
株式会社ワンキャリア
Evangelist
寺口 浩大 氏
てらぐち・こうだい/兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。リーマンショック直後、三井住友銀行に入行。企業再生、M&A関連の業務に従事したのち、デロイトで人材育成支援に携わる。現在、ワンキャリアでEvangelistとして活動。専門はPublic Relations。現在は、2025年10月のカンファレンス、採用ウルトラキャンプに向けて「採用を開こう、そして超えよう」の実現のための仕込みに奮闘中。
株式会社フロッグ
執行役員
水野 純
みずの・じゅん/東洋大学を卒業後、WEB制作領域で1日350件のテレアポ下積み時代を経て、マネージメントを経験。その後、大手企業に対する求人広告営業、CRM/SFAベンダーの営業として活躍し、2022年4月株式会社フロッグにジョイン。営業責任者として社内のチームを横断した営業やカスタマーサクセス領域を歴任し、現在に至る。
2025年8月、株式会社ワンキャリアは10周年を迎えた。その間、採用の現場では何が変わり、何が変わらなかったのか。そしてその中で、ワンキャリアは今後どんな役割を果たしていくのか。
今回はワンキャリアのEvangelist・寺口氏に、フロッグの執行役員・水野がインタビュー。変化の実相とこれからの展望について話を聞いた。
社会と個人の「ベース」が変わった10年間

この10年の間に、世界では社会のあり方を変えるさまざまな出来事が起こった。ワンキャリアの創業からほどなくジョインし、歩みを同じくしてきた寺口氏は、その変化をひとことでこう整理する。
寺口「この10年を振り返って思うのは、『社会が変わった、個人も変わった、でも企業がそれほど変わらなかった』ということですね。
社会の変化は『オンラインベース、SNSベース、AIベース』という3つの軸で捉えることができます。コロナ禍でオンラインの価値観が浸透し、若い世代の間ではブロック・キャンセル・ミュートといった機能が人間関係のあり方を良くも悪くも軽やかなものに変えました。AIも日常に溶け込み、様々なものをAIで代替する発想が当たり前になりましたよね。
以前、マーケターの方が『SNSマーケティングって言葉は死語だよね』と話していたのが印象的でした。もうSNSのないマーケティングなんてありえないでしょう、と。オンライン、SNS、AIという3つの新しいベースが生まれた10年でした」
そうした変化の中で、個人の情報収集・意思決定の方法は変わってきた。仕事選びに関しても、働き方改革が進められ、リモートワークやフレックスタイム制などの選択肢が増えたと言えるだろう。
寺口「『気の合う人と働きたい』とか『働き方を選びたい』とか、仕事選びやキャリアに関するニーズは昔からあったはずなんです。でも、選択肢としてなさそうだからと無意識に諦めていましたよね。この10年で、『どうやらそういう働き方をしている人がいるらしい』と情報が広まって、自分もやりたいと思う人たちがとても増えてきました」
しかし寺口氏は仕事にまつわる変化について、「個人の『ありたい・やりたい』は変わったが、『あり方・やり方』が変わりきっていない」と分析する。
なぜ企業は変われないのか?個人ニーズとの間に生まれるズレ

社会や個人が変化する一方で、多くの企業はそのスピードに追いついていない。その結果、個人の「やりたい」と企業の「やり方」の間にズレが生じていると寺口氏は言う。
寺口「企業の採用ルールや人事制度が追い付いていないんですよね。だから、こういう風に仕事を選びたいけどできない、こういうキャリアを作りたいけど作れない。社会が変わり、個人も変わりたいのに、企業が変わっていないから個人が変わりきれない。これがこの10年の構造だと思います」
水野「具体的に企業のどういった部分が追いついていないんでしょうか?」
寺口「『終身雇用は限界だ』という世の中の空気になっているのに、ほとんどの企業の採用にはその前提が落とし込まれていません。特に新卒採用では顕著です。個人側は『“1社目では”まず何をしよう?』と考えていますが、企業側はそれを考慮した投資プランを組んでいないんです」
このズレは「ずっとここで働き続けるふりをしないと受からない」と求職者に思わせ、嘘を生む構造的な問題をはらんでいる。さらに、副業や他社での経験を禁止するなど、新しい時代のキャリアの資産形成を妨げるような旧来のルールも根強く残っていると寺口氏は指摘する。
寺口「採用担当者の間で『Z世代はこうなんでしょ?』という決めつけが進んだのも、良くないと感じています。年収や市場価値、ワークライフバランスが大事なんでしょ?と一括りにしてしまう。その結果、スペック訴求に偏り、『何年目で年収いくら』といった話ばかりになったり、『うちはすごいところがないので』と企業側が勝手に諦めてしまったりするんです」
水野「ニュースでは安定志向の若者が増えているという話や、成果主義よりもむしろ年功序列を望む風潮についても聞きます。体感としては、あまり仕事に関してやりたいことや目的を持っていない人が増えているのかなとも思うんですが」
寺口「『安定』は手段で、目的は安心を得ることなんだと思います。安心を得たいという目的は多分ずっと変わっていなくて、そのための手段が時代によって変わっているわけです。絶対潰れない会社の中にいるのか、自分の市場価値を高めて食いっぱぐれないようにするのか。キャリアづくりの価値観が分かれてきたんでしょうね」
近年ではキャリア自律の概念が浸透し、世間では「個の時代」という言葉がブームになった。このブームについて、寺口氏はこう語る。
寺口「主語が『自分』になるのはとてもいいことだと思います。でも、ほとんどの人は目的語が『自分』になったなと感じていて。
つまり、『会社は自分に何をしてくれるんだろう』とか、『自分は自分のキャリアのために何をしなければいけないか』といったことを中心に考えているんです。僕は仕事の醍醐味って社会や顧客、チームへの貢献や他者からの感謝にあると思っているんですが、そういう人はそのベクトルが全部自分に向いていて、良いキャリアを積むことだけを目標にしている。
ポケモンで全部のキャラをレベル99にする遊びをしたとして、面白くないじゃないですか。本来はいろんなところに冒険して、ジムリーダーに勝ちたいからレベル上げをするはずなのに、手段が目的化してしまっている状態です。だから自己完結系の人って、なんだか面白くなさそうに仕事をしている印象がありますね」
「閉じた」採用を「ひらく」。ワンキャリア11年目の挑戦

こうした現状を変えるために、ワンキャリアは「人の数だけ、キャリアをつくる。」というミッションに忠実であり続けてきたと寺口氏は振り返る。
寺口「驚くぐらい、掲げているミッションに対して忠実な会社だなと思います。ミッションが変わらない限り、哲学は変わりません。外に発信していることと中でやっていることが違うのはすごくダサいとする社風なので、社内人事に関してもミッションに忠実に、正直にやり続けている感じがすごくしますね」
その思想を体現し、採用現場の現状を打破するための新たな取り組みが、2025年10月に初開催となる「採用ウルトラキャンプ」だ。
寺口「採用が遅れたのは、僕は『閉じていた』からだと思っています。だから、閉じていたものをひらきたいんです」
採用はこれまで「部内」「社外」「他領域」という3つの側面で閉じていたと寺口氏は整理する。
寺口「まず『部内に閉じている』ですが、これは採用チームだけで課題を抱え込んでいる状態です。最近では全社採用という言葉もよく聞きますが、採用担当がとにかく頑張るだけでは通用しない時代になっています。採用という仕事を社内にひらく必要があります。
『社外に閉じている』というのは、人事同士の知見が市場で循環しないという意味です。どのサービスがいいとか、どんなやり方をしているとか、そういう情報交換をする場が多職種よりも少ないと感じています。機密情報が多いからとか、人材という限りあるパイを取り合わないといけないからだと言われるんですが、それはマーケティングでもセールスでも同じはずなので、単なる言い訳だと僕は思っています。
最後に『他領域に閉じている』ですが、これは他領域の専門家から学ばないという課題ですね。『採用広報』『採用マーケ』など、『採用○○』と呼ばれる概念がいろいろと生まれているわけですが、じゃあ採用マーケの担当はマーケターから話を聞いたのかというとそうではない。社内に専門家がいるのに、です」

出典:株式会社ワンキャリア
水野「ここ十数年で正社員もアルバイトも求人媒体に出稿しているだけでは採用できなくなって、採用担当がやることってかなり増えていますよね。自分がその全部を分かっているわけではない、という状況の中でも、たしかにあまり相談できていないイメージがあります」
寺口「そうですね。あとは面接の場も閉じているなと思っていて。商談同行はあるのに、面接同行が十分にないのは何故なのか、疑問なんですよ。営業は同行やロープレ録画をして、フィードバックをもらって成長していきますが、多くの場合、面接は密室だから成長できないわけです。
それに、キャリア面談や面接って専門スキルのはずなのに、素人がひとりで担当していることがザラにあるじゃないですか。求職者の人生に関わる以上、その楽観視って危険じゃないかなと。総じてこの閉塞感・停滞感が、この10年の採用におけるキーワードになっていると思います」
「採用ウルトラキャンプ」は、これらの課題を解決するために「ひらく」ことを徹底的に意識したイベントとなっている。参加者同士が本音で対話できるコミュニティエリアを会場の中心に設計した。

寺口「キャンプと名付けたのは、人事の人たち同士で火を囲むように本音で対話してほしいからです。社外に日常業務を忘れて語り合える仲間ができるように、ずっと交流が生まれ続ける場所を目指しました。これが本イベントの主役ですね。
そして今回、お申込みいただいた方の中でも経営層の参加比率が非常に高いんです。これはつまり、経営レベルで『採用がやばい』という認識になってきているのかなと。採用担当者と経営者が一緒に来て本音で話すことで、『これは重点投資領域にしよう』と、人や予算を増やすきっかけになるかもしれない。採用を経営テーマに押し上げていく、つまり経営に採用をひらいていく効果も生まれています」
また、セッションのキャスティングにもこだわっている。他のカンファレンスで見かけるような定番の登壇者・テーマのみにすることは避け、人事系のカンファレンス初登場となる異分野の専門家も多く招いているという。
最後に、寺口氏は開催に向けてこう語った。
寺口「採用ウルトラキャンプが少しでも気になっている方は、ぜひ来てください。僕らは採用を変えたいと思っている人たちと共に、この閉塞感と停滞感を打破しようと思っています。採用が閉じていることで良いことは何もない。だから、とにかくひらく。そう信じている最初の1000人と一緒に、まずは京都からこの文化を作っていきたいです」
寺口氏は「採用ウルトラキャンプ」を、今年1回限りではなく、この先もずっと続けていけるものにしたいと意気込んだ。この10年で蓄積された課題を「ひらき」、つづく10年の採用の在り方を共に模索する場となれるのか、注目だ。
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