
エン株式会社の2026年3月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすく解説し、業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!
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目次
エンの2026年3月期通期の決算における売上高や純利益の増減率とその要因について、グラフィックで分かりやすくまとめました。

主力の「エン転職」をはじめとするメディア事業が減収となり、全体の業績を押し下げる形となっています。一方で、エージェント事業や海外事業は堅調に推移し、増収・増益を達成しました。
純利益の大幅な減少については、前期(2025年3月期)に株式会社タイミー株式の売却による投資有価証券売却益54.5億円を特別利益に計上していたのに対し、今期はそれに相当する特別利益の計上がなかったことが主な要因です。
エンの今期決算について、セグメント別の業績や業績予想を詳しくまとめました。エンは2026年3月期よりセグメント区分を変更しており、第2四半期からは「エン転職」「engage」など9つのセグメントに再編し、情報の透明性を高めています。
本記事では、決算短信での大きな括りである「メディア」「エージェント」「採用サービス その他」「教育・評価サービス」「海外」に沿って解説します。

メディア事業は、「エン転職」「engage」「ミドルの転職」「AMBI」「エン派遣」といった求人メディアを展開する主力セグメントです。
今期はエン転職において、前期までの投資抑制の影響を受けて減収が継続しました。一方で、営業強化により利用企業数は5,546社(前年同期比+1.3%)と増加に転じており、改善傾向が見られます。engageにおいては、期初より事業黒字化を目指した投資の適正化を図ったことで広告宣伝費は削減されたものの、売上高は大きく減少しました。
その結果、メディア事業全体の売上高は377.0億円(前年同期比-11.8%)、営業利益は68.7億円(同-25.3%)となりました。(決算短信, p.5)
エージェント事業は、グローバル人材紹介を展開する「エンワールド・ジャパン」と国内人材紹介の「エンエージェント」を展開するセグメントです。
今期はエンワールド・ジャパンにおいてコンサルタントの増員や営業生産性の改善が奏功し、増収を達成しました。エンエージェントにおいても高年収帯での決定件数が増加し、増収増益を実現しています。
その結果、エージェント事業の売上高は108.5億円(前年同期比+9.4%)、営業利益は16.2億円(同+23.4%)となりました。(決算短信, p.5/決算説明資料, p.21)
採用サービス その他事業は、派遣会社向けに採用管理システムを提供する「ゼクウ」や、リファレンスチェックサービスを展開する「back check」などを含むセグメントです。
今期はゼクウにおいて取引単価の向上が進んだほか、back checkの新規連結効果が加わり、大幅な増収増益となりました。back checkと既存のASHIATOとの統合により、リファレンスチェック市場での存在感を強めています。
その結果、売上高は25.3億円(前年同期比+41.1%)、営業利益は7.9億円(同+66.7%)となりました。(決算短信, p.5/決算説明資料, p.22)
教育・評価サービス事業は、タレントマネジメントシステムや適性テストを提供するセグメントです。
今期はタレントマネジメントシステムおよび定着・活躍支援ツールの利用が伸長し、増収となりました。一方で、事業拡大に向けた増員による人件費の増加により、営業利益は減少しています。
その結果、売上高は17.5億円(前年同期比+3.8%)、営業利益は4.5億円(同-11.9%)となりました。(決算短信, p.5/決算説明資料, p.23)
海外事業は、インドのIT人材派遣やベトナムの求人メディア・人材紹介を展開するセグメントです。
今期はベトナム国内での景気回復を背景に「vietnamworks」が国内シェア51%を維持しながら前年同期比営業利益+139%と大幅な伸びを見せました。また、インドのIT人材派遣においては米国事業が成長し、海外事業全体として堅調な業績となっています。
その結果、海外売上高は64.6億円(前年同期比+7.6%)、営業利益は12.6億円(同+99.0%)と、ほぼ倍増の増益を達成しました。(決算短信, p.5)

2027年3月期の通期業績計画は、売上高500.0億円(前期比-15.4%)、営業利益28.0億円(同-29.3%)、経常利益34.0億円(同-18.7%)、純利益54.6億円(同+108.9%)を予定しています。(決算短信, p.1)
売上高の大幅な減少は、2026年4月1日付でengage事業を株式会社カカクコムへ承継したことによる影響が大きく(前期engage売上高は約70億円)、それを除いた実質的な増減率は前期比3.9%減にとどまります。純利益が大幅な増益予想となっているのは、engage事業承継に伴う関係会社株式売却益44.4億円を特別利益として2027年3月期第1四半期に計上見込みであることが主因です。(決算短信, p.8・p.23)

メディア事業では選択と集中による再建が進む一方、人材紹介事業ではミドルの転職やAMBIが保有する約480万人の会員データベースを活用した成長戦略が進んでいます。現状の自社活用率は約15%に留まっていますが、成約売上ポテンシャルは220〜300億円規模と試算されており、既存アセットを活かしたさらなる拡大余地があることが示されました。
実際に、エンエージェントやエンワールド・ジャパンを中心にミドルクラスの紹介事業は成長を続けており、2024年3月期から2026年3月期までの2年間で、それぞれの売上高はエンエージェントが1.59倍、エンワールド・ジャパンが1.12倍となっています(決算説明資料, p.9)。

エンは構造改革の一環として、広告宣伝費と人件費の大幅な最適化を進めています。特に2026年4月に実施したengage事業の承継により、関連する広告宣伝費や人件費の圧縮が進み、2027年3月期には広告宣伝費が2025年3月期比で約3割、人件費も約2割削減される計画です。
また、従業員数もengage事業の承継を含めて大幅に減少する見込みです。削減したコストや経営資源は、エン転職や人材紹介事業などの主力領域へ再配分し、今後の成長投資につなげる方針を示しています。

エンはAIを活用した新たな成長戦略を描いており、その中核として合弁会社「エンPeopleX株式会社」を設立しました。(決算説明資料, p.13)
エンPeopleX社は、「エンの営業力」と「PeopleXの技術力」を掛け合わせたシナジーを狙い、OEMとして「AI面接・AI面談・AIロープレ」サービスの拡販を進めています。また、既存事業サービスとの連携や、エン独自のHR系データを活用した新商品の共同開発も計画しており、AI時代における中長期の「成長エンジン」と位置づけています。
2026年3月期通期決算を通じて、エンは構造改革を進めながら事業ポートフォリオの転換を加速させていることが改めて示されました。主力のメディア事業は「エン転職」や「engage」の減収により厳しい状況が続く一方で、エージェント事業や海外事業、採用サービスその他事業は堅調に成長しており、特に人材紹介領域が新たな収益の柱として存在感を高めています。
また、engage事業の承継を軸としたコスト構造改革に加え、約480万人の会員基盤を活用した人材紹介事業の拡大や、エンPeopleX社を中心としたAI領域への投資など、中長期の成長に向けた布石も進んでいます。収益基盤の再構築と新たな成長戦略がどのような成果につながるのか、今後の動向に注目が集まります。
HRog編集部では、構造改革後の業績回復や人材紹介事業・AI事業の成長可能性を含め、エンの取り組みを引き続き追っていきます。
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