
新卒採用において、「意欲的な学生を採用したい」「主体的に行動できる学生に出会いたい」と考える採用担当者は少なくない。従来はインターンシップや採用イベントがその入口となっていたが、出会える学生層や人数には限りがあるのも事実だ。
その中で今、注目を集めているのが「学生コミュニティ」の存在だ。学生同士が価値観を共有し合い、仲間と切磋琢磨しながら活動する主体的なコミュニティは、採用企業にとっても新たな接点となりうる可能性を秘めている。
その代表例の一つが、株式会社ベースミーが運営するZ世代学生コミュニティ「BaseMe Ambassador Community(通称:BAC)」だ。先日行われたBAC2期生のキックオフイベントでは、学生たち自らが「キャリア」「働くこと」について語る姿が見られ、トークイベントでは鋭い質問が次々と飛び出し、ゲストスピーカーを圧倒する場面も。
学生が主体となり、「可能性」と「熱量」を生み出す同イベントに参加したレポートをお届けする。

学生が主体的にキャリアを描く。BaseMe Ambassador Communityとは
今、新卒採用の在り方は大きな転換点を迎えている。特定非営利活動法人キャリア解放区が行った「Z世代の就職活動に関する意識調査」によると約8割の学生が「就活に違和感を覚えている」と回答。新卒一括採用やリクルートスーツの着用、面接時のマナーといった従来型の仕組みに疑問を持つ学生も増えている。こうした変化に対して企業もアップデートが求められるが、同時に、「自分らしいキャリア」を描こうとする学生たちとの新しい出会い方を見つけられれば、採用の未来には大きなチャンスが広がっている。
そんな両者の思いが交わる場として注目されているのが、「学生コミュニティ」だ。2024年11月に始動した「BaseMe Ambassador Community(通称:BAC)」は、価値観を軸に学生と企業の出会いを支援するZ世代向けキャリアプラットフォーム「BaseMe」を展開する株式会社ベースミーが運営を行う、学生主体のコミュニティだ。
BACでは、BaseMeの認知拡大とともに、学生同士が「好き」や「価値観」を共有し、互いに学び合いながら成長することを目的としている。2期生はこの先約4カ月間をかけ、延べ1000人規模の「価値観キャリアフェス(仮)」を創り上げることを目標に、SNS発信、イベント企画・運営、コミュニティマネジメントなどに挑戦していく。

VC×CEOトークイベントで見られた、熱気あふれる質疑応答
2025年8月、学生たちが初めて顔を合わせるキックオフイベントが行われた。多様な背景を持つ仲間が全国、さらには海外からも約30名が終結。緊張と同時にコミュニティへの高揚感が感じられ、彼らの一歩がやがて大きなムーブメントへと広がっていく期待が込められていた。
イベントのメインコンテンツとして催されたのが、ベースミー代表取締役CEO・勝見仁泰氏と、日米を拠点に活動するベンチャーキャピタルWiLの笹川大和氏によるトークイベントだ。トークテーマは、「価値観でつながる学生コミュニティの可能性」。
冒頭、笹川氏はWiLがBaseMeに出資した経緯に触れた。
笹川氏「僕が勝見さんと出会ったのは、とあるピッチ会場でした。勝見さんのプレゼンを聞いて、とにかくその熱量に圧倒されたんです。サーモグラフィカメラで見たら、一人だけ真っ赤になっているというか(笑)」
緊張感のあった会場の雰囲気がほどけ、学生に笑顔が増えていった。
笹川氏「僕らが投資先を選ぶときは、市場や将来性、サービスの見込みを徹底的に調べます。でも最後はやっぱり、起業家本人がどれだけ情熱を持っているか。BaseMeというサービスの可能性はもちろん、勝見さんの情熱に圧倒されたんです」
続けて笹川氏は、自身のキャリア変遷を語りつつ、学生時代に築かれたネットワークが大きな支えになることを語った。
笹川氏「僕は学生時代、いろんな経験を積もうと世界各国の企業11社でインターンシップを行い、留学もしました。そのなかで、切磋琢磨できるたくさんの仲間たちに出会ったんです。今でも連絡を取り合い、大人になってから一緒に仕事をしたこともあります」

笹川氏「学生時代の利害関係のない仲間というのは、必ずみなさんの財産になります。一人では越えられない壁も、仲間と一緒なら乗り越えられる。BACは、価値観を軸にしたキャリアプラットフォーム『BaseMe』運営しているので、一人ひとり、自分の価値観を大切にしながら高め合っていけると思います」
その言葉を聞き、学生たちの空気が、ぐっと一体感を増していった。そこから話題は「採用プロセスの変革」へ移る。
笹川氏「日本の新卒採用はこれまで一括採用が当たり前でしたが、明らかに変わりつつありますよね。海外ではすでにビジネス特化型SNSがキャリア形成の主流になっており、日本も“学生が自分の価値観を軸に動く時代”に入っている。これはすごく面白い変化です」
これは採用企業にとっても示唆的だ。従来の「会社が選ぶ」採用から、「学生に選ばれる」採用へと転換する必要性を示している。企業としては、学生が価値観を共有する場に関与できるかどうか、そうした場に参加する意欲的な学生に自社の価値観を届けられるかが、今後の採用戦略にも直結するだろう。

トークイベント後の質疑応答では、学生から矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
「笹川さんは学生時代に海外留学をし、ベンチャーキャピタリストとしても経験を積んでいます。多様な価値観に触れてきたと思いますが、それでも変わらなかった笹川さんの価値観はありますか?」と問われると、少し照れ笑いを浮かべながら「家族に誇れる自分であること、ですかね(笑)」と答える。大きくうなずく学生の姿があちこちに見えた。
また、「信頼できる人って、どんな人だと思いますか?」という問いには、「正直、僕もまだまだ難しいのですが(笑)」と前置きしつつ、「でも、誠実さや一生懸命さって、結果が出ていなくても自然と滲み出るんです。ちゃんと見てくれる人は必ずいる。僕はそれを信じています」と返答。
学生たちは真剣に耳を傾け、ときに笑い、ときに深く頷きながら、会場全体に高揚感がみなぎった。
企業と学生、双方のリアルな声が交わる場
意欲的な学生たちと交流できるコミュニティとして、同イベントには丸井グループやパーソルキャリアといった企業も参加。参加企業と学生双方に感想を聞いた。
「我々丸井グループは、『すべての人の「しあわせ」をステークホルダーと共に創る』を企業理念に掲げています。今後、社会課題解決企業を目指す中で、社会課題への関心が高く、理念に共感してともに課題解決に取り組む意欲のある学生を採用することが人事部の使命です。
しかし就活市場では、小売業や信販業といった弊社への業界イメージが先行し、ミスマッチが生じることも。その点BaseMeは、学生の思いや『大切にしたい価値観』を軸に出会えるプラットフォームであり、我々の目指す企業のあり方とリンクした学生に出会えるのではと期待しています。まだまだ発展途上のサービスではありますが、今後の伸びしろが楽しみです」
「理系の学部って、就活は“ゼミや研究室のつながりで決まっていく”みたいな流れがあるんです。でもそれだと、自分のやりたいことや価値観が置き去りになりがちで…。そんなときにBaseMeと出会って、『就活ってもっと自分らしくあっていいんだ』と思えたんです。同じように違和感を抱えている仲間と一緒に、BACで新しい就活の形を作っていけるのが楽しみです!」
「地方の国公立大学って、大手で安定した地元企業に進む学生が多いし、それが褒められがちなんです。僕はそれに対して『その企業が本当に自分に合っているのか?』って違和感を抱いてました。
ただ地方に住んでると就活の情報も少ないし、同じ価値観を持った仲間に出会いにくいんです。僕自身は、都内の人材業界の企業に内定をいただき就活を終えたのですが、BACの活動を通して、就活にもっと選択肢があると気づける学生を増やしたいですね。その経験が、就職後も活かせたらと思います。その経験を今後の仕事にもつなげていきたいです」
「私はBaseMEで就活を終え、小売の大手企業に行くことを決めました!就活を始めたばかりのときは大手求人サイトを使い業界を絞っていたので、全く視野に入れてなかった業界なんです。
自己分析をするなかで、『目の前の人を喜ばせるのが好きだ』という価値観に気付いて、就活軸がガラッと変わりました。BaseMeがなかったら出会えなかった企業ですね。価値観を軸にした就活はまだスタンダードではありませんが、一人ひとりが後悔のない就活が当たり前になったらいいですよね」
改めて企業と学生の声を聞くと、両者に共通しているのは「価値観での接点」を求めていることだ。学生が自ら参画するコミュニティは、まさにその価値観マッチングを加速させる場になり得る。イベント後のアンケートでは、参加学生の満足度は10点満点中9.3点という高スコアをマーク。「就活はもっと自由で面白くできる」という手応えとともに、これからの活動への期待感があふれていた。

BAC、そしてBaseMeのこれからの展望
BACやコミュニティの価値について、ベースミー代表取締役CEO・勝見仁泰氏はこう語った。
勝見氏「いまAIやテクノロジーの進歩が目覚ましいですが、それらでは届けられないものがあります。それが、一人ひとりの思いや顔をつき合わせたリアルなコミュニケーションです。仲間と関わり合うことで学生は自分らしさを認識したり、時には相手とぶつかったり、ともに高め合う経験ができるはずです」

BACを通して認知拡大を目指す、Z世代向けキャリアプラットフォーム「BaseMe」の利用者は現在約3万人とまだ始まったばかりであることを認めつつ、企業と学生双方の信頼の積み重ねの結果、実際にマッチングが成立するといった成果につながっていると話す。
BACに集まる学生は、「BaseMe」の利用を通して自分の軸ややりたいことを持った主体的な層だと語る。価値観を軸に行動できる学生を集め、育てるコミュニティの存在は、採用側にとっても貴重な接点となりうるだろう。
勝見氏「学生が自分の価値観を確認し、仲間とともに挑戦できる場を提供すること。それは、単なる就活サポートではなく、将来の人材が主体的にキャリアを描く力を育むことにつながります」

まとめ
学生が主体的に学び合い、互いの価値観に触れながら活動するBACのキックオフイベント。ゲストとの対話や質疑応答を通じて、学生たちは自分の軸を再確認し、仲間とともに挑戦する場の価値を実感していた。
「BaseMe Ambassador Community」は、今後の新卒就活市場の変革の一歩目かもしれない。採用企業においても「何を大切にしているのか」「どこを目指していくのか」といった企業としての価値観を認識しておく必要性が求められるだろう。
(寄稿:株式会社ベースミー、構成:田邊なつほ)
