システム開発の見積もりで見るべきポイント。根拠となる内訳や項目の中身は?

「見積もり」は、システム開発の外注先を比較する際に重要な、判断材料の一つです。しかし、見積書の内容が煩雑で、正しい見方や妥当性の判断に悩む担当者もいるのではないでしょうか。今回はシステム開発の見積もりの根拠となる内訳内容や、見るべきポイントをわかりやすく解説します。

システム開発における見積書とは?

契約前に必ずと言っていいほど目にする「見積書」。システム開発の見積書には、どのような特徴があるのでしょうか。

システム開発の見積もりは「煩雑」

そもそも見積書とは、取引内容に応じた費用や工数、期間等を提示するための種類を指します。

ビジネスの世界では契約前に見積もりの内容を確認して、発注先を選ぶのが一般的であり、それは、システム開発の外注を検討する場合にも当てはまるでしょう。

ただし、システム開発に関する見積もりの場合、「項目」や「算出方法」が開発会社によって異なるため、非常に複雑化しやすいという特徴があります。システム開発の外注先選びで成功するためには、見積もりをチェックするための「基本的な知識」を持ち合わせておくことが大切となるでしょう。

同じシステム開発でも外注先によって「見積もり金額」は異なる

複数の会社から見積もりをとって検討する「相見積もり」。システム開発の外注先を検討する場合も、相見積もりが行われるケースは多々あります。

相見積もりをする場合、複数の見積書を比較することになりますが、同じ内容のシステム開発であっても、開発会社によって見積もり金額は異なるケースがほとんどという点を理解しておきましょう。

システム開発にかかる「人件費単価」や「作業工程」は開発会社によって異なるため、算出される見積もり金額に差が生じるのは当然のことなのです。

システム開発の見積もりで使われる計算手法

システム開発の見積もりを算出するための、代表的な計算手法は3通りあります。ここでは、それぞれの算出方法の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。

計算手法1:類推見積(トップダウン)

類推見積(トップダウン)は、過去の類似事例を参考に、コストや工数といった数値からシステム開発の見積もりを算出する手法です。

類推見積のメリットとして、予想工数や費用に大きな差が出にくく、正確性に優れている点が挙げられます。ただし、過去に同様のシステム開発をおこなった実績がない場合は使用できません。

計算手法2:係数モデル(パラメトリック見積)

係数モデル(パラメトリック見積)は特定の数学的「モデル」を利用し、システム開発に必要な各作業を「点数化」して見積もりを算出する手法です。

機械的な算出方法であるため、見積もり担当者の知識や経験に依存しない点がメリット。「使用するモデル」や「入力する数値」の信頼性が高さが、計算の重要な要素となります。

一方、係数モデルのデメリットとして、サンプル数が少ない場合は、見積もりの精度が下がってしまうことが挙げられます。点数だけで評価できない項目においては、適正な見積もりができない場合もあることも把握しておきましょう。

代表的な数学的モデルの一例

・ファンクションポイント法
・COCOMOモデル、COCOMOⅡデモル
・Putnamモデル など

計算手法3:ボトムアップ(工数積上げ)

ボトムアップ(工数積上げ)は、できあがったシステムを仮定して、そこから工数を積み上げていく見積もり手法です。1つひとつの工数から見積もり額を算出するため、作業工程の抜け漏れが発生しにくいというメリットがあります。

ボトムアップは、工数が適切に細分化できるケースにおいて、最も信頼性の高い見積もり方法といえるでしょう。

システム開発の見積もりに必要な前提条件

見積もりをする際には、システム開発会社と発注者の間で、どのような仕様や制約事項をもとに見積もりを行なうのか「前提条件」の認識を揃えておくことが重要です。

前提条件のすり合わせが不十分で曖昧な部分があると、後々トラブルが起きる原因になってしまいます。開発作業が進むにつれて「想定していたものと違った」といった議論にならないためにも、受注側だけでなく、発注側もしっかりと前提条件を認識しプロジェクトを開始することが大切でしょう。

具体的に決めておくべき主な前提条件は次の10個です。

1.見積もりの対象範囲
依頼するシステム開発の対象はどの範囲なのかを明確にする。

2.対象外範囲
見積もりの対象外範囲を明確にする。「やらないこと」も明確に伝える。

3.使用する技術
開発言語、フレームワーク、クラウド、サーバーなどを指定する。

4.開発手法
開発プロセスに使用する手法を決定し、どのような進め方をするのかをも明記する。

5.プロジェクト期間
プロジェクト開始と終了の期間を、UAT(受入テスト)の期間も含めた日程で指定する。スケジュールが遅延した際の取り決めについての認識も一致させておく。

6.要件
要件定義も含めて想定できる範囲の機能に対し現段階で考えている前提を示す。前提として示した機能にこだわらず、開発企業の提案する最適なプランを検討することも大切。

7.運営方法
プロジェクトを運営していく上で、進捗管理や推進は誰が行うのかなど役割分担を明確にする。

8.開発・ネットワーク環境
開発環境やネットワーク環境をどのように活用していくのかを指定する。

9.実施するテスト
どのようなテストが必要か、作成するテストパターンの数などを指定する。OS、ブラウザ、端末など動作環境のバージョンも明確に記載する。

10.納品する成果物
納品する成果物とその粒度についても前提を決めておく。内容をイメージできるレベルまで明確にしておく。

システム開発における開発手法について詳しく知りたい方はこちら

見積もりの根拠となる費用項目の内訳

つづいて、システム開発の見積書には実際にどのような内訳が書かれているのか、主な項目を紹介します。項目の内容がわかれば、「何にどれくらいかかっているのか」という全体像が見えてくるでしょう。

システム開発の見積もり項目一覧

システム開発における主な見積もりの対象は、以下の項目となります。

要件定義費用

要件定義費用とは、システム開発の仕様や方針を定めるための費用です。「どのようなシステムを導入したいのか」を明確にし、そのシステムの仕様などを検討して文書にまとめます。

設計費用

 設計費用とは、各種設計業務にかかる費用です。ベースとなる基本設計から、サーバーをはじめとするインフラ整備、専門言語の検討などが含まれます。

UIデザイン費用

UIデザイン費用とは、UI(ユーザーインターフェース)つまり、利用者側から見えるシステム画面などのデザインを検討するための費用です。テンプレートではなく、UIデザインをカスタマイズしたい場合に必要です。

開発費用

開発費用は、システム開発にかかる費用のメインとなります。システム構築に携わるプログラマやシステムエンジニアの「人件費」及び「技術費」全般を指します。

テスト費用

テスト費用とは、開発したシステムが正常に稼働するかどうかをテストするための費用です。開発の途中でもテストが必要な場合がほとんどで、その種類も多様です。

導入費用

導入費用とは、完成したシステムを導入する際に必要な「初期設定」にかかる費用です。

導入支援費用

導入支援費用とは、開発会社がシステムの操作マニュアルを作成したり、操作方法の説明会を開催したりする際にかかる費用を指します。システムをスムーズに導入するために必要不可欠な費用です。

購入費用

購入費用とは、ソフトウェアやサーバーの導入などシステムを運用するにあたって必要な機材を購入するための費用です。

交通費用

交際費用とは、開発会社との打ち合わせの際にかかる「旅費」や「交通費用」です。遠方の開発会社に依頼している場合、宿泊費なども含まれます。

保守費用

保守費用とは、完成したシステムのメンテナンスや不具合の修正などアフターケアに必要となる費用です。直接的な修繕費だけではなく、操作方法がわからない場合の問い合わせ対応なども含まれます。

見積もり金額のほとんどは「人件費」

見積もり項目について見方を変えると、見積もり額の大半を占めるのが「人件費」です。打ち合わせやドキュメント作成にかかる時間などであり、依頼側からすると「費用」として分かりにくい部分かもしれません。

しかしながら、人件費は「システム開発費」の大部分を占めるものであり、人件費について十分理解・納得した上で外注先を決めることが重要でしょう。

最初に「システム開発を外注する場合は、相見積もりをとるケースが多い」と述べましたが、その理由の1つに、「人件費」という分かりにくい金額を比較し妥当性を検証するという目的があることも覚えておきたいですね。

HRog編集長菊池

システム開発を外注するとき、多くの方は「開発金額」というコストに注目しながらシステム開発のパートナーを選定されるかと思います。しかし、見えないコストである「コミュニケーションコスト」も、パートナー選びでは重要な要素となります。
特に人材業界の企業様がITの知見がない状態からシステム開発を行う場合、IT技術はもちろん人材ビジネスの運用レベルまで話が通じるパートナーを選定すると、「思っていたシステムと異なるものが出来上がってきてしまった」などといったトラブルを回避できます。
人材サービスでのサービス開発をお考えの場合は、HRogソリューションのサービスページよりお気軽にご相談ください。

見積もりをチェックするときのポイント

システム開発の見積もりを確認するときには、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。ここからは、見積書をチェックするときのポイントを説明します。

数字の根拠が明確か

見積書の各項目における金額の根拠が明確に記載されていることを確認しましょう。たとえば「〇〇一式」と記載されていて詳細がわからないケースが考えれます。そういった場合には、金額の妥当性を検証するためにも、項目の詳細を開発会社に確認する必要があるでしょう。

前提条件を満たしているか

前述した「システム開発の見積もりに必要な前提条件」の項目がしっかりと満たされているかを確認することも重要です。この段階で前提条件のすり合わせが不十分だと、開発が進むにつれて認識のズレが発生するリスクが高まります。契約後にトラブルが起きないよう、前提条件をしっかりと可視化してもらいましょう。

リスクに対する見積もりが含まれているか 

見積もりの中に、システム開発で起こり得るリスクに対する費用が含まれているかどうかも確認したいポイントです。開発段階で「修正箇所」が出てくることはよくある話。リスクを想定し、万が一にも備えることが重要です。

人材業界のシステム開発ならHRogにぜひ見積もり依頼を!

人材業界におけるシステム開発を検討している担当者もいるのではないでしょうか。

HRogソリューションは人材業界のあらゆる課題に向き合い、さまざまなサポートを行っています。人材業界のシステム開発でお悩みの方は、ぜひ一度、HRogソリューションにご相談ください。

<HRogソリューションのおすすめポイント>

●人材業界に特化したサービスを10年以上提供しており、業界動向や業務内容を十分理解しています

●クローリングやビッグデータの扱いに対する豊富な知見があり、独自に保有する100媒体以上から取得した求人情報とのシステム連携も可能です

●デザイン・開発がすべて内製であるため、幅広い要望に応えられます

システム開発は見積もり内訳を見極めて発注しよう

システム開発の見積もりは、開発会社によって金額に大きな違いがあることが多く、金額の妥当性や根拠を知って外注先を選ぶことが大切です。システム開発の外注で成功を収めるためにも、チェックすべきポイントを認識し、見積書の内容をしっかりと見極めて発注しましょう。