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求人情報は「探す」から「提案される」時代へ。イーアイデムが縦型動画で切り拓く採用マッチングの新境地

株式会社アイデム
取締役 イーアイデム編集長
椛山 哲 氏
かばやま・てつ/広告代理店や編集プロダクションにて企業ホームページ、Web広告、新聞広告、冊子、求人広告等あらゆる媒体の広告企画・制作・進行に従事したのち2021年に株式会社アイデム入社。2024年にマーケティング本部を立ち上げ、商品と広告領域の改善、営業部門との連携強化に取り組んでいる。

 求職者の情報収集の主流がスマートフォンへと移行する中で、求人広告にも「より直感的で伝わりやすい表現」が求められている。そうした中、各求人サイトや採用サービスでは、企業や職場の魅力をダイレクトに伝える 「縦型採用動画」 の取り組みが広がりつつある。

 アルバイト領域では バイトル が動画付き求人を標準的に展開し、職場の雰囲気や業務の様子を「短尺動画」で直感的に伝える仕組みを強化。イーアイデム でも縦型ショート動画を求人原稿に連動させられるサービスが始まり、従来のテキスト中心の訴求にリアルな視覚情報が加わった。さらに、moovyJOBTV、Guidable Jobs, ジョブトリップ といった新興サービスは、最初から縦型ショート動画を前提にした求人・企業紹介を展開し、SNS世代に合わせた「動画で仕事を知る」体験を提供している。

 本記事では、自社メディアに縦型求人動画を取り入れている株式会社アイデムに取材を行い、求人メディアが担う 「求職者体験の再設計」という視点から、これからの採用情報のあり方を探る。

競合サービスの登場で見えた「求人情報の質」による差別化の道

 アイデムが縦型求人動画の導入を決めた背景には、複数の求人サイトの情報を統合・閲覧できる「アグリゲート型サイト」の登場があった。

「数年前、アグリゲート型サイトが登場したことで、求職者の『しごと探し』のあり方は大きく変化しました。求人情報の量という点では、一求人メディアがアグリゲート型サイトには敵いません。その中でどう差別化していくかが最大の課題でした」

 そこでアイデムが着目したのは「求人情報の質」だった。「応募」という求職者行動の先にある「採用マッチング」や「定着」といった成果を左右するのは、求人の量ではなくマッチングの精度だ。そして働き方や職場の雰囲気を簡単に伝えられる求人動画は、「求人情報の質」を高め、マッチング精度を大きく高めるポテンシャルを秘めていると考えたのだ。

 さらに、スポットバイトサービスの台頭も、求人動画導入の要因の一つだったと語る。

「マッチングの手軽さや柔軟な働き方を売りにするスポットバイトが広がったものの、一方で『自分と相性のよい一つの職場で長く働く』という働き方を求めている人もまだまだいるはず。それならば、私たちはマッチング精度につながる『求人情報の質』を高めることにこだわろうと思ったんです」

「仕事のスピード感」「職場の雰囲気」は動画だからこそ伝わる

 イーアイデムでは求人サイト内のUI/UXについて、「SNSライク、かつ動画ファースト」のサイト設計にこだわっている。

「エリア・フリーワードなど検索機能のすぐ下に、求人動画の新着一覧を置いて、ファーストビューで必ずサムネイルが目に入るようにしています。そこから動画のサムネイルをタップすると、フルスクリーンで動画が再生され、ワンタップで『求人キープ』『求人詳細ページに遷移』ができる動線を構築しています。また、スワイプすると次の求人動画に遷移できるよう設計しています」

 このUI/UXを採用した背景には、「動画を起点にした仕事探し」という新しい体験を求職者に提供したいという同社の狙いがある。

 従来の求人サイトでも動画機能を持つものはあったが、多くは求人の「補足情報」として、求人詳細ページに埋め込まれているケースが多かった。しかし、イーアイデムが目指したのは、「先に動画を見て求職者と企業が出会う」求職者体験だ。

「意識してたのはSNSの縦型ショート動画です。今やショート動画の設計はどのSNSでも標準化しており、老若男女問わずその操作感に慣れています。仕事を探す時も同じような操作感で様々な求人のリアルな業務内容をはじめ、職場や働いている人の雰囲気をつかんでいただきたい。そんな新しい仕事探しの方法を提示出来ればと思っています」

 求人動画の制作でアイデムが最も重視するのは、「職場のリアルと雰囲気を伝える」こと。この言葉は、社内の合言葉として定着しているという。

「具体的には、『業務のスピード感』や『働いている方の人柄』は動画の方がダイレクトに伝わると思っています。たとえば梱包作業をする求人なら、実際働いている人がどれくらいのスピードや動きで梱包しているか。そういった情報はやはり文字だけでは伝わらないので、動画にすることでリアルが伝わると思っています」

 動画撮影の現場では、企業側が気づいていないリアルな魅力を営業担当者が引き出し、撮影に取り入れるケースも多いという。

「たとえば、スタッフさんにとっては『いつもの社食』だけど、実はすごくおいしくて魅力的だったりする。あるいは、スタッフさんが意見を伝えられるご意見箱が設置してある。店長、採用担当、教育担当などの方がとても人当たりが柔らかい等。そうした『わざわざ求人情報には書かない魅力』も、動画だとさらっと伝えられるので、積極的に撮りましょうと提案しています」

 また、撮影そのものが職場に新しい活気をもたらすこともある。撮影者が現場に入ることで、自然にスタッフが集まり、和気あいあいとした雰囲気が生まれやすくなるのだ。

「そうした場面を動画にすると、『アットホーム』という言葉を使わなくてもその魅力を伝えられるんです」

 縦型動画の導入以降、企業からは「動画を見て応募した求職者の定着率が向上した」「これまで応募が来なかった求人に複数応募が入った」などといった声が届いているという。

「動画を見て応募・入社された方が、入社後に職場で『この場所動画で見ました』と言ってくださったというエピソードも聞いています」

「探す」から「提案される」求職者体験へ

 これまでの求人サイトはプル型、すなわちユーザーに検索してもらう前提で設計されていた。しかし「これからはプッシュ型、こちらからその人に合った求人を提案していく体験を目指す」と椛山氏は言う。

「縦型動画機能は、この理想に近い体験を提供できているのではないかと思います。動画であればスワイプするだけで次々と職場の情報が入ってくる。その中には、これまで自分から見ようとしなかった職場の情報も混ざってくるかもしれません。そうした『偶然の出会い』は、新たなマッチングを生むような気がしているんです」

 椛山氏はさらに「動画によるプッシュ型の情報提供は、求職者の先入観を変える力を秘めている」と話す。名前だけで一方的なネガティブイメージを持たれている職種でも、実際の職場の様子を動画で見せることで、イメージが大きく変わる可能性があるからだ。

「たとえば清掃や警備といった職種の求人を、一方的なイメージだけで敬遠していたけれど、実際に動画見て『すごく和やかそうな職場だな』と思ってもらえるかもしれない。動画での出会いがそうしたきっかけになるはずと思っています」

 求人件数の量を武器にマッチング数を増やすアグリゲート型サイトや、より手軽なマッチングを増やす方向で成長したスポットバイトサービス。仕事探しのあり方が多様化する中で、今後の求人媒体の役割はどう変化していくべきなのだろうか。

「求職者の方が『アグリゲート型サイト』『スポットバイト』『求人媒体』を使い分けて、今の自分によりマッチする仕事探しの方法を選ぶ時代がすでにやってきています。その中で『求人媒体』が提供できる求職者体験はどんなものかを考えていくべきです。私たちイーアイデムが求職者に届けられるものは、動画を含めた『マッチング精度の高さ』だと考えています」

 動画が提供するのは「いわば職場の疑似体験に近いものだ」と椛山氏は語る。職場のリアルを伝えることで、求職者がそこで働くイメージを詳細に描けるからだ。

「SNSのようにスワイプする中で興味を持ってもらう『きっかけ作り』としても、ここなら安心して自分も働けそうと感じてもらう『最後の一押し』としても、動画はとても有効です。今後も動画だけにとどまらず、『求職者体験のあり方を変える』ということに挑戦し続けていきたいと思います」

(鈴木智華)