ワンキャリアさん、なぜ5年で利用率No.2の就活サイトになれたんですか?

株式会社ワンキャリア
執行役員
小川 勇輔 氏
おがわ・ゆうすけ/2015年に新卒で株式会社リクルートライフスタイル(現在株式会社リクルートに統合)に入社。広告・店舗向け決済サービスなどの営業経験を経て2017年2月に株式会社ワンキャリアへ参画。2021年執行役員に就任。

2021年10月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場した株式会社ワンキャリア。同社が運営する新卒採用支援メディア「ONE CAREER」は、就活生の2人に1人以上が見ているメディアとして新卒採用マーケットでの存在感を強めている。

同社が急速に成長していった背景には何があったのだろうか、また上場を果たしたワンキャリアは、今後何を目指していくのだろうか? 同社の執行役員を務める小川氏に話をうかがった。

地道なクチコミで多くの学生が利用するメディアへ

創業当初から「一人ひとりにとって唯一無二のキャリアを大切にしていきたい」という思いを持ち、新卒イベントの開催やメディア運営を行っていたワンキャリア。

「HRのマーケット全体を見据えていく中で、キャリアに関する不安や採用のミスマッチを解消するためにはキャリアに関するデータを広く集めて、そのデータを活用していく必要があると考えていました。そのための足がかりとして、まずは新卒採用支援メディアとして学生の声を集め始めたのが『ONE CAREER』の始まりです」

小川氏がジョインした2017年ごろは「一般的に偏差値の高いと言われる大学生と、日系大手・外資企業などの就活人気企業とのマッチングに特化した情報サイト」というポジションで地位を確立しつつあるタイミングだった。しかし徐々に、学生の所属大学に関わらず、多くの学生が見るメディアへと成長していったという。

「実は『ONE CAREER』が学生から広く知られるようになった明確なきっかけというものはあまりありません。ユーザーが見たい情報を届け続けたことで、地道に少しずつ登録者を伸ばしたメディアでした。

メディアで見たESやクチコミを参考にして内定を獲得した学生が、またメディアに投稿をしてくれ、自分の大学の後輩たちに『就活をする際におすすめのメディア』として紹介してくれる…。エンドユーザーファーストを貫いたことで、多くの学生に知っていただけたのだと思います」

提供:株式会社ワンキャリア

コロナの危機を機会へ変えた「ONE CAREER LIVE」

順調に事業を伸ばしていたワンキャリアだったが、2020年に大きな危機が訪れる。新型コロナウイルスが流行し、創業事業でもあるオフラインイベントの開催ができなくなってしまったのだ。

「冬に行うはずだったオフラインイベントも急遽中止となり、ここからどこまで状況が回復するのか、先行きも見えない。このままでは春だけではなく夏・秋・冬のイベント開催も出来なくなる可能性がある、という危機感がありました。

そんな中で改めて『今、学生と企業が直面している困難とは何か』ということに立ち返ったとき、企業が発信している生の情報が受け取れなくなってしまうことが大きな課題になるだろうと考えました。そこで、企業の声を届ける代替手段は何かを考えたときに、動画を使って情報を発信する意思決定をしました」

意思決定を下した2020年2月当時、社内で動画撮影や編集に関する知識を持っている人はいなかったという。

「当時はこの取り組みが上手く行くかどうか、不安な面もありました。それでも学生に情報を届けたいという思いから、オフラインイベントに参加していただく予定だった企業へのオンライン開催の呼びかけ、オンライン説明会を行うための設備や運営の段取りを始めました」

手探りでの運営となる中、就活解禁日となる3月1日にYouTube上にて『ONE CAREER LIVE』を開始。3月の平日に、毎日様々な企業のWEB会社説明会を放送した。

新卒業界の中でも先駆けとなるWEB会社説明会となった『ONE CAREER LIVE』は、ワンキャリアがより多くの学生・企業に知られる大きなきっかけとなった。

「また、今までワンキャリアとコラボさせていただくのは大手企業やメガベンチャーといった、首都圏に本社がある企業が中心でした。しかしこの『ONE CAREER LIVE』が知られるようになるにつれ、今までアプローチできていなかった地方企業からも企画の依頼が来るようになりました」

より多くの企業の声を、より多くの学生に届けられるようになったこの動画事業とオンラインイベントの開催は、ワンキャリアの転換点と言えるだろう。

毎日放送(MBS)との共同イベント『西日本 POWER LIVE』の様子

就活生が最も利用するサイト第2位となった背景

HR総研の調査にて、「22卒学生が最も活用している就職ナビサイト」の第2位に「ONE CAREER」が選ばれた。学生のニーズを的確に拾い上げ、求める情報を発信することで支持を大きく集めるメディアとなった「ONE CAREER」だが、メディア作りにおいてどのような工夫をしているのだろうか。

HR総研調査をもとにワンキャリア作成

「まず、ワンキャリアのコアバリューの一つである『エンドユーザーファースト』の価値観が、創業当時から今も変わらず組織に深く浸透していることが挙げられます。

また、社内に多くの学生スタッフがインターン生として勤務しているため、今の大学生の仕事選びに関するリアルな悩みをすぐに聞ける環境が整っていることも強みの一つです。インターン生にはメディア・イベントの運営なども一部お願いしていますが、学生のニーズを反映するコンテンツ作りを行ってくれているからこそ、学生にとって魅力的なメディアとして成長できているのではないかと思います」

また、ワンキャリアのインターン生とのつながりは、インターンシップを卒業してからも資産となっているという。

「私自身も、もともと学生インターンという形でワンキャリアを手伝っていたことがきっかけで、ワンキャリアに出戻りという形でジョインをしました。さらに、『ONE CAREER PLUS』という中途向けの転職サイトのコンテンツ企画やデータ集めをする際には、彼らのキャリアに関する悩みや声などを聞かせてもらうこともあります。

今、他の企業で活躍しているインターン卒業生とのつながりの深さも、ワンキャリアという組織の特徴だと感じています」

学生の利用は多いが、利用企業はまだまだ少ない

最後に、上場を果たしたワンキャリアの今後の展望について話を聞いた。

「現在の課題は、『ONE CAREER』を見ていただいている学生の数に対して、実際にメディア内でエントリーできる企業の選択肢が少ないことです。

学生の利用率は全就活生の50%を超える就活生が利用している一方で、『ONE CAREER』をご利用いただいている企業はわずか800社ほど。新卒採用を行っている企業の2、3%しか、ワンキャリアを通して就活生がエントリーできないというアンバランスな状況を改善したいと思っています」

またこの課題を解決するためのポイントは、メディア発足当初の「就活人気企業を掲載するサイト」というイメージを脱却できるかどうかだと小川氏は続ける。

「人事の方にワンキャリアという会社の名前は認知されるようになってきましたが、『大企業が使うメディアでしょう?』と言われることがまだまだ多いです。地方の学生含む様々な学生が利用するメディアになっている今、よりきめ細かい学生のニーズに対応するためにも、より幅広い企業様に使われるメディアを目指していきたいです」

そのために力を入れているのが、動画コンテンツの普及と地方企業へのアプローチだ。

ワンキャリア動画撮影用独自スタジオ

「YouTubeによる配信コンテンツ『ONE CAREER LIVE』は、コロナ以降から1年以上取り組んできたこともあり、学生の就活トレンドを抑えた企画や配信のクオリティ、オペレーションをよりブラッシュアップしてきました。オンライン採用のニーズが高まる新卒マーケットにおいて、ワンキャリアのブランドを支える一大コンテンツとして成長しています。

これらの動画サービスを、より多くの企業に届ける。そして魅力的な企業の声を多くの学生に届けることで、新しい出会いを生むコンテンツへと成長させていきたいと思います」

「人の数だけ、キャリアをつくる。」というミッションを実現するため、ワンキャリアの挑戦は続く。

母集団形成から振り返りまでトータルサポート「ONE CAREER CLOUD」はコチラ