ディップの第3四半期決算が発表されました。前四半期に続いて非常に良い業績です。前回ディップ株式会社の決算情報分析(2016年2月期第二四半期)に続いて、決算発表資料を元に、ディップ株式会社の成長の要因について分析を行いたいと思います。
前年同四半期から37%の成長です。
営業利益額も47%の増加、営業利益率も2ポイント増加しています。
目次
セグメント別業績
売上全体の8割近くがバイトル事業に占められていることがわかります。
年間売上では、今期第3四半期までの累計ですでに昨年度の年間売上に達しており、今期は年間200億円を突破する勢いです。
次に、バイトル事業の成長戦略を分析してみましょう。
バイトル事業の戦略分析
バイトル事業は急成長を遂げています。今期売上が200億円で、このまま30%成長すると来期は260億円、来々期は338億円です。果たしてこの勢いがどこまで続くものか気になってきますね。
バイトル事業がどこまで成長するかを測る一つの目安が「市場規模」です。
決算説明資料には、バイトルに掲載されている求人情報件数と、市場全体の求人件数が書かれています。
15%が、バイトルの市場シェアと見ることができます。
今後、バイトルのシェアはどこまで伸びるでしょうか?「アンゾフの成長マトリクス」を使って分析してみましょう。
一定以上のシェアを持った企業は、市場の中でシェアを伸ばすとともに、新しい市場を開拓する。もしくは新製品を開発し、売上を拡大すると言われます。この企業活動を分類したものが「アンゾフの成長マトリクス」です。
企業が売上を拡大する戦略を4つの象限に分類して分析を行う手法です。
市場浸透戦略・・・既存の製品を既存の市場で販売する。
新規市場開拓戦略・・・既存の製品を新しい市場で販売する。
新製品開発戦略・・・既存の市場に新しい製品を販売する。
多角化戦略・・・新しい製品を新しい市場で販売する。
この手法を使って、決算説明資料に書かれている施策を分析してみましょう。
バイトル事業における施策
・プロモーション戦略・・・AKB48を起用したCMを中心としたプロモーション
・主婦・主夫層向けプロモーション・・・母娘共演CM、イオンチャンネルでのCM
・バイトルプッシュ・・・iBeaconを使って、求職者の近くの店舗を案内する機能
・バイトル社員・・・社員求人専門サイト
・バイトルゴールド・・・成果課金型求人広告
・営業力強化・・・300人の新卒採用、営業拠点を7拠点増加
市場浸透戦略
既存製品である「バイトル」を既存市場である「アルバイトを探す企業(店舗)」に販売する行動です。
ディップは積極的な投資による売上拡大戦略を行っています。AKB48を適用した大々的なプロモーション活動と、300人の新入社員採用・6拠点の営業所新設による営業力強化がこれに当たります。
新規市場開拓戦略
新規市場に、既存製品である「バイトル」を販売します。
従来のバイトルは、AKB48によるプロモーション、スマホサイトの強化など、学生やフリーターなどの若者に向けたPR活動を行ってきました。
これに加えて主婦・主夫層に向けたプロモーションを行うことで、「学生バイトを探したい企業」という市場に加えて、「主婦層を探したい企業」を新たな市場として開拓しています。
もう一つの新規市場は「社員を探したい企業」です。飲食店や販売店にも社員ニーズはあり、一方で、バイトルでバイトを探すフリーターの中には「できれば社員になりたい」というニーズを持つ層があります。「バイトル社員」は昨年同期比97.8%の成長をしており、新規市場の開拓に成功したと言えるのではないでしょうか。
新製品開発戦略
既存市場である顧客、求職者に対して「バイトルゴールド」「バイトルプッシュ」という新製品を販売する戦略です。バイトルゴールドは、バイトの採用に対して料金が発生する成功課金型の求人サービスです。バイトを採用できなければ費用は発生しません。ジョブセンスを始めとして、同様のサービスを展開している競合他社への対抗策です。
また、「バイトルプッシュ」はバイトを募集している店舗の近くを通過すると、自動的にスマホに通知されるシステムです。自分の行動圏内でバイトを探したいニーズに応えています。新規市場への市場開拓だけではなく、既存市場での新規サービスも開発されていることがわかります。
これらの戦略の注目すべき点は、従来の資源を上手く活用している点です。
バイトル社員は、既存のバイトル登録者という資源を活用しており、主婦層の開拓も、既存の登録者である娘が母と一緒にバイトを探す、スマホの使い方を教える、というアプローチをしています。
バイトルゴールド、バイトルプッシュも既存製品と競合することなく、既存製品との相乗効果を発揮する製品です。非常によく考えられた戦略だと思います。
今後のバイトル事業の戦略予想
市場浸透戦略
今期に引き続き、圧倒的なプロモーション戦略と、営業力拡大によるシェア拡大が予想されます。現在27拠点の営業所はどこまで増えるでしょうか。全都道府県に営業所+都心部に複数拠点、と考えると、まだまだ伸びしろがありそうです。
新規市場開拓戦略
新規市場開拓は、主婦層・社員希望層への開拓が始まったばかりです。これからも成長が期待できると思われます。また、「シニア層」「サイドビジネス層」など、新たな市場への拡大も予想されます。
新製品開発戦略
決算説明資料には紹介されていませんが、「バイトルシフト」というサービスがあります。飲食店や販売店がバイトのシフト管理を手軽に行うためのシステムで、アルバイトがスマホやPCから希望日程を入力すると、自動的に集計されます。
ディップが、このような新製品を現在も多数開発していることが期待できます。
スマホを使って自宅から面接を受けるシステムや、バイト先店舗の内部を動画で確認するサービスなど、様々な展開が考えられます。
ディップは、一見すると若者向けに派手なプロモーションを行って規模拡大をしている会社に見えますが、実際は、堅実に経営戦略を考えていることがわかります。
これからどのような戦略を打ち出すのか楽しみですね。
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