップランナーである、リクルート。人材業界で働く人なら誰もが知る同社ですが、企業としての歴史や事業の全体像をご存じでしょうか?

今回はあらためて、リクルートにスポットライトを当て、これまでの歩みとこれから目指す世界について解説します。

リクルートの決算解説はコチラ

リクルートの歴史

まずは、リクルートの60年以上にわたる歴史を見ていきましょう。人材領域を中心に、これまでの歩みを年表にまとめました。重要な出来事もピックアップしてご紹介します。

1960年|大学新聞広告社設立

大学新聞を専門に企業の採用説明会情報や求人広告を掲載する広告代理店として、東京の小さなビルの屋上にあるプレハブで創業しました。複数の大学新聞の広告をまとめて取り扱う契約を結び、その年のうちに法人化しました。

1962年|「企業への招待」創刊

初の自社製品である「企業への招待」を創刊しました。同誌は、大学生向けに新卒採用の求人広告のみを掲載する就職情報誌です。それまで閉鎖的だった新卒採用の世界に、オープンなマーケットが生まれる大きなきっかけとなりました。

「企業への招待」を通じて個人ユーザーと企業を結びつける仕組みを築いたことで、同社の土台である情報のプラットフォームを提供するビジネスモデルが確立しました。

1980年|「とらばーゆ」創刊

「とらばーゆ」は、日本初の女性向けの転職情報誌です。創刊した1980年は男女雇用機会均等法が施行される5年も前であり、女性の社会進出を力強く後押しする画期的な取り組みでした。

誌名の「とらばーゆ」は、フランス語で「仕事」を意味します。単なる雑誌名の枠にとどまらず、「とらばーゆする=転職する」という意味の流行語として社会に広がりました。

1996年|オンライン就職情報サイトをリリース

リクルートは1996年というインターネットの黎明期から、求人情報のオンライン化へと踏み出しました。学生向けには「RB on the NET(現・リクナビ)」、社会人向けには「Digital B-ing(現・リクナビNEXT)」をリリースし、テクノロジーを駆使した新しいマッチングの形を示しました。

就職先・転職先を探す方法が限られていた時代から、求職者が自分の意思で最適な選択肢を見つけ出せる時代へ。現代的な就職・転職スタイルの先駆けとなりました。

2010年|The CSI Companies, Inc.買収

米国の人材派遣会社The CSI Companies, Inc.を買収。M&Aによる人材派遣事業の本格的なグローバル展開に乗り出しました。人材派遣事業の買収に注力し、買収先の生産性を高めることで、欧米や豪州をはじめとする世界各国に拠点を拡大しています。

2012年|Indeed, Inc.買収

2009年に日本に上陸したIndeed。その買収は、リクルートがHRテクノロジー事業へ本格参入する大きな転換点となりました。米国発のIndeed社は世界中の求人情報を集約して一括検索できる独自の仕組みを持っており、求職者が複数のサイトを行き来しなくても、幅広い選択肢から仕事を探せるようになりました。

2018年|Glassdoor, Inc.(現 Glassdoor LLC)買収

米国発のGlassdoorは、オンライン求人広告や企業情報サイトを運営する企業です。求人情報に加えてユーザーからの企業のクチコミなどの独自データベースを保有することで、求職活動における情報の透明性を高め、実態に近い企業像をユーザーに提供してきました。

リクルートは同社の買収により、HRテクノロジー事業のグローバル展開をさらに強化しました。

2021年|Airワーク採用管理のリリース

「Airワーク 採用管理」は、採用ホームページの作成やIndeedへの求人情報の転載、応募者管理まで行える無料採用管理システム(ATS)です。さまざまな業種・規模の企業における採用業務のデジタル化を後押ししています。

2024年|Indeed PLUSを日本でリリース

「Indeed PLUS」は、AIのマッチング技術を駆使した求人配信プラットフォームです。一度の求人を投稿するだけでシステムが内容を分析し、連携している求人サイトの中から最適なサイトを選び自動で情報を配信します。

Indeed PLUSの登場に伴い、「タウンワーク」や「リクナビNEXT」をはじめとするリクルート社の求人メディアは「Indeed PLUS連携求人サイト」となり、そのあり方が大きく変わりました。この出来事は日本の人材業界に大きなインパクトを与えました。

リクルートの事業セグメントと売上推移

上記のような歴史を経て、今のリクルートはどのような形になっているのか。次はセグメント分けと売上を見ていきます。

リクルートは現在、人材領域以外にもビジネスを拡大し、「HRテクノロジー事業」「人材派遣事業」「マーケティング・マッチング・テクノロジー事業」の3つの事業セグメントを手がけています。

3つの事業セグメント

HRテクノロジー事業

「Indeed」や「Glassdoor」を軸に、世界60以上の国と地域でグローバルな求人プラットフォームを展開しています。テクノロジーの力で母集団形成やマッチングを最適化し、企業の採用活動をサポートしています。

人材派遣事業

日本をはじめ欧米やアジア太平洋地域など世界各地で、総合的な人材派遣サービスを展開しています。変化の激しいグローバルな労働市場において、求職者と企業の多様なニーズに合わせ、幅広い働き方を柔軟に提供しています。

マーケティング・マッチング・テクノロジー事業

国内の住宅、旅行、美容、飲食といった多岐にわたる分野で、個人と企業を結ぶプラットフォームを運営しています。単なるマッチングにとどまらず、業務支援SaaSの提供を通じてクライアントのDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援しているのが特徴です。

売上の推移

2018年3月〜2025年3月期(予想)の売上推移について、全社・セグメント別にグラフにまとめました。

※2018年度〜2022年度は「メディア&ソリューション事業」、2023年度に「マッチング&ソリューション事業」へ変更、2025年度より現名称となっています。

まず全社の売上推移をグラフで見ると、2021年に少し落ち込んだあと、2022年から大きく伸びているのが分かります。ご存じの通り新型コロナウイルス流行の影響ですが、興味深いのはHRテクノロジー事業の推移と同じ動きをしている点です。

HRテクノロジー事業は2021年から2023年にかけて急速に成長しました。米国を中心に採用需要が一気に回復・拡大していた時期であり、「Simplify Hiring(=採用をより効率的に)」の方針のもと投資を続け、需要を取り込みながらシェアを拡大していきました。その結果、2022年にはマーケティング・マッチング・テクノロジー事業の売上高を上回っています。

他のセグメントの動きも見ていきましょう。

人材派遣事業は2020年前後に売上が下がっているのが分かります。これは、欧州経済の低迷やコロナ禍に伴うロックダウンの影響を日本よりも早めに受け、人材需要が落ち込んだためです。その後は、Eコマース関連の物流業や医療分野での人材需要の増加を背景に、2021年からは持ち直しています。

それに対してマーケティング・マッチング・テクノロジー事業では、2020年から2021年にかけて落ち込みが続きました。日本国内でコロナ禍が本格化し、旅行・飲食などの主要分野の広告需要が減った影響です。緊急事態宣言が数年にわたって繰り返し発令されたため、他のセグメントよりも影響が長引いたものの、2022年から回復し始めました。

利益推移グラフ

2018年3月~2025年3月期(予想)の利益推移についても見ていきましょう。ここでの利益は、事業の実質的なキャッシュ創出力を示す「調整後EBITDA」を指します。

※2018年度〜2022年度は「メディア&ソリューション事業」、2023年度に「マッチング&ソリューション事業」へ変更、2025年度より現名称となっています。

 利益のグラフも売上と似た動きをしていますが、上下の変動がより大きいのが特徴です。

2021年から2022年にかけての伸びに注目すると、HRテクノロジー事業の売上は103.5%増なのに対し、調整後EBITDAは338.9%増となっています。コロナ禍で進めたコスト削減や新規採用の見直し、マーケティング投資の抑制などを継続していたため、この時期に利益率が大幅に改善しました。

また、マーケティング・マッチング・テクノロジー事業の動きも注目すべきポイントです。グラフの2020年から2021年にかけての急激な落ち込みから、コロナ禍の影響を最も大きく受けた領域だと分かります。しかし、広告費の見直しや投資のメリハリをつけたことに加え、従来の広告モデルから「Air ビジネスツールズ」への転換が進んだことで、2023年以降は増益へと転じました。

人材派遣を見てみると、売上の規模は全セグメントで最も大きいのに対し、利益はこの7年間大きく変化していません。派遣事業の調整後EBITDAマージンが6%〜7%程度と低水準なのに対し、HRテクノロジー事業は30.7%と高収益です。ビジネスモデルの違いが、利益の出方にそのまま表れているといえそうです。

実際に、2022年には利益額においてHRテクノロジー事業が人材派遣事業を追い抜いており、名実ともにリクルートの収益の柱へと成長しています。

リクルートが目指す世界観

ここまで、リクルートの過去と現在を見てきました。ではこれから、リクルートはどのような未来を歩んでいくのでしょうか。同社が目指す世界観や大切にしている価値観について紹介します。

「Simplify Hiring」の概念

株式会社リクルートホールディングス/Recruit Group Profile2024/https://recruit-holdings.com/files/sustainability/data/Recruit_insideout2024_ja.pdf/2026年4月8日時点

「Simplify Hiring」は、煩雑な採用プロセスを「ボタン一つ」で完結するほどシンプルにし、求職者・企業双方にとって無駄のない、より良いマッチング体験を実現することを目指す経営戦略です。

かつて紙媒体がメインだった求人広告は、今やデジタルとAIの力によって大きく変わりつつあります。その一方、1人の採用に至るまで平均55日もの期間がかかるというデータもあり、非効率な採用プロセスは依然として大きな課題となっています。

その結果、求職者は「働きたいのになかなか転職先が見つからない」一方で、企業は「人材不足でビジネスが停滞する」といったミスマッチが生まれているのが現状です。

リクルートでは、AIをはじめとするテクノロジーと採用ニーズの知見を掛け合わせ、採用プロセスの自動化を進めています。

採用プロセスの効率化が進むことで、採用スピードが改善するだけでなく、担当者がコミュニケーションなど人にしかできない業務に注力できるようになります。その結果、求職者がより自分に合った職場を見つけやすくなり、満足度の高い転職につながるという考え方です。

Indeedが提唱する「SHIFT RIGHT」の概念

「SHIFT RIGHT」は、求人広告の成果指標を「応募数」や「応募単価」ではなく、本質的な成果である「採用数」や「採用への歩留まり」重視に変えていく考え方です。

Indeed Japan 株式会社/SHIFT RIGHTとは/https://jp.indeed.com/%E6%B1%82%E4%BA%BA%E5%BA%83%E5%91%8A/shift-right/2026年4月8日時点

労働人口の減少に伴い、従来の「応募数」を最重要視する採用手法は限界を迎えています。これからの採用では、単に母集団を形成するのではなく、ミスマッチを減らし、いかに効率よく採用につなげるかが重要です。

Indeedは「とりあえず多くの応募を集めて選ぶ」のではなく、質を重視した「確実に採用し、定着につなげる」プロセスへの転換を提唱しています。

これにより、企業が自社にマッチした人材を獲得できるようになるだけでなく、求職者にとっても自分に合った職場で長く働ける環境が実現します。

「Simplify Hiring」に基づく取り組み

リクルートではHR関連事業間で協業しながら、AIと膨大なデータを融合させた取り組みを進めています。

代表的な取り組みが、求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』です。Indeedの技術とリクルートの持つ膨大なデータを掛け合わせ、複数の求人メディアへの配信を最適化することで、マッチング精度が大幅に向上しました。

さらに人材派遣事業では、AIマッチングエンジンを試験的に導入したところ、応募数が90%増加するなどの成果が現れ始めています。

こうした取り組みは、単なる効率化にとどまらず、求職者と企業の双方にとって満足度の高い出会いを増やす基盤となっていくと考えられています。

まとめ

リクルートは1962年の就職情報誌創刊以来、紙媒体からインターネット、そしてグローバルなHRテクノロジーへと領域を広げてきました。さらにIndeedやGlassdoorの買収を通じて、世界規模の求人・採用サービスを構築しています。

現在は「Simplify Hiring」「SHIFT RIGHT」を掲げ、AIとデータを活用した採用の効率化とマッチング精度の向上に取り組んでいます。ミスマッチを減らし、求職者と企業のより納得感のある出会いを生み出そうとしている点が印象的です。採用のあり方そのものを変えていく存在として、今後の動きにも注目が集まりそうです。

HRog編集部は、引き続きリクルートの動向を追っていきます!

(執筆:川瀬ゆう)