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「媒体を売るだけ」では生き残れない。プレシャスパートナーズ社長が語る、求人広告代理店の危機と唯一の勝ち筋

株式会社プレシャスパートナーズ
代表取締役社長 CEO
髙﨑 誠司氏
たかさき・せいじ/2004年に某大手求人メディアへ入社。営業職を経て代理店事業部の立ち上げに携わり、多数のトップパートナーを担当。代理店ネットワーク構築および人材ビジネスにおけるパートナーシップモデルの確立に関与。2008年に株式会社プレシャスパートナーズを設立し、代表取締役社長として事業戦略および組織運営を統括。企業理念や文化を正しく伝える採用・ブランディング支援を行い、人と企業の持続的成長を支えている。

採用競争が激化し、ただ求人を掲載するだけでは採用成功が難しい時代になりつつある。媒体を右から左へ販売するだけの営業スタイルは、すでに限界を迎えているのではないか。

求人広告代理店の存在価値そのものが問われる今、これからの人材企業、そして人材営業に求められる姿とは何か。株式会社プレシャスパートナーズ代表の髙﨑氏に、代理店戦略の未来について話を聞いた。

「複数の媒体を扱えること」の価値はもう薄れている

求人広告代理店の多くは、特定の求人媒体を販売する会社として始まった。しかし現在、求人広告代理店業界は、大きな変化を迎えている。

髙﨑氏「もともと求人広告代理店の多くは、『この求人メディアを売る会社』といったように、特定の会社や媒体に紐づく形で生まれました。それがこの10年、20年で変化していって、今や会社をまたいで複数の媒体を取り扱うことが当たり前になりました。いろいろな媒体を取り扱えることの価値は、すでに薄れてしまっています」

そんな中、求人検索エンジンやAIの普及なども重なり、求人広告代理店は今改めて存在価値を問われている。「求められているのは、採用成功だけでなく、その先の定着までを見据えた支援だ」と髙﨑氏は語る。

髙﨑氏「以前は、応募が来た後の選考はお客様の仕事だと考えられていました。良い応募があっても採用できなければ、『では、もう一度広告を出しましょう』と提案する。それが従来の代理店でした。

しかし、これからは採用した人数だけでなく、そのうち何人が定着したのかまで求められるようになります。戦略を考え、媒体を選び、実際に手も動かす。採用から定着までを一貫してディレクションできなければ、代理店として成長することは難しいと思います。

私たちも2021年頃までは、幅広い媒体を扱いながらアクセスやデータを分析するといった支援に主眼を置いていました。しかし、採用難が社会問題になる中で求人検索エンジンがここまで大きくなり、Web広告の会社も参入してきてAIも登場して、とここ2年くらいで業界が一気に変わったんです。従来のやり方のままではすでに難しくなっている。変化を捉え、採用コンサルティングへと踏み込んでいる企業が一気に成長し、従来のやり方から動けない会社は衰退していくと思います。 私たち自身、決して先を走っているとは思っていません。むしろ、今ならまだギリギリ間に合う。そのくらいの危機感を持っています」

お客様に一番近い存在として、提携先とのハブになる

戦略立案からRPO(採用代行)、定着支援まですべてを自社で行える代理店は限られる。髙﨑氏は「すべて自社で賄えない企業こそ、他社と連携していく必要がある」と強調する。

髙﨑氏「内製化が難しい代理店は、RPO・採用戦略・定着支援といった各領域を専門としている会社と提携していくしかないと考えています。それも、新しいサービスがどんどん生まれてきますから、1つの会社と結び続けるのではなく、あらゆる所と手を取り合いながら変化していく必要があるでしょう」

ただし、単に他社を紹介するだけの「トスアップ」では、代理店としての存在意義は薄れてしまうという。

髙﨑氏「お客様の要望を一番知っているのは、窓口となる代理店です。ですから、提携先へただトスアップするのではなく、『こう動いてほしい』『ペルソナとずれている』というような深いところまで入って全体を動かさなければいけません。

それだけ手をかけると、短期的には売上と工数が合わないケースも出てきます。それでもやらなければ、お客様はすべてを支援してくれる別の代理店やコンサルティング会社へ移ってしまう。この数年間でやるしかないと思います」

求人広告代理店として生き残るために変革が求められる一方で、代理店ならではの強みもある。髙﨑氏は、「自社の求人サイトやプロダクトを持たないことが、むしろ信頼につながる場合もある」と語る。

髙﨑氏「自社で媒体を持っている会社であれば、その媒体を深く理解しているという信頼があります。一方で、お客様から『その媒体を売りたいだけなのではないか』と思われる可能性もあります。私たちは複数の媒体を取り扱っているからこそ、フラットに何が良くて何が悪いのかを判断できる。その点が、代理店やコンサルティング会社に期待されていることだと思います。

マージンが高いから特定の媒体を勧めるのであれば、それはコンサルティングではなく物売りですよね。お客様の採用成功に最も近い手段を提案する。その姿勢を失えば、最終的にはお客様も売上も失うことになります」

「媒体を売る」から「採用成功を支える」へ。現場と組織の変え方

ではその転換は、具体的にはどう進めていけばよいのだろうか。採用戦略やRPOなどへ支援領域を広げるには採用フロー全てを理解する必要があり、営業担当者による経験やスキルの差が課題となる。

髙﨑氏「まずは採用戦略から定着までを一つひとつ考えていくことで、各工程で何が必要なのかが分かってくると思います。

例えば、『良い人とはどんな人なのか』を考えていけばペルソナ設計が必要だと分かってくるはずですし、会社としての強みと弱みを整理する中で、じゃあ出来ていないことはいつ出来るようになるのかにも目が向いてくる。そうしていくなかで全体の流れはある程度分かるようになります。

最初からすべての領域に精通している必要はありません。一連の採用工程と、それぞれの段階で何が必要なのかを理解していれば、最低限の知識を持って提携先と話ができます。そこから専門家とのやり取りを通じて、知識を深めていけば良いのではないでしょうか」

加えて髙﨑氏は、「提携先と支援を進める際には、あくまでお客様側に立つことが大切」と語る。

髙﨑氏「提携先側ではなく、お客様側の席に座って提携先と話をするのが私たちコンサルタントの仕事だと思うんです。

求人広告の営業担当者は、もともとお客様との関係性を築く力を持っていると思います。その強みを生かして、お客様側に立ちながら採用戦略やRPOの専門家とやり取りすることで、お客様との関係もより深くなっていくはずです」

実際、プレシャスパートナーズではコンサルティングを始めてから、顧客から寄せられる言葉に変化が表れている。

髙﨑氏「以前は、『良い人が来ました』『応募が増えました』といった各施策に対する感謝の言葉が中心でした。コンサルティングを始めてからは、『そこまで当社のことを考えてくれてありがとう』『一緒に伴走してくれてありがとう』と言われることがすごく増えました。感謝の重みが変わったと感じています。媒体を掲載して終わるのではなく、お客様と本当の意味で二人三脚で取り組めるようになりましたね」

こうした営業スタイルへ転換するには、現場だけでなく経営陣の意識も変える必要がある。

その第一歩として髙﨑氏が挙げるのが、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の再構築である。

髙﨑氏「まずは経営陣自身が、『媒体を売る』ことよりも、お客様に喜んでもらえる立ち位置になることに目を向ける必要があります。そのうえで、会社としてどうありたいのかを話し、ミッション・ビジョン・バリューを再構築していく。

MVVが固まれば、現状何ができていて、この先どこまでやっていくのかも見えてきます。もちろん、すぐに組織を変えて、自社ですべての支援を行うのは不可能です。今できるところは自分たちでやり、できないところは他社と提携する。そうやって少しずつ支援できる範囲を広げていけばいいと思います」

提携についても、目先の売上を目的にするのではなく、新規事業への投資という意識で取り組むべきだという。

髙﨑氏「提携による売上をアテにするのではなく、知見を蓄積する機会として捉えることが必要です。提携先と一緒に仕事をするなかで学び、将来的には自社でできることを増やしていく。新しい拠点や事業も、最初から売上が立つわけではないのと同じです。今これをやらなければ今後本事業がまずくなるような状況なので、経営者自身が投資と考えて踏み出さないといけない一歩かなと感じます」

AIと人の力を組み合わせ、人材業界の仲間と進化していきたい

プレシャスパートナーズが2025年にコンサルティング事業を本格的にスタートしてから、約一年。変化についてうかがった。

髙﨑氏「お客様からの信頼の質が変わってきたのを感じていますね。通年でのコンサルティング契約によって、早い段階から次年度の採用についてご相談いただくことも増えています。さらに支援する範囲が広がり、お任せいただける案件の規模も変わってきています」

今後の目標について髙﨑氏は「より質の高いコンサルティングができる体制を整えたい」と語る。

髙﨑氏「属人的なコンサルティングではなく、AIやシステムを活用したコンサルティングを今後は作っていきたいですね。あとは、ここまででお話したとおり、定着までを見据えた設計をしていかなければならないので、入社後のサポートやフォローに関しても力を入れていきたいです」

最後に、変革期を迎える人材業界の企業に向けて、髙﨑氏からメッセージをもらった。

髙﨑氏「コンサルティングファームやAIなどもありますが、結局、お客様が何に困っているのかを一番よく知っているのは、我々のような求人広告代理店だと思います。 お客様の課題に向き合って必要なことを考え、それをやっていけばいい。新しいサービスは今の仕事の延長線上に必ずあるはずです。

今後は集客やブランディングなど、採用支援に求められる領域はさらに広がっていくでしょう。自社だけでは手が届かない領域があれば、得意な会社と手を組んでいく必要があります。そういった成功事例も含めて人材業界の皆さんたちと情報共有しながら、採用成功について話せる仲間になれたらいいなと心の底から思っています。

同じ業界で20年、30年と一緒にやってきた者同士、お互いにできることを持ち寄って、みんなで進化していけたらすごく嬉しいです」

(執筆:川瀬ゆう)