パソナグループの決算から見る、人材業界のこれから – HRog | HR業界、採用に関するニュースメディア

パソナグループの決算から見る、人材業界のこれから

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今回の記事は、公認会計士 眞山 徳人氏により寄稿いただきました。
眞山氏は公認会計士として各種コンサルティング業務を行う傍ら、書籍やコラム等を通じ、会計やビジネスの世界を分かりやすく紐解いて解説することを信条とした活動をされています。 眞山氏の著書、「江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本」では、難解な会計の世界を分かりやすく解説しています。

2016年4月8日、パソナグループが第9期の第3四半期(2015年6月1日〜2016年2月29日までの9ヶ月間)の決算発表を行いました。M&Aなどのプラス要因を受けて売上高を約15%伸ばす一方で、営業利益はやや減少しており、前年同期に比べて収益性が低下した結果となりました。

今回のレポートでは、同グループの決算短信・補足資料等に基づいて事業の概要を把握するとともに、今後のパソナグループ、ひいては人材派遣業界のマーケットの動向の予測を試みたいと思います。

まずは、どんな事業があるかを知ろう

最近発表されたパソナグループの決算書(平成28年5月期第3四半期)によると、現時点でパソナグループが営んでいる事業は、細かく分けると7つあります。

・エキスパートサービス(人材派遣)
・インソーシング(委託・請負)
・HRコンサルティング、教育、研修、その他
・グローバルソーシング(海外人材サービス)
・キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援)
・アウトソーシング(福利厚生の代行)
・ライフソリューション、パブリックソリューション(主に官公庁向け事業)

パソナというブランドイメージで連想されるのはなんといっても人材派遣ですが、実際には委託や請負(組織コンサルティング関連)や、アウトソーシング(福利厚生の代行)といった分野の事業も手掛けています。

企業の経営資源は大きく「ヒト・モノ・カネ」と分けることができますが、パソナグループは人材の派遣を軸としながら、企業の「ヒト」にまつわる様々なサービスを提供している企業なのだ、ということができそうです。

分析の「ゴール」を設定する

今回の分析の目的は、以下の2つです。

・パソナグループが「今」どの事業で儲けを得ているのか
・パソナグループが「今後」どの事業で儲けられそうなのか

そしてこれらの分析を通じて、人材派遣業全体の将来像を推測してみたいと思います。

事業のライフサイクルを知っておこう

例えば人間であれば、将来の姿はある程度想像することができます。
小学5年生の5年後は高校1年生になっている可能性が高いですし、新入社員であれば、5年後はある程度の確率で主任に昇格しているかもしれません。一般的な人のライフサイクルに当てはめれば、おおまかな予想はつくものです。
人間と同じように、事業にもライフサイクルがあります。それは以下のようなものです。

・導入期…新しく事業が始まったばかり。うまくいくかどうかはスタートダッシュをいかに効率よく行えるかにかかっている。

・成長期…事業が軌道に乗りつつある時期。ただしライバルがたくさん現れる時期でもあるため、素早く成長させないと成熟期にたどり着けず、そのまま衰退してしまう。

・成熟期…成長し、安定的な時期。業種によってはこの成長期がかなりの長期間続くこともある(が、厳密にはその中で小さなレベルで新たな創生期や成長期が生まれていることが多い。テレビ事業におけるブラウン管、液晶、4Kなどの製品の変化や、自動車業界におけるガソリンカー、ハイブリッドカー、電気自動車などが良い例)。

・衰退期…事業が終わりに向かう時期。これを避けるために、上述のような新しい創生期から始まるサイクルを生み続けたり、成熟期の巡航期間を延ばしたりすることが重要になる一方、このような衰退期にある事業から早く撤退するということも、上手な経営の一面である。

パソナグループの場合は、先述の通り7つ事業があるわけだが、それぞれの事業が「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のいずれかに分類できる。
問題は、「6歳から12歳までは小学生」とある程度年齢で簡単に分類を判断できる人間とは異なり、会社や事業の成長速度や寿命はバラバラであるということ。
したがって、ライフサイクル上の分類は社歴や事業の歴史ではなく、あくまでも数値分析をはじめとした客観的な材料にしたがって行う必要があります。
それでは、具体的にはどのような分析が有効なのでしょうか。

バブルチャートを作ると見える「事業の将来」

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図は、一般的に「バブルチャート」と呼ばれるものです。1つのグラフ平面に3つの要素を並べています。

・縦軸…各事業の営業利益率=どれくらい効率よく儲けたか
・横軸…各事業の成長率=どれくらい売上を伸ばしたか
・円の大きさ…売上高=どれくらい売り上げたか

このバブルチャートを見ることによって、それぞれの事業が「ライフサイクル」のどの位置にいるのか、を推し量ることができます。大まかにいうと、バブルチャートの見た目とライフサイクルの関係は、以下のような表の形に整理されます。

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成長期に該当する事業が5つあるように見えるが・・・

こうやって7つの事業をプロットしてみると、「成長期」に5つ、「成熟期」に1つ、そして「衰退期」に1つの事業が当てはまっているように見えます。
しかし、数字による分析結果はあくまでも表面的なものなので、もう少し掘り下げた見方が必要です。

例えば、一見「成長期」に見えるインソーシング。
成長性が非常に高いように見えるのは、実はM&Aの影響です。企業を買収したり合併したりすれば、その会社の業績が単純に足し算されるわけですから、売上高が増加するのは当然のことです。そういった影響を除外すると、実際には成長率はそれほど高くなく、「成熟期」に分類するのが妥当です。企業がM&Aを行った場合、こういった「成長期もどき」の事業が現れることがあるので、注意する必要があります。

さらにもう一つ注目しなければいけないのが「衰退期」に属するライフソリューション、パブリックソリューションです。これは官公庁などが行っている女性進出の支援などの事業をパソナグループが受託しているものなどが含まれるのですが、そもそも官公庁向けの事業は利益率が高くなりにくい傾向にあり、場合によっては利益率がマイナスになってしまうケースも、結果としては生じえます。
しかし、それでも国の事業を引き受けているというステータスは、企業のイメージにプラスに働くこともあります。こういった「役所」と連携したビジネスは、パソナグループにとっては損益を度外視してでも行う価値があるものなのかもしれず、「衰退期」に見えるからと言って即座に撤退すべき、と判断するわけにはいかないものです。

派遣ビジネスは競争激化。新しいビジネス創出が成否を分けるカギ

以上、パソナグループの決算数値を分析してみました。
全体として売上高を伸ばしつつも、利益率が低下してしまった背景には、「成長期もどき」のインソーシング事業が影響していることがなんとなく読み取れたかと思います。

パソナグループの中核事業であるエキスパートサービス(人材派遣)事業は、競合企業が増えるにつれて少しずつ価格競争が激しくなっており、高い利益率を見込むことが少しずつ難しくなりつつあります。

そんな中、新しく利益を稼ぎ出せる事業として注目されるのが、「成長期」に属する事業の中で、特に利益率の高いアウトソーシングやキャリアソリューションといった事業です。企業の人事に関連する悩みにいろいろな形で答える、ということを、いかに形を変えながら続けていけるか。パソナグループをはじめとした人材派遣業は、そういった分岐点に立たされているのかもしれません。

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