
近年、1日単位でアルバイトができるスポットワークが新しい働き方として注目を集めています。しかし、スポットワーカーが実際にどのようにアプリを使って勤務しているのか知らない方も多いのではないでしょうか? 今回は、HRog編集部がスポットのバイトアプリ「スポットバイトル」を使って実際に働いてみた際のレポートをお届けします!
スポットバイトルはディップ株式会社が提供するスポットのバイトサービスです。2024年10月にサービスを開始しました。
スポットバイトルの最大の特徴は、働いて勤務先から「Good」の評価を受けると、給与に10%相当が上乗せされる「Good Job ボーナス」制度が用意されてることです。さらに、企業都合によるキャンセル時には給与が100%保証される仕組みもあり、ワーカーは給与面で安心して働くことができます。

今回はコメダ珈琲渋谷宮益坂上店の協力のもとカフェで働きます。求人検索画面では、初心者マークとともに「未経験OK」のタグが付いており、「お冷提供とテーブル片付け、清掃のみ」とタイトルで業務内容も明文化されているため不安なく応募できそうです。
また、検索画面で「Good Jobボーナス」のボーナス額も分かります。今回は5,815円(時給1,163円)の求人ですが、Good評価を貰うことができれば給与は6,396円(+581円)となります!

応募に進むと、「持ち物・働くための条件を確認」のページに遷移します。チェックボックスがあるので必要事項の確認漏れを防げ、ワーカー・採用店舗双方が認識違いや当日のトラブルといったリスクを未然に防ぐことができます。

勤務当日になり、コメダ珈琲宮益坂上店に無事到着しました。バックヤードに貼られている勤怠用のQRコードを読み取り、勤怠確認を済ませます。

そのままコメダ珈琲の制服にも着替え、準備は完了。働いてみたレポート、本番開始です!

店長の菊地さんから、まずは洗い場での業務について教えてもらいました。シルバー類などの小物は専用のボックスに入れ、食器類は予洗いをしてから洗浄機に入れていきます。
教えていただいた手順をもとに、早速洗い物を開始。忙しいタイミングでは洗い物を置くスペースがいっぱいになることもあるため、スピーディーにやっていくことが重要になります。

筆者は居酒屋バイトを経験していたこともあり、実は洗い物業務は得意です。一通り洗い終わったので、次はバッシング(お客様が帰った後のテーブルの片づけ)を行っていきます。コップや食器類をトレンチ(お盆)に載せつつ、テーブルを拭いてドレッシングを配置。
渋谷宮益坂上店ではメニューなどの配置に細かい決まりがないため、飲食経験者でも新たに覚えることが少なく、スムーズに作業を行うことができました。

続いて、中間バッシング業務も行います。中間バッシングとは、まだお客様がいるテーブルから飲み終わったコップなどを下げる業務です。お客様への声掛けなどのポイントをアルバイトの渡辺さんから教えていただきつつ、実際の流れも見せてもらいました。

早速筆者も中間バッシングに挑戦します。居酒屋アルバイトを経験したことがあるとはいえ、お客様と直接関わる業務なので緊張しましたが、渡辺さんに見守っていただき無事終えることができました!

一通りの業務を終えたあと、丁寧に業務について教えていただいた渡辺さんにツーショットをお願いしました。実は渡辺さんは、スポットバイトルで働いたことをきっかけに現在は長期アルバイトとして働いているとのこと。
そして、渡辺さんがコメダ珈琲渋谷宮益坂上店で働いたきっかけは、ディップが提供するアルバイトアプリ「バイトル」の求人上で「しごと体験」という項目があったからだといいます。

画像の通り、バイトルの求人では「この会社のお仕事をスポットで働いてみませんか?」という項目が用意されています。実際に筆者がバイトルの求人をいくつかチェックしてみると、他にも「この求人は職場見学ができます」「この求人はしごと体験ができます」という項目が用意されている求人もありました。
バイトルからスポットバイトルへの導線がアプリ上にあるため、求職者は長期アルバイトに申し込む前に、スポットワークで職場の雰囲気や相性を確かめることができるのです。
そして、渡辺さんが渋谷宮益坂上店で働きつづけようと思ったきっかけは、「良い人ばかりで働きやすい職場だったから」。では実際に、渋谷宮益坂上店ではどのような職場づくりがなされているのでしょうか。店長の菊地さんにお話を伺いました。
店長の菊地さんは、昨年に他店舗から渋谷宮益坂上店へと赴任してきました。赴任直後、同店舗のシフトは厳しい状況にあったと言います。
菊地さん「約50名のスタッフが在籍していたものの、稼働率は40%程度でシフトが埋まらず、社員が残業してカバーしなければならない状況でした。
特に14時~17時あたりの時間帯の人手が足りていなかったんです。主婦で働いている方はお昼過ぎに退勤するパターンが多いのですが、そこから学生が放課後に出勤してくるまでの時間にどうしても人手が薄くなってしまうんですね」
そこから、最初はスポットバイトルではなく他社のスポットワークサービスを利用していたといいます。しかし、マニュアルを見ても使い方や業務の切り出し方がよく分からず、あまり活用が進んでいませんでした。
菊地さん「そのため以前から取引のあったバイトルを利用し、2週間で長期就業を希望する6名の採用ができました。しかしそれだけ採用できても全体の稼働率はなかなか上がらず、欲しい時間帯に人が足りないという問題は改善できませんでした。
しかも、そのタイミングで2階の洗浄機が壊れてしまい、洗い物をすべて2階から1階に下ろす必要が出てきました。そのため、誰かひとりを専属で洗い場担当にしないと営業が回らなくなってしまったんです」
そんな中、昨年10月にスポットバイトルのサービス提供が開始されました。菊地さんはディップの営業担当から提案を受け、同サービスを使い始めました。その方はただシステムやマニュアル面のサポートをするだけではなく、「稼働率の安定」や「社員が無理をしない職場づくり」といった店舗を運営していくうえでの目標について、しっかり理解したうえでサポートしてくれたといいます。
菊地さん「そこまで店舗に寄り添った提案をしてくれる営業担当はなかなかいませんでした。その方のサポートのもとスポットバイトルを導入したところ、これまでアルバイト媒体で募集を掛けてもなかなか埋まらなかった時間帯が、早くて1時間以内、遅くても募集を掛けたその日のうちには埋まるようになりました。アプリの使い方や業務の切り出しについても丁寧にフォローしてくださったのでスムーズに活用を進めることができました。
そのおかげで現在はシフトも安定し、従業員の皆が安心して働いていくための体制の土台は整いつつあります。ゴールデンウィーク明けには、稼働率なども当初掲げていた目標に到達できる見込みです」
しかし、菊地さんは「スポットワーカーを採用したからといって、すぐに稼働率が上がるわけではない」と話します。稼働率とは、店舗に所属するスタッフがどれだけ安定してシフトに入ってくれるかを示す指標です。つまり、スポットワーカーが何人来ても、長期スタッフのシフト参加率が低ければ、経験が求められる業務には対応しきれないという課題が残るのです。
菊地さん「本当の意味で稼働率が高まったといえるのは、スポットで入った人が長期アルバイトとして定着し、結果的にシフトの安定性が増すときだと思っています。
そのために何よりも重要なのは、スポットワーカーの皆様に『この職場でもう一度働きたい』と思ってもらうことです。未経験の方でも安心して働いてもらえるよう、洗い場や片付けなどシンプルな業務だけを任せつつ、楽しい雰囲気づくりも重視しています。学生が8割を占める店舗なので、サークルの延長のように楽しく働ける雰囲気を大切にしているんです。出勤して不安がなく楽しいかどうか、それだけをシンプルに考えています」

菊地さん「また、基本はGoodと評価しています。当店を選んで働きに来てくれたこと自体にも感謝していますし、そもそも働きへの評価が必要になるような業務を担当してもらうことがないからです。スポットワーカーの方でも働きやすい職場づくりとは、誰が担当してもGood評価になるよう、適切に業務を切り出していることだと考えています」
このような職場づくりにより、現在スポットバイトル経由で4名の方が長期アルバイトとして働いていると言います。さらに、そうした方々がスポットワーカーに職場の魅力を伝えることで新たな採用に繋がるケースもあります。
菊地さん「一度スポットで入った方が、現場の雰囲気や働きやすさを実感して継続的に働くようになり、さらにその方が次のスポットワーカーに『この店舗いいよ』と声をかけてくれる。そうした理想的な循環も生まれつつあるんです」
菊地さんは飲食店の経営において、本来スポットワークサービスを使わなくても店舗が回る状態が理想的だと言います。
菊地さん「スポットワークサービスを使うということは、裏を返せば稼働率が悪いとか、スタッフがすぐ辞めてしまうとか、働きやすい職場づくりにおいて何かしらの問題を抱えている状態だと考えています。真に働きやすく、楽しい職場づくりが進んでいけば所属スタッフだけでも店舗を回していけるはずです。
飲食業界では人手不足が叫ばれていますが、スポットワークで求人を出せば10分で枠が埋まる時代で、働きたい人は確実にいるといえます。人材不足を嘆くのではなく、どうやって人が集まって定着してくれる職場環境を作るか。それを考え続けることが、これからの飲食店に求められていることだと思います。
もちろん、病欠など急なシフト不足への対応や、長期雇用のための入り口として、スポットワークはとても魅力的なサービスです。当店では、たとえば進学前の時間を活用して働きたい学生が多い3月には、スポットバイトルだけでなくバイトルでも『しごと体験可能』の求人を出すといった形で活用しています。今後も積極的にスポットワークサービスを活用していきたいですね」
最後に、菊地さんは飲食業界全体への思いを語ってくれました。
菊地さん「まだまだ飲食業界はブラックなイメージが根強いですが、労働時間など人が集まれば改善できる部分は多いです。私の店舗がそのモデルケースになり、他の店長たちの負担を減らせるような仕組みを作りたいです。
スポットワークサービスはコメダグループ全体で導入されているものの、現場での活用は店長ごとの判断に任されています。店長会議では『使い方が分からない』という声はよく上がるので、まずは渋谷宮益坂上店で培ったノウハウを他店舗へと広げることで、『また働きたいと思える職場』を増やしていきたいと思います」
今回はスポットバイトルで働いてみたレポートをお届けしました。
特に印象的だったのは、店長の菊地さんが語っていた「Good評価を全員に押すのは当たり前」という姿勢。評価を前提としない業務設計や、スポットワーカーでも安心して働ける雰囲気づくりが、長期的な人材定着や稼働率の安定につながっていると実感しました。

さらに、バイトルは「まずはスポットで試してみたい」という求職者の心理に寄り添った設計がなされており、スポットバイトルへの導線も非常にスムーズ。実際に働いて職場の雰囲気や業務内容を確かめられるため、採用店舗にとってもミスマッチを減らせる魅力的なシステムです。
スポットワークは柔軟な働き方を支えるだけでなく、長く働きたくなる職場との「出会いの場」としても活用されています。バイトルとスポットバイトルのこうしたサービス設計が、今後飲食業界だけでなく、人手不足で悩むすべての業界にとって重要なものとなっていくかもしれません。