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【HRog決算解説】株式会社リクルートホールディングスの2026年3月期第1四半期決算から見える人材業界の最新トレンドは?

株式会社リクルートホールディングスの2026年3月期第1四半期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!

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一目でわかる! リクルート決算情報のグラフィックまとめ

リクルートの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

会社の業績としては、売上収益は前年同期比2.5%減の8,788億円となったものの、生産性の改善により調整後EBITDAは4.5%増の1,871億円を達成。調整後EBITDAマージンは四半期実績で過去最高の21.3%を記録しました(決算説明会書き起こし, p.3)。

もう少し詳しく! 今期セグメント別の業績は?

リクルートの今期決算について、主に決算短信をもとにセグメント別の業績について詳しくまとめました。

HRテクノロジー事業

グローバルで展開する求人プラットフォーム「Indeed」および「Glassdoor」を中心とした事業です。今期からマッチング&ソリューション事業の人材領域が統合され、事業規模が拡大しました。

米国では求人広告数の減少が継続したものの、マネタイゼーションの進化により有料求人広告1件当たりの売上収益の増加率が減少率を上回り、米ドルベースで前年同期比0.9%増の12.6億米ドルを達成。欧州及びその他地域も前年同期が低調だったことに加え、特に英国での好調により米ドルベースで12.6%増の4.76億米ドルとなりました。

日本では、Indeed PLUSのネット売上収益計上の影響により日本円ベースで4.4%減の902億円となりましたが、これは期初の想定通りです。

ネット売上について

日本における求人広告がクリック課金のIndeed PLUSに移行したことで、収益の計上方法が代理店手数料込みの「グロス」からリクルート取り分の「ネット」へと変更された(前期決算説明会書き起こし,p.6

セグメント全体では売上収益3,417億円(前年同期比3.8%減)、調整後EBITDA1,194億円(同1.4%増)、マージン率35.0%と高い収益性を維持しています。

人材派遣事業

日本、欧州、米国、豪州で人材派遣サービスを提供する事業です。

日本では人材派遣需要が引き続き伸長し、稼働人員の増加を背景に売上収益6.3%増の2,128億円と好調でした。一方、欧州、米国及び豪州では不透明な経済見通しを背景に人材派遣需要の鈍化が継続し、合計で12.2%減の1,953億円と減収となりました。

セグメント全体では売上収益4,081億円(前年同期比3.4%減)、調整後EBITDA268億円(同6.2%減)、マージン率は6.6%でした。

マーケティング・マッチング・テクノロジー事業

SaaSを含む旧マッチング&ソリューション事業の販促領域で構成される新セグメントです。

・ 不動産情報サイト 「suumo」
・ 美容サロン予約サイト 「HOT PEPPER Beauty」
・ 飲食店予約・クーポンサイト 「HOT PEPPER グルメ」
・ 旅行・宿泊予約サイト 「じゃらん」
・業務・経営ツール 「Air ビジネスツールズ」

日本国内の事業環境が安定して推移する中、全ての領域で増収を達成しました。

セグメント全体では売上収益1,368億円(前年同期比7.1%増)、業務委託費を中心としたコストを適切にコントロールした結果、調整後EBITDAは432億円(同26.8%増)、マージン率は大きく改善し4.9ポイント増の31.6%を達成しています。

来期の業績予想について

リクルートは2026年3月期の通期業績予想を据え置きました。売上収益3兆5,200億円(前年同期比1.1%減)、調整後EBITDA6,970億円(同2.7%増)、営業利益5,400億円(同10.1%増)、純利益4,280億円(同4.8%増)と、減収ながらも増益を見込んでいます。

今期決算の注目トピックは?

ガバナンス刷新を掲げて注目を浴びた前期のリクルート。2025年4月に始まった今期(2026年3月期)から、その新体制がいよいよ本格始動しました。2025年7月15日には、初めて「Indeed PLUS」などの Indeed提供商品を活用する方を対象にクーポンを配布するキャンペーンを開始。Indeed PLUSの拡販を加速させています。

同タイミングで、HRテクノロジー事業において約1,300名の人員削減も発表しました。荒井CFOは決算説明会で「現状、新しいサービスを作る上でのコーディングについては、当時3割ぐらいが機械化されている」と説明(決算説明会書き起こし, p.6)。

さらに「今回のHRテクノロジー事業の人員削減に伴って従業員給付費用が減少することで、連結EBITDAを押し上げ連結EBITDAマージンは増大する」(決算説明会書き起こし, p.3)としており、AI活用による効率化が収益性改善に直結していることが分かります。

また2025年9月10日から11日にかけて「Indeed FutureWorks 2025」が開催されます。同イベントは「Indeedの1年間での一番大きなイベント」とされており、前期の通期決算で発表されたIndeedのAIサービス「Career Scout」「Talent Scout」等の進捗報告に注目が集まると予想されます。

まとめ~人材業界の最新トレンドは?~

今期決算から見えてきた人材業界の最新トレンドは、AI技術の活用による業務効率化と生産性向上の加速です。リクルートの事例は、人材業界全体がテクノロジーを活用した構造変化の真っ只中にあることを示しています。

荒井CFOが「どうやって機械化をしながら新しい製品を効率的に生み出していくか」(決算説明会書き起こし, p.5)と述べているように、人材業界においてもAI技術の活用が競争優位の源泉となりつつあります。

一方で、「仮に何かの変化で売上が大きく伸びたとしても、それで今回失った人員をもう一回取り戻すかというと、その可能性はあまり高くない」(決算説明会書き起こし, p.6)という発言からは、AI活用による事業構造の変化が不可逆的であることも示唆されています。

人材サービス各社にとって、AIを活用した業務効率化と新たな付加価値創出が、今後の競争力を左右するカギとなっていくかもしれません。業界全体の方向性を示す重要な指標として、HRog編集部では引き続きリクルートの動向に注目していきます!

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【参考URL】
リクルート26年3月期第1四半期 決算短信
リクルート26年3月期第1四半期 決算説明資料
リクルート26年3月期第1四半期 決算説明会書き起こし