新規獲得営業に必要なDXの考え方と実践手法【ウェビナーレポート・1月20日開催】

(右)登壇者:エッジテクノロジー株式会社
AIプロダクト事業部/エヴァンジェリスト
五十嵐 政貴 氏
いがらし・まさき/ベンチャー企業にて、人事全般を経験後、HRtech新規事業の企画・運営に携わる。現在は、人工知能関連人材のソリューション企業エッジテクノロジー株式会社にて、 自社サービスの営業支援AIツール「GeAIne」の販売、エヴァンジェリストを担当。 2019年法人営業デジタル化協会(通称=HED)を立ち上げ、代表理事を務める。

(左)登壇者:株式会社フロッグ
代表取締役 /HRog編集長
菊池 健生
きくち・たけお/2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、2017年ゴーリストへジョイン。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務め、2019年より取締役、2021年より株式会社フロッグ代表取締役に就任。

新型コロナウイルスの影響による経営不振を受け、業績回復の施策としてのDXの取り組みに注目が集まっています。一方で、DXという言葉はよく耳にするものの、実際には何から取り組んだら良いのか分からないために、DXに関する情報収集をしている企業も多いようです。

2021年1月20日に開催したHRog編集部主催ウェビナー「新規獲得営業に必要なDXの考え方と実践手法」では、エッジテクノロジー株式会社の五十嵐氏とHRog編集長の菊池が対談。営業DXに必要な考え方について話を聞きました。

DXとは「見える景色が変わること」

五十嵐「新型コロナウイルス感染拡大後から、DXという言葉をよく聞くようになりました。インターネット上でも、DX推進に関するアンケートを実施していて、約30%の企業がDXを推進しているという結果が出ています。一方で、推進していない約62%の企業からは、具体的に何をしたらいいのかわからない、何から手を付けていいのかわからないといった声が挙げられています。ウェビナーアンケートの結果でも、DXという言葉を社内で聞いたことのある方は約20%程度でした」

菊池「そもそもDXとは何かと調べても定義がたくさんあるので、DXの進め方が分からない方も多そうですね。実際にDXを進める際には、どのように考えると良いと思いますか?」

五十嵐「DXにおけるデジタル化とは、イモ虫のモスラをメカモスラにするイメージでしょうか。デジタル化とは、鋼鉄になったり、足が早くなったりするなど、いわゆる『ツールを使用することにより、強くなること』です。一方羽が生えて羽化するといった『変態すること』がトランスフォーメーションと考えると良いかもしれません。

つまり、DXとは成虫になって生息域と可動域まで変えるような変化のことです。イモ虫の状態のままメカになっても地上の目線でしか物事を見ることができませんが、成虫して羽が生えたら空中から俯瞰して物事を見ることができます。このように、見える景色を変化させられるかどうかがDXと単なるデジタル化の違いだと思います」

菊池「テクノロジーの力で成虫になることで、業務時間が圧縮され、効率化が実現するということですね。自社の業務自体が変革した結果が、お客さんにとっての良い変化にもつながるのかもしれませんね」

営業DXでは業務効率化とCXの向上をセットで考える

菊池「次に、現状の求人市場の動向からお伝えしたいと思います。正社員領域では新規求人は徐々に出ていますが、アルバイト・パート領域では、新型コロナの影響で営業が停止した企業や業界もあり、全体の求人が減っている状況です。人材業界の景気はここから停滞するのではないかと予測していますが、求人数も景気の回復次第ですね」

提供:エッジテクノロジー株式会社

五十嵐「回復したとしてもバブルが来るわけではないので、これから先、求人数が急増することも期待は薄いですね。このように市場の成長が見込まれない中でこそ、DXが効果を発揮すると思っています。

実務や作業において機械やテクノロジーを導入し効率化をおこなうことで、業務負担が削減できます。この効率化によって生まれた時間を顧客のことを考える時間に当てることで、カスタマーエクスペリエンス(以下CX)の改善をおこなうことが可能となります。CXを高めることで顧客生涯価値(以下LTV)が拡大し、顧客に成果が現れることで契約継続にもつながります。単なる業務効率化にとどまらず、このCX向上を通して売上を伸ばしていく取り組みまでを含めてDXと呼ぶべきでしょう。

今まで人材業界は新規アカウントを獲得することで売上を伸ばしていたケースが多かったですが、市場全体が伸び悩む今、今取引している顧客に長く選ばれ続けることが大事です。競合他社にマーケットを取られることなく、長く付き合える顧客との繋がりを築き、LTVを拡大していくことがこれからの戦い方ですね」

菊池「顧客体験を向上させることで結果的に売上が上がるんですね。どれだけ顧客に選ばれるか、そこで長い付き合いを構築できるかがDXを成果につなげるヒントとなりそうです」

適切な情報発信がDXへの第一歩

五十嵐「しかし、実際の現場では『ITツールがなく、DXができない』『上司にDXを提案しても通らない』などの声もあります。一個人が自分の業務をDXしたいとき、何から取り組むべきだと思いますか?」

菊池「まず、自分の業務がストックの業務なのか、それともフローの業務になってしまっているのかという点を振り返ってもらいたいと思っています。たとえばテレアポなどで新規開拓している方の場合、架電した後に電話で話した情報やネクストアクションを決めて書き残した場合、それは情報がストックされているのでストックの業務になります。

でも多くの方が、情報をストックせずに架電し続けてしまっているケースが多いですよね。
情報をストックしていくとリストの精度が上がっていくので、アポが取りやすくなるなどどんどん自分の仕事が効率化されます。一方でテレアポ時の情報を残さない、すなわちテレアポをフローの業務としてとらえてしまうと、電話をかけ続けないと売上を上げられなくなってしまいます」

五十嵐「このように、フロー業務をなるべく減らしてストックする営業手法を取り入れていけると良いですね」

菊池「また、営業手法そのものを見直すのも一つの手です。例えば、今までテレアポに使っていた時間の一部をnoteやブログ、SNSでの発信に使うようにするなどです。テレアポで話した内容をnoteやブログで発信したり、個人でTwitterアカウントを開設して、フォロワー数を増やすといった業務に置き換える。そうすることでインバウンドでのお問合せもいただけるようになります。webのコンテンツはいうなれば、一度書いてしまえば年中働いてくれる営業マンのようなものです」

五十嵐「新規営業をしなくても良い体制を構築するには、インバウンドマーケティングに力を割く必要がありそうですね。新型コロナの影響によって家にいる時間が多くなった現在、インターネットに接触する回数も増加しています。顧客が自分に有益な情報を検索する中、サイトをどれだけ見てもらえるかが、これからの時代の営業手法の鍵だと思います。会社で一斉にテレアポを行うよりも、個人のアカウントを活用し、どれだけ営業に繋げられるかが重要ですね」

菊池「その手法は最近のトレンドにもなっていますね。具体例を挙げると、キャリアアドバイザーの方が実情をTwitterでツイートしたところ、それを見た顧客から会社ではなく、その方個人に相談が行くようになったこともあります。人材紹介においても、個人の発信が重要になっていると感じました」

営業DXとは、俯瞰できる目線を持ちCXを高めること

菊池「改めてDXを定義すると、入り口はやはり『データをためること』だと思います。データを駆使することで空き時間が生まれ、求人広告業界で言うと、顧客の採用を成功させることができます。テクノロジー活用としては高度でないかもしれませんが、顧客体験が上がることで敏腕営業マンが生まれると考えます。また、自分にどんな強みがあるか知ること、新しいことにチャレンジすることが必要なことになってくるのではないでしょうか」

五十嵐「先ほどのフローとストックに当てはめると、ストックするべき情報をスプレッドシートやExcelに残しておくことが、DXの入り口になるということですね。

僕のDXの定義でいうと、地上戦から空中戦へ、上から俯瞰し景色を変えていくことです。その中で、今のトレンドや発信すべき場所が分かるようになると思います。地上戦でモスラをメカにするよりも、羽化してトランスフォーメーションをしてほしいですね。

現場の営業からすると、DXと言われても自分たちに何のメリットあるのかなど疑問に感じることもあると思いますが、一番は顧客が喜ぶという点が大切だと思うんです。DXをCXに言い換えて顧客体験を高めると、LTVが長くなり営業としてのやりがいも高まります。それが私が見せたかった景色です」

菊池「現在の状況を俯瞰することで、見える景色全体を変えていくことが営業DXを行う鍵となりそうですね」