運用型求人広告プラットフォーム「HRアドプラットフォーム」は求人広告をどう変える?

株式会社イオレ
代表取締役社長
小川 誠 氏
おがわ・まこと/大学在学中に株式会社アルファーブランチを設立。2010年1月に株式会社イオレ営業部門のアドバイザリー顧問を経験。その後、専務取締役、代表取締役副社長を経て、2019年6月に代表取締役社長に就任。2020年10月12日には、日本初の運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform(HRアドプラットフォーム)」をリリース。

今回は、株式会社イオレにて2020年10月にリリースされた、日本初の運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform(以下HRアドプラットフォーム)」について、代表取締役社長小川氏にインタビューを行った。現在特許出願中の同サービスが求人広告市場にもたらす変化と、これからの求人メディア・ATS提供企業とどのように協業していくかについて話を聞いた。

入札額において媒体をシステムが自動選定

これまで求人広告では「掲載した広告枠と週数に応じて料金を支払う」掲載課金型広告が主流だった。掲載課金型の広告ではクリック数や応募人数の保証はしていないため、予算をかけて掲載しても思うように応募がなく、採用までに想定以上のコストが発生してしまうリスクを抱えていた。今回リリースされた「HRアドプラットフォーム」は、そのようなリスクをなくした応募課金型の求人広告だ。

提供:株式会社イオレ

「HRアドプラットフォームは、広告業界で浸透しているアドテクノロジーを求人広告領域に活用したプラットフォームです。求人企業が採用管理システム(以下、ATS)で入札額などの条件を設定し入札を行うと、連携している複数の求人メディアから適切な広告枠を自動的にマッチングし、求人広告が掲載されます」

「求人企業側は応募課金での請求となるため、求人広告の閲覧数やクリック数にかかわらず、実際の応募数に応じた請求金額を支払うことになります。掲載型課金と比較すると必ず請求額に見合った成果が得られるため、コストパフォーマンスに優れた求人広告の掲載が可能となります」

「また料金体系については、広告枠での販売ではなく入札形式を採用しています。1エントリーをいくらで獲得したいのかという考えをベースにした求人出稿をしてもらうという点が、他のサービスと異なるポイントになります。入札金額や募集の条件を入れてもらうと、適切な求人メディアと掲載される求人原稿の検索順位をシステムが自動で設定します。また各求人メディアそれぞれによって、画像の枚数や文字数など求人広告枠の仕様が違うので、それぞれのメディアの仕様に合わせて自動出稿を可能にするところも独自にシステム化しています」

求人企業にとっては、媒体選定から入稿、運用までを省力化できるサービスとなる。いわば求人広告代理店の営業・運用チームの代わりとなる存在と言えるだろう。

開発のきっかけは「求人広告業界への疑問」

HRアドプラットフォームができた背景には、求人広告業界における営業方法に対する小川氏の素朴な疑問があったという。

「アドテクノロジーの業界では、求人広告業界のように広告を『枠』で販売する営業はいません。どのメディアに広告を出稿するかという媒体選定は、入札価格をベースにテクノロジーを用いた自動出稿によって最適化されているからです。一方で求人広告の業界を見ると各社が多くの営業を抱えており、営業力の強い会社がトップになっている。どの枠で出稿するかは各媒体・代理店の営業力によって決まるという構造に疑問を感じていました」

「また求職者の側からすると、検索したとき最上位に表示される求人は、掲載のために最も投資している会社の求人であり、本当に求職者にマッチしているかは不明です。そのような状況の中で、求職者に寄り添ったサービスを展開したいという思いもあり、この事業を立ち上げました」

2018年ごろから事業構想を考え始めた小川氏。リリース年となる2020年にかけて「ATSが求人企業の間で一般化したことが、HRアドプラットフォームを始める上で最高の追い風となった」と続ける。

「これまでは、求人メディアに掲載している期間の間だけ求人企業に管理画面を提供し、応募者とのコミュニケーションを取るという仕組みが長く続いていました。それがIndeedを代表とした求人検索エンジンの進出により、求人企業各社がATSを導入・オウンドメディアリクルーティングを進めるようになりました。その中で旧来の『掲載している期間だけ応募者とコミュニケーションを取る』という考え方から『ATSとオウンドメディアを運用して応募者とのコミュニケーションを運用、改善する』という考え方に切り替わったことで、HRアドプラットフォームが受け入れられやすい下地が整ったのではないかと思います」

また、リリース前は普及における1番大きなハードルは「求人メディア側からの賛同が得られるか」だと考えていたという。しかし結果的には予想していたのとは異なる反応が見られたと小川氏は語る。

「サービスをご案内した求人メディア様には、断わられることはありませんでした。むしろ仕組みや内容をもっと知りたいという好意的な反応が多かったです。この点はとても意外でした」

思いがけない好意的な反応の背景には何があるのだろうか。

「営業が広告枠を販売することのデメリットを各社が感じていたのだと思います。一人の営業が求人企業に対して広告枠を売ろうとすると、成果がうまく出なかったときの無償での補填延長やリピート時の値引きなど、人ならではの柔軟な対応や価格交渉が求められるようになります。その結果、営業一人あたりの生産性がどんどん落ちていっていることを課題に感じる企業が増えていました。そんな中で今回のコロナの影響で対面販売がそもそも難しくなったことも追い打ちとなり、打開策を模索してお問い合わせをいただくことが増えています」

「またHRアドプラットフォームには、求人メディア側で連携したい求人をリスト化したり、好ましくない求人をブロックしたりする機能も搭載されています。求人メディアのほうでも掲載する求人の内容をコントロールできる機能があることも、求人メディア様に受け入れられた要因の一つなのではないでしょうか」

求人メディアに寄り添ったサービスを目指して

今後の展開について小川氏は次のように語る。

「今後は各求人メディアや、派遣元企業が自社案件を掲載するオウンドメディアとも連携を進め、買い付け先のメディアを増やしたいと思っています。メディアの運営企業様にはHRアドプラットフォームを新たな収益を生むルートとして活用していただきたいと思っています」

また現在HRアドプラットフォームは、弊社のATS『JOBOLE』のみと連携するサービスとなっているが、2021年1月には他社のATSにも開放・連携できるようにする予定だという。

「各企業のATSと協業しながらHRアドプラットフォームを利用いただく求人企業の方を増やしつつ、営業枠販売をしている求人メディアや、メディア単体では収益を生んでいない派遣元企業のオウンドメディアにとって救世主のような存在となれればと考えています」

『HRアドプラットフォーム』はこちら