テンプホールディングス決算分析(2016年3月期 第3四半期)

テンプホールディングス(以下、テンプ)の第3四半期決算報告が2月12日に発表されました。

業績はどのような結果になっているでしょうか?連結決算概要資料を元に分析を行いました。

業績推移

売上高は、前期に対して839億円の増加、28%の成長です。
営業利益も前期より28.9%増加しています。

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セグメントごとの売上比率は以下のとおりです。

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派遣・BPOセグメントが売上の78%を占めており、前年同期比35%の伸び率で767億円の増額です。
全セグメント合計売上の伸び額が839億円なので、このセグメントがテンプ全体の売上に対して大きな影響を与えていることがわかります。

派遣セグメントの伸び

派遣・BPOセグメントの第3四半期累計売上は昨年対比+35%の成長となっており、うち30.2%がM&A効果、5%がオーガニック成長とされています。

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M&A効果に含まれるのは、パナソニックエクセルスタッフ、P&Pホールディングスの2社です。派遣・BPOセグメントのうち、この2社を除いた会社の成長がオーガニック成長となり、この率が5%ということになります。

リクルートの第3四半期決算分析を見ると、(派遣セグメントの国内売上の伸び率が5.5%とされているので、両社の派遣事業における成長率は同程度と見ることができそうです。(ちなみに、リクルートの海外派遣事業は65%の伸びですが、これはM&A効果が含まれています。)

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昨年度第3四半期累計では、リクルートの売上の方が高いのですが、今期第3四半期ではテンプがかなりの追い上げを見せています。オーガニック成長率が両社同程度なので、この追い上げはM&Aによるものと言えるでしょう。
リクルートとスタッフサービスの合併により、国内派遣業界トップはリクルートになったと言われていましたが、今期末決算では逆転している可能性も見えてきました。

リクルートも対抗してM&Aを行う可能性もありますが、ここ数年のリクルートは、国内より海外でのM&Aに資金を投入しています。テンプにとって国内派遣シェアでリクルートを越えるチャンスです。

派遣会社の規模拡大のメリット

M&Aは売上拡大に効果的ですが、リスクもあります。
多額の費用をかけて企業を買収しても、思ったような効果が出ず、買収費用が無駄になるだけでなく、買収した企業にかかる費用が負担になる可能性も考えられます。
リスクをおってでも、M&Aを行うべきでしょうか?

派遣会社にとって、売上拡大、企業規模拡大をすることによるメリットを考えてみましょう。

規模拡大のメリット1 スタッフ数・取引先数の増加

人材派遣会社を買収することのメリットは、登録派遣スタッフ数の増加です。

人材派遣業はマッチングビジネスですので、顧客から依頼を受けても、顧客の要求に合致した派遣スタッフを見つけることができなければ取引が成立しません。

特にここ数年は有効求人倍率が上昇傾向にあり、良い人材の獲得競争が加速しています。
一方で、せっかく派遣スタッフが登録に来てくれても、希望に合致した仕事が紹介できなければ機会損失になってしまいます。
M&Aによって登録している派遣スタッフ数・取引先数を増やすことで、それだけ両者のマッチング確率が向上します。

規模拡大のメリット2 広告宣伝費

テンプのキャラクター、テンプリンのイラストが書かれた電車を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
このような広告をラッピング車両といいますが、テンプは、都心部の電車やバスでラッピング車両による広告を展開しており、これにはかなりの費用がかかっていることが予想されます。

派遣会社はタダで登録スタッフを集めているように思われることもありますが、実際にはこういった広告や、リクナビ派遣などの有料求人媒体に情報を掲載することで登録者を集めています。Web求人媒体は費用によってコースが細かく別れており、最も安いコースは文字だけの求人になることもあります。
そこから、写真を入れたりして目立つものにすると追加料金が発生します。さらに、企業専用の特別ページや、検索順位が上位になるようにするプログラミングを行うなど様々なオプションがあり、それぞれ費用が発生します。
派遣会社の規模が大きくなれば、ラッピング車両やCMなどの大々的な広告を行い、知名度を上げることができます。

また、求人媒体への掲載も、追加費用を払うことで効果が上がります。さらに、大手派遣会社は、求人媒体に大量の仕事情報を掲載することと引き換えに、値引き交渉を行っていると言われています。
規模の小さい派遣会社には、そこまでの費用をかけて広告宣伝を行うことが難しいため、知名度や仕事情報の「見てもらいやすさ」においてテンプが優位に立つことができます。

このように、企業の規模が大きくなることによって発生するメリットは「規模の経済」と呼ばれます。一つの企業が圧倒的な規模によって競争力を持つと、他の企業はなかなか参入できなくなります。

テンプvsリクルート 勝負の行方は・・

規模で見ると、リクルートの方が断然大きいじゃないかと思われるかもしれません。確かに企業全体の売上はリクルートの方が断然高く、派遣セグメントにおいても海外の売上までを加えると、リクルートの方が高くなります。

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これが製造業であれば、海外の売上を含めた規模が重要になります。
例えばマクドナルドは、世界中のマクドナルドで使用する材料を合計し、一括購入することで、仕入れ価格をおさえています。


しかし、人材派遣業では、国をまたいだ規模はあまり影響力を持ちません。(アメリカで派遣登録者がどれだけ増えても、日本での売上拡大にはほとんど影響しません。)また、求人広告も「全世界共通の広告を一斉発信」というのも考えにくいですね。
考えられる手としては、全世界的に有名なキャラクターを世界規模で契約することくらいでしょうか。

したがって、テンプは、日本の派遣市場でリクルートをおさえてナンバーワンの地位を獲得することができれば規模の面で優位なポジションにつけるのです。

来期も引き続きM&A戦略によって規模を拡大し、国内派遣市場においてリクルートを越えてナンバーワンの地位を獲得できるのか。リクルートが国内派遣事業にテコ入れを行って巻き返しを図るのか。勝負の結果に注目です。

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