2015年頃から日本でも徐々に話題に上がり始めてきたHR Tech。参入企業は増えてきたものの、日本で浸透するのはこれからという印象があります。
では、HR領域でデータやテクノロジーの活用が進んでいる欧米では今、どの様な状況なのでしょうか。
CB Insights の記事を基にHR Tech企業の資金調達額を調べると、2011年で76件2億9,600万ドルだったものが2015年では379件24億400万ドルまで伸びており、調達額は約8倍まで伸びており、2016年もこの傾向は続くと言われております。
[引用]
CB Insights, HR Tech Roars Back As Deal Activity Ties All-Time High
(https://www.cbinsights.com/blog/deal-activity-record-q1-2016/)
目次
アメリカのHR Techにはどんなプレーヤーがいるのか?
今回はHR Techにおける大型スタートアップ企業をご紹介するために直近5年以内に1億ドル近くの大型資金調達を行ったHR Tech企業10選をお届けいたします。
日本のHRベンチャー界で大型資金調達と言われたビズリーチの直近の調達額が48.8億円(約4,400万ドル)ですので、比べてみるとどれ位大きいのかイメージが湧くかと思います。
1.Zenefits (https://www.zenefits.com/)
2013年に設立されたばかりなのに既に5億8,360万ドルを調達し急成長した最注目のスタートアップ。中小企業向け人事管理ソフトウェアを提供し、従業員の給与支払から労務管理、保険、勤怠計算、従業員情報の管理まで幅広くカバーしています。
ソフトウェア利用料は基本無料であることを売りにしており、オプションサービスの有料課金やZenefits経由で保険契約をした際の手数料を収益としています。
但し、コンプライアンスの問題による共同創業者Parker Conrad氏の退任や、大手企業向け営業の苦戦による大規模なリストラ実施など、今後の成長が危ぶまれています。
2.Qualtrics (https://www.qualtrics.com/)
2億2,200万ドルを調達し、6,000社以上の導入実績のあるSaaSベースの調査分析プラットフォームを提供する企業。
HR関連では従業員満足度や研修アンケート、360度フィードバックなどを通じて従業員動向を分析するサービスを提供しています。その他にもマーケットリサーチや顧客体験、顧客満足に関する調査分析ツールを提供しています。
3.Glassdoor (https://www.glassdoor.com/index.htm)
数千万ドルクラスの資金調達を継続的に行い、総額2億150万ドルを調達した転職クチコミサービス。
なかなか外から見えない会社の状況(給料や現場の雰囲気など)を匿名の口コミ情報により見える化しています。1,000万件以上の案件情報が掲載されており、ユーザーは口コミ情報を基にどの求人に応募するのかを選ぶことができます。
4.SilkRoad Technology (http://www.silkroad.com/)
1億9,950万ドルを調達し、日本からはNTTファイナンスが出資した、人材獲得から人材開発まで幅広く行えるクラウドツールで約2,000社が利用しています。採用管理としてはIndeedやMonster等無料で求人掲載できる各ポータルサイトと連携しており、それらを経由して人材を獲得することもできます。
また、従業員向けの目標管理や学習管理機能も搭載しています。
5.OneSource Virtual (https://www.onesourcevirtual.com/)
1億6,500万ドルを調達した、世界の大企業で使われているSaaSベースの人事財務管理ソフトウェアWorkdayの代理店として各企業に販売・導入などを行っている企業。
その他には給与支払や労務管理のコンサルティングも行っています。
6.Pluralsight (https://www.pluralsight.com/)
1億6,250万ドルを調達した、プログラミング、IT関連業務、クリエイティブ系(Webデザイナー等)向けのスキルが学べる世界最大級の学習支援サービス。
5,000以上のコース、スキルチェックテスト、プロによる学習プランのアドバイスなどコンテンツが充実しており、150カ国200万人が受講しています。
7.Gusto (https://gusto.com/)
Google VenturesやY Combinatorなど、有名なベンチャーキャピタルや投資家の多くが投資し1億5,700万ドルを調達した、注目のHR Tech企業。
給与計算、福利厚生、勤怠管理、401(k)(確定拠出年金)などに対応したシンプルのSaaSベースの人事管理ソフトウェア。各州の税制に対応しており、自動で計算してくれます。
また、専用アプリを通じて従業員自身がアプリで自ら情報を入力し、アプリで給与明細の確認もできる様になっています。
8.Snagajob (http://www.snagajob.com/)
1億4,100万ドルを調達した全米No.1のアルバイトの求人サイト。25万件以上の有効求人、70万人以上の登録者、月間400万件以上の応募実績があります。
9.Namely (https://www.namely.com/)
1億780万ドルを調達した中堅企業向けの人事管理ソフトウェア。
給与や勤怠管理だけでなく福利厚生やタレントマネジメント(配属や評価など)の機能を一通り兼ね揃えており、総合的に人事の職務支援を行ってくれる。世界20カ国250社以上でサービスが利用されています。
10.HireVue (https://www.hirevue.com/)
9,300万ドルを調達した採用プロセス管理ツール。
応募者のスコアリングやモバイルアプリを使ったオンライン面接など、機能が充実しており、プロフィール選考や面接の対応ができるだけでなく、保有する大量のビッグデータから自社に合う人材をある程度絞ることができます。140カ国600社以上で利用されています。
[参考]
資金調達額の情報は2016年11月時点で世界最大級のスタートアップデータベースCrunchBaseに掲載されている情報を基にしております。
https://www.crunchbase.com/
HR Techトレンドの変遷
ご紹介した10企業を見てみると、クラウドベースの人事管理システムやモバイルアプリを活用したサービスが多いことが読み取れます。
Josh Bersin氏のレポートによると、2000年から2016年にかけてHR Techのトレンドは下記の様に変わってきています。
- 1.HR業務の自動化、効率化
- 2.企業全体でのタレントマネジメント(人材活用)
- 3.クラウドベースのエンゲージメント管理システム(※エンゲージメント=従業員の企業に対する強い愛着心)
- 4.「より働きやすくする」ためのアプリ活用
今後上記3と4が進むことで、よりタイムリーで正確な情報を活用して企業と従業員間のやり取りが進んでいくと考えられます。単なる「マネジメント(管理)」から「エンゲージメント」へHRの概念が変わっていくとともに、HR Techも発展していくのではないでしょうか。
[引用]
Josh Bersin, Bersin by Deloitte, HR Technology Disruptions for 2017: Nine Trends Reinventing the HR Software Market
(http://marketing.bersin.com/hr-technology-disruptions-2017.html)