驚異のマージン率8%~15%!人材紹介の新水準を作るプロコネクトの挑戦

イーストフィールズ株式会社
代表取締役
東野 智晴 氏
ひがしの・ちはる/2009年に大学院卒業後、東京海上日動火災保険株式会社に入社し、IFRS対応プロジェクトに従事。2013年に株式会社ベイカレント・コンサルティングに入社し、マーケティング・セールス領域の改善を中心に支援。データサイエンティストとして社内研修の講師も務めた。2018年10月にフリーランスのコンサルタントに企業の案件を紹介するイーストフィールズ株式会社を設立。

現在、人材紹介業では30〜40%のマージン率が設定されているのが一般的だが、その割合は公開されておらず、クライアントやフリーランスに正確な情報が伝わらないことでトラブルが生じるケースもある。透明性のある情報公開やマージン率の引き下げが必要とされている中、フリーランスの人材紹介をメインに扱う「プロコネクト」は、業界最低水準のマージン率8%~15%を設定・公開し、注目を集めている。今回は、プロコネクトを運営するイーストフィールズ株式会社の東野氏に、フリーランス人材を扱う業界の問題点や、プロコネクトを通じて実現したい業界の未来について話を伺った。

フリーランスの人材紹介で不透明性が問題になっている

フリーランスが仕事を得る場合、エージェントが間に入ることで起こる問題も少なくないと東野氏は言う。具体的にどのようなトラブルが生じやすいのか、フリーランスを扱う人材紹介業が抱える課題について伺った。

情報の非対称性によるトラブル

「情報の不透明さゆえに生じる問題として、『情報の非対称性によって起こるトラブル』があります。人材紹介ではエージェントが間に入るため、当然マージンが発生しますが、そのマージン率は公開されていないことがほとんどです。つまり、クライアントがいくら支払っていて、フリーランスの手元にいくら残るのかが見えない不透明さがトラブルの要因になっています。一般的にマージン率は高額な場合が多いため、クライアント側からすると『こんなに払っているのに、満足できる対価が受け取れない』、一方フリーランス側は、『これだけしか報酬がないのに、仕事量が多すぎる』と感じ、双方にギャップが生じてしまうのが大きな問題につながっています」

ほかにも、エージェントが間に入ることで、クライアントとフリーランスとの認識に齟齬が生じるケースも多いという。特に仕事内容に関するトラブルは起きやすく、契約後にフリーランスから「聞いていた内容と違う」と言われることもあると東野氏は話す。

「紹介する仕事の内容をエージェント側が理解できていないという場合もあります。実際に、契約前はエージェントから開発プロジェクトのみが業務内容だと説明を受けていたものの、現場では保守・運用業務を始め、開発プロジェクトとは関係ない業務まで任せられたというケースもありました。仕事内容や役割について理解していない担当者が説明に入ることで、意図的ではないにしろ誤った情報を伝えてしまい、結果としてフリーランスとクライアントの間に認識のズレが生じてトラブルにつながることも多いですね」

多重下請け構造がフリーランス人材の流出に繋がる

情報の不透明性は多重下請け構造と結びつき、さらなる問題を生んでいる。多重下請け構造とは、クライアントから受注した案件を、別会社に二次請け、三次請けへと再委託する構造のことだ。もともとシステムエンジニア業界に多く問題視されてきたが、同じことがフリーランス業界でも起きているという。

「間に入った全ての会社にマージンが発生するため、多重になればなるほど実際に価値を提供するフリーランスが受け取る金額は少なくなり、不満につながっています。このような構造の背景には、案件と人材の両方を潤沢に保有するエージェントが少ないことがあります。

人材紹介では一般的に、受注した案件にマッチする人材が確保できていない場合、それに見合った人材のいる業者に再委託します。この傾向は大きい企業に顕著で、多い場合は間に3社入っているケースもあります。同じ案件でも多重下請けを経て契約すると、フリーランスが受け取れる金額は歴然と下がります。フリーランス側も、もちろん契約やその他のやり取りがスムーズになるなどのメリットを感じてエージェントを利用するわけですが、2社以上間に入るとなると忌避する方が多いです」

2社以上のエージェントが間に入る多重下請け構造は、フリーランス側とクライアント側の双方にとってマイナスな面が顕著だ。このような現状が続くことで懸念される問題もある。

「非公開のマージン率や下請け構造の不透明さが不満を生むと、フリーランスという働き方に魅力を感じられなくなり、フリーランスで働く人自体が減ったり海外に流出したりする可能性があります。またクライアント側も、多額の仲介料を払っているのに良い人材を獲得できないとなれば、フリーランスの利用を控えますよね。自由な働き方の選択肢としてフリーランスが広まっていく中で、こうした問題は障壁になるだろうと懸念しています」

フリーランスの人材紹介業を変えるプロコネクトの取り組み

フリーランス向け人材紹介の問題点を知り、プロコネクトを発足した東野氏。問題を知るきっかけになったのは、前職で関わったフリーランスとの交流だ。

「当時在籍していたコンサルティングファームのプロジェクトにフリーランスの方が多くいて、一緒に働いていく中でフリーランスという働き方をもっと広げるべきではないかと考えるようになりました。お話を伺うと、やはりマージン率や多重下請け構造による不満を口にする方も多く、そのような状況を目の当たりにしたことで、この業界を正しいあるべき姿へと導かなければならないと感じました。過去にシステム系の会社に在籍していた際、多重下請け構造のせいでシステムエンジニアの育成が阻害されている光景を目の当たりにしていたこともあり、フリーランスで同じことを起こしてはいけないと思ったんです。それがプロコネクト発足の経緯です」

マージン率を公開!ハイクラスな人材マッチングサービスを行う「プロコネクト」

代表の東野氏の強い思いから生まれた人材マッチングサービス「プロコネクト」は、DX推進や効率化によるコスト削減などの企業課題に対してハイクラスなフリーランスの人材を紹介するサービスだ。有名企業のコンサルティングファーム出身者や大手企業の役職経験者、マーケターなどハイレベルな人材を多く有している。

「プロコネクトの人材紹介の仕方には『プラットフォーム型』と『エージェント型』の2つの方法があります。プラットフォーム型は、弊社のプラットフォームを利用して企業がフリーランスの方をダイレクトにスカウトする方法。エージェント型は、弊社の担当者が企業とフリーランスの間に入って人力でマッチングをサポートする方法です。エージェント型では企業からヒアリングした課題や要件に合う人材を探したり、フリーランスの方の細かな要望に合わせた案件を選んだりしながら、報酬や条件の交渉までを行っています」

プロコネクトの最大の特徴ともいえるのが、マージン率の公開だ。多くのエージェントで非公開とされているマージン率を公開しており、情報の透明性を担保している。人材紹介のマージン率はおおよそ20%~30%が相場であり、なかには40%近くに設定されているサービスもある。対してプロコネクトのマージン率はプラットフォーム型では8%、エージェント型では15%と設定しており、業界の水準を大幅に下回っている。

長期契約と自動化で低マージンを実現

通常、人材紹介会社は、マージンから得る利益を収益のメインとしているところが多い。プロコネクトは、業界水準の半分程度という低マージンを一体どのように実現しているのだろうか。

「弊社ではクライアントと中長期的に継続する関係構築を行い、収益の最大化を図るビジネスモデルを展開しています。そのために我々のサービスをできるだけ長く利用していただけるよう、クライアントやフリーランスの満足度を重視して人材の定着やリピート率の向上に努めています。サービス立ち上げから4年になりますが、実際に3年8カ月という長い期間利用してくださっている方もいらっしゃいますね。ありがたいことにトラブルによる途中解約などもほとんどありません。新規顧客の獲得も利用者の方からの紹介をメインとしていますので、営業コストもそれほど必要としないのが特徴です。

また、弊社は社内で使うツールや機能などのシステム開発も行っています。人材のマッチング作業や契約にかかる連絡メールなどを全て自動化することでオペレーションコストを削減しました。業務の自動化が進んでいる度合いでは業界内でもトップクラスではないかと自負しております」

企業努力により実現されている低マージン。高い満足度を得て中長期的に利用してもらえている一番の理由は「信頼」だと東野氏は続ける。

「マージンの公開も含め情報をオープンにしているところが評価され、『信頼できる』という声を多く頂いていております。またクライアントやフリーランスへの連絡スピードも重視していますね。間に我々が入ることで情報を滞留させてはいけないという意識で、なるべく早いレスポンスができるよう取り組んでいます。利用者の方を不安にさせないことが『信頼』となり、結果として長期的な利用につながっていると感じています」

業界のスタンダードを変えたい…プロコネクトが目指す姿

プロコネクトは、低いマージン率でも企業努力により経営が成り立つビジネスモデルを体現してみせた。このサービスを通して、非公開で20%~35%のマージン率が当たり前と言われる人材業界のスタンダードを塗り替えたいという。

「紹介業に限らず、人材業界全体がフリーランスや派遣社員などの価値を出している当事者に利益が還元される仕組みになっていくことが理想だと考えています。良識的なマージン率やそれを公開することが当たり前となって、雇う側・働く側双方の不満を減らし、よりよい業界作りを目指したいです。

また、今後の事業展開としては、プロコネクトを地方にも展開し、地方創生に寄与することを考えています。ノウハウや情報を東京だけに留めておくのではなく、フリーランスの方が媒介者となって地方を盛り上げていく、個人的にはそんな未来も想像しています。フリーランスの方の中にはワーケーションで地方へ行く方もいると思うので、そうしたニーズのマッチングを行うなど、地方創生にプロコネクトという優秀な人材のデータベースが活用できると嬉しいですね。

現在日本では労働人口が減少し、職の専門性はどんどん細分化されています。その中で優秀な人材の獲得競争はさらに激化していくでしょう。いかに社会にとって最適な人材マッチングができるかというのが、限られた人材を有効活用していくための至上命題だと考えています。我々はフリーランスという軸で最適化を図り、人材業界を盛り上げていきたいと思っていますので、人材業界ではたらく方々にもそれぞれの視点で日本国内の生産性を上げるべく、一緒にチャレンジしていってもらいたいですね」

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