株式会社タイミー
BX部 部長
木村 真依 氏
きむら・まい/「クックパッド」や「GU」で事業立ち上げからブランドを構築、PR/広報、ブランディング、マーケティングのキャリアを歩み、「人生の可能性が広がる働くインフラをつくり、世界中の人に使ってほしい」と考え、 2021年タイミーに入社、BX部を立ち上げ、タイミーの会社及びサービスのブランディング、PR、オウンドメディアを統括しブランド戦略の策定、推進を担当。
2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業様にインタビューし、この10年間が自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。
今回は株式会社タイミーの木村氏に、創業から今まで5年間の歩みとこれから成し遂げたいことについて話を伺いました。
新しい「働くの当たり前」を作った5年間
面接や履歴書なしで、1日最短1時間からすぐに働けるスキマバイトサービス「タイミー」を運営する株式会社タイミー。2017年に創業し、スポットワークという新しい働き方を先導して世に広めてきました。
「タイミーは『一人ひとりの時間を豊かに』をビジョンに掲げています。時間を豊かにする選択肢の一つとして、手軽に好きな時間に働ける『タイミー』が着想されました。当時は面接や履歴書なしのコンセプトが新しく、そこが提供価値に繋がりました」
サービス開始から約1年後の2019年11月、テレビCMの放映により認知度が大幅に上がったタイミーは瞬く間に成長し、翌年2月にはワーカー数100万人を突破します。全てが順調に見えたそのとき、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るいました。このピンチが、事業を今の姿に方向転換させる大きなきっかけになったといいます。
「コロナ前までは、タイミーで掲載する求人の約6割が飲食店の事業者様でした。そのため、営業自粛により飲食店が休業・時短になると、事業が低迷してしまったんです。このままでは経営が傾くと誰もが危惧した状況の中、新たに着目したのが巣ごもり需要でした。ネット通販のニーズが伸びていたため、これからは物流が忙しくなるだろうと予測し、物流専門のチームを発足しました。行く先の見えない中での新しい試みにメンバーも不安を感じていましたが、小川の『自分たちの提供価値は間違ってない』という言葉をそれぞれが信じて提案を続けました。
結果、飲食は1割程度に減ったものの、その分物流の顧客が増え、それに付随する配達や運転の業者様にまで幅広くサービスを使っていただけるようになったんです。回復を始めた2020年5月から現在までは、募集人数、掲載企業数、ワーカー数もずっと右肩上がりで成長しています」
停滞から急成長まで様々なことを乗り越え、「新しい『働く』の当たり前を作った」5年間だったと木村氏は語ります。
「今まで、アルバイトをする場合は履歴書の記入・応募・面接のステップを踏むのが当たり前でした。面接・履歴書なしで1日最短1時間から直接雇用で働ける、給与は働いた後に即金ですぐにお金を引き出せるシステムは画期的で新しい『働く』スタンダードを作れたと思っています。私達は『「働く」を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる』をミッションに掲げてサービスを展開してきました。『タイミーを通して職業を体験し、自分の得意不得意・興味のある分野を見つけられた』とのお声を耳にする機会も増えています。仕事を身近に、気軽に試せる機会の提供が、人生の可能性の最大化に繋がると確信した5年間でした」
スキルの可視化で広げるキャリアの可能性
同社は今後も「働く」の当たり前をアップデートするトップランナーとして、新しい働き方を提案し続けていくといいます。
「現在は、『ワーカーさんのスキルの可視化』に焦点を当てた新たな試みを行っています。
2023年5月には、アルバイト全員がスポットワーカーで成り立つ居酒屋『THE 赤提灯』をオープンしました。初心者・未経験者のワーカーさんが飲食業の基礎から上級までのスキルを段階的に習得できるシステムになっているのが大きな特徴です。30項目程度のスキルチェックシートがあり学ぶべきことが明確になっているだけでなく、提供するメニューのおすすめポイントが全て書かれたカンペもあり、初めて勤務される方でも働きやすい仕組みになっています。スキルが目に見えると成長を実感でき、自信もつきます。私たちは、成功体験の積み重ねが意欲の向上にも寄与し、人生を切り開くきっかけになると考えています。
またスキル習得の支援は飲食業だけでなく様々な業界で進めています。最近では、フォークリフトの資格取得を費用補助によって支援するプログラムも実施しています。物流の2024年問題が叫ばれる中、人手不足を解消する一手になりたいです」
また、介護や保育など、今まではスポットワークでは難しいとされていた業界にもチャレンジしていきたいと語りました。
「専門性を要する業界では、もちろん有資格者にしかできない業務もあります。しかし業務の切り分けをすれば、スポットワーカーが活躍できる場はたくさんあると思うんです。例えば介護の現場でお料理を出す仕事は経験者にしかできませんが、食べ終わったお皿を下げる仕事や、ご利用者様とのコミュニケーションなどはスポットワーカーにも対応可能です。そのほかにも、洗濯やリネン交換、ベッドメイキング、調理補助、庭の草むしりなどの仕事をスポットワーカーにお任せするなど、業務を切り分けることにより有資格者の方はコア業務に集中できるようになりますし、ワーカーさんにとっても、職場体験の機会として可能性を広げる第一歩になると思います。
実際に、コロナ禍で実習がなかなかできなかった介護学生の方がタイミーを使って介護の現場を体験し、『現場で活躍する介護士さんと一緒に仕事ができ、より具体的に働くイメージがついた』との声を寄せてくださった例があります。スキマバイトは思い立ったら様々な職業を試せるからこそ、キャリアを主体的に形成するきっかけになると考えています」
最後に、木村氏は人材業界で働く人に対して「ともに市場を盛り上げていきたい」とメッセージを贈りました。
「『働く』の価値をお金を稼ぐ手段だけでなくもっとポジティブなものに革新できたら、業界だけでなく社会がより良いものになっていくと思います。多くの皆さんに生きがいや働きがいを感じてもらえるよう、一緒に業界を盛り上げていきたいです」
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