【HRog決算解説】ギークス株式会社の2025年3月期通期決算から見える人材業界の最新トレンドは?

ギークス株式会社の2025年3月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!

一目でわかる! 決算情報のグラフィックまとめ

ギークスの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

もう少し詳しく! 今期セグメント別の業績は?

ギークスの今期決算について、主に決算短信をもとにセグメント別の業績や業績予想について詳しくまとめました。

出典元:決算説明資料(p.5

国内IT人材事業

国内IT人材事業は、主にITフリーランスおよび正社員エンジニアと企業とのマッチングサービスを提供しているセグメントです。

持続的成長のため、DX施策による業務効率化と組織強化、広告宣伝費の見直しによる育成を行いました。またITフリーランスが実際に働いた期間の合計を示す稼働人月数は第4四半期で過去最高の5,011人月に伸長し、通期では19,125人月。ITフリーランス獲得コストに対するリターンを示すユニットエコノミクスは、過去最高の5.7ポイントとなりました。

これらの結果、通期の売上高は153億6,300万円(前期比+9.0%)で過去最高、セグメント利益は12億8,400万円(前期比+12.3%)となりました。四半期売上高も初の40億円超えとなり、過去最高を更新しました(決算説明資料,p.5)。

海外IT人材事業

海外IT人材事業は、主にオーストラリアでIT人材に特化した人材派遣・人材紹介サービス、顧客の人材調達から契約に至る一連のプロセスを包括的に行うMSPサービス等を展開しています。

当連結会計年度は、オーストラリアの高金利による企業投資抑制など、現地の市況低迷の影響を大きく受け苦戦。顧客関連資産5.07億円を含め、計5.4億円を特別損失に計上しました。MSP売上は増加しましたが、利益獲得には厳しい状況が続きました。

これらの結果、売上高は94億1,400万円(前期比+31.4%)、セグメント損失は1.5億円(前期は1.3億円の損失)となりました。

Seed Tech事業

Seed Tech事業は、日本とフィリピンに拠点を構え、IT人材の育成を軸としたオフショア開発受託、IT留学、SaaS型DX/IT人材育成サービス「ソダテク」などを提供しています。

IT留学や「ソダテク」におけるリスキリング需要の高まりを背景に堅調に推移しました。一部の新規オフショア開発プロジェクトは次期にずれ込みましたが、DX・AI人材育成領域への積極投資を進めています。

これらの結果、売上高は3億2,900万円(前期比+17.1%)となり、セグメント利益は500万円(前期は2,300万円の損失)と黒字化を達成しました。

その他事業

その他事業は、ゴルフ等のスポーツ領域を中心としたデジタルマーケティング支援等を行っていました。

事業ポートフォリオの見直しの一環として、この事業から撤退する経営判断が行われました。これにより、IT人材領域以外の分野からグループ内は完全に撤退し、今後はIT人材領域に特化して事業戦略を推進する方針です。

売上高は8,200万円(前期比▲35.9%)、セグメント損失は1,800万円(前期は400万円の利益)となりました。

来期の業績予想について

出典元:決算説明資料(p.21)

ギークスは2026年3月期の連結業績予想として、売上高266億円(前期比+5.7%)、営業利益7.0億円(同+41.3%)、経常利益6.6億円(同+33.5%)、純利益4.0億円(同+703.3%)を計画。

セグメント別に見ると、国内IT人材とSeed Tech事業は2桁成長を見込み、海外IT人材事業は通期での黒字化を目指していきます。

IR担当者に聞いた! 今期決算資料の注目トピックは?

今回は、ギークスのIR担当者に今期決算資料の注目トピックについて伺いました。

出典元:決算説明資料(p.6)
ギークスIR担当者
ギークスIR担当者

上場以来、売上高は年平均18.4%成長しております。2024年3月末にゲーム子会社を売却、2025年2月にアライヴ社をM&Aし、IT人材領域にフォーカスするための事業ポートフォリオの整理をしてまいりました。その結果、2025年3月期に営業利益のV字回復を達成、2027年3月期には営業利益10億円超を目指しております。

出典元:決算説明資料(p.22)
ギークスIR担当者
ギークスIR担当者

企業価値向上に向けた成長投資を継続しつつ、株主還元も実施します。今期は前期より10円増配し、1株あたり20円の配当を予定しております。

出典元:決算説明資料(p.26)
ギークスIR担当者
ギークスIR担当者

これまでフリーランス領域を主力事業としてきましたが、今後はアライヴ社の正社員IT人材との連携によるハイブリッドチームや、オフショア開発を組み合わせた包括的なIT人材活用を提案します。新規事業においては、デジタル人材育成に注力し、中小企業向けにDX・AI活用コンサルティングを推進します。

HRog編集部の今期決算注目ポイント

出典元:決算説明資料(p.25)

生成AIの発展によりIT人材の仕事がなくなると話題になる昨今、ギークスは「進化するIT人材の仕事は無くならない」とし、生成AIによりIT人材の役割が変化しても、その需要はむしろ拡大していくと述べています。

出典元:決算説明資料(p.24)

実際にAI関連求人数は2017年と比較して4.7倍と大きく伸び、国内AIシステム市場の2027年予測は1兆1,034億円、国内IT投資全体の2028年度予測は26兆4,447億円とされています。

出典元:決算説明資料(p.27)

その状況の中、同社は主力の国内IT人材事業において、ITフリーランスへのソダテク無償提供による人材価値向上施策や、生成AI活用の促進による組織力強化を進めています。これは社内で生産性向上と人材育成を進めることで、社外への提供価値最大化を図っていく方針を示しているといえるでしょう。

まとめ~人材業界の最新トレンドは?~

自らを「日本のIT人材不足を解決する会社」とするギークスは、前期のゲーム事業売却に加え、「その他事業」からも撤退して事業ポートフォリオをIT人材サービスに特化する姿勢を明確にしました。アライヴ社のM&Aにより正社員領域を強化し、新規事業として中小企業のDX・AI活用支援まで領域を拡大するなど、企業が抱える課題を多角的に解決しようとしています。

そのような外部へのサポートだけでなく、ギークス自身も社内でDX・AI活用を積極的に推進し、その取り組みを成功させています。主力の国内IT人材事業では、社内のDX施策を通じて業務効率化と生産性向上に重点的に取り組んでおり、最大で一人当たり月間40時間の工数削減を実現しました(決算説明資料,p.28)。またITフリーランスへ「ソダテク」を無償提供するなど、自らが率先して「進化するIT人材」の育成に力を入れていることが伺えます。

AI時代でも活躍するIT人材の価値を「業務遂行型」から「価値創出型」と再定義し、その価値創出を社内外で体現すべく成長を続けるギークス。HRog編集部では今後もその動向に注目していきます!

【参考URL】
ギークス25年3月期 決算短信
ギークス25年3月期 決算説明資料
ギークス25年3月期 決算説明書き起こし