25卒からのインターンシップ、三省合意で何が変わる?早期化に拍車・人材サービスに求められる併走支援

2025年卒業予定の学生から、インターンシップの規則が変わります。これまで企業や大学が主催していたプログラムは4つのタイプに分類され、「インターンシップ」という名称の使用には特定の条件を満たさなければいけなくなりました。またこれまではインターンシップで取得した学生の個人情報は広報活動や採用選考に原則利用してはならないとされていましたが、一定の条件を満たすことで活用が認められるようになりました。

今回の記事では、この改正に至った背景や個人情報活用の条件と注意点、さらにこの改正が人材業界に与える影響についても解説します。

改正の背景

これまで「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(三省合意)」においては、インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」としか定義されておらず、明確な要件を示されることなく幅広く実施されてきました。こうした理由から、実質的には会社説明会であるにもかかわらず「インターンシップ」の名称が使われているケースや、就活解禁日の前から採用活動を行いたい企業がインターンシップの名前を利用して採用活動を行うケースが頻発し、問題となっていました。

そこで、経団連と国公私の大学トップから成る「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、2022年4月に学生のキャリア形成に関わる取り組みを4つに類型化し、インターンシップの定義をより明確に設定したのです。インターンシップの名称を使うには最低でも5日間のプログラムである必要があると取り決められるなど、以前よりインターンシップ実施のハードルが上がりました。その代わり、「原則インターンシップで得た学生情報を採用選考活動に使用してはならない」制約を緩和し、一定の条件を満たした場合に限り採用に活用できるよう合意しました。

この産学協議会での合意に対応する形で三省合意も改正され、インターンシップのルールが正式に変更されたのです。

改正内容

学生のキャリア形成に関わる取り組みを4つに類型化

三省は学生のキャリア形成に関わる取り組みを4つに類型化しました。このうち「インターンシップ」という名称を使用していいのは、就業体験が必須な③と④のみとなり、ここで得た学生情報は、採用に活用できるようになります。

①オープンカンパニー
企業や就職情報会社、大学のキャリアセンターなどが実施するイベントや説明会。

②キャリア教育
大学が主導する産学連携プログラムとして実施される授業形式のもの。

③汎用的能力・専門活用型インターンシップ
5日間以上の就業体験型のインターンシップ。「学生の参加期間の半分以上を職場での就業体験とする」「必ずフィードバックを行う」などの条件が付加されている。

④高度専門型インターンシップ
高度な専門性のある学生を対象とした、2カ月以上の長期インターンシップ。ジョブ型採用などを考えている企業向け。

4タイプそれぞれの目的や特徴、実施可能時期などを以下の表にまとめました。

     参照:採用と教育の未来に関する産学協議会「産学で変えるこれからのインターンシップ

学生情報の活用における注意点

学生の個人情報を採用活動に利用できるのは、③汎用的能力・専門活用型インターンシップと、④高度専門型インターンシップのみです。この2つのうち、多くの企業が採用に活用するのは、最短5日から、様々な分野で実施できる③のインターンシップでしょう。③のインターンシップに関して、利用要件が細かく規定されているので紹介します。

      参照:採用と教育の未来に関する産学協議会「産学で変えるこれからのインターンシップ

またインターンシップで取得した個人情報が利用可能になるのは、あくまで採用解禁日の3月1日以降となるので注意が必要です。

まとめ・人材業界への影響は?

今回の改正により、インターンシップを採用に活用する動きが広がっています。

株式会社学情が2023年4月に実施した「インターンシップと採用の連携に関する調査」によれば、「三省合意」によるインターンシップのルール変更を受け、72.2%の企業が既に対応をしている、または対応を検討しているとあります。

具体的に対応している・対応を検討している点としては「インターンシップやオープン・カンパニーのコンテンツを見直す」が55.6%で最多でした。実施期間の半分以上の日数を職場での就業体験に充てることが学生情報活用の条件であるため、実務体験により比重を置いたプログラムへの変更を検討している企業が多いと読み取れます。

その他にも「インターンシップやオープン・カンパニーの広報開始時期を早める」が45.7%、「インターンシップやオープン・カンパニーの実施時期を早める」が43.0%と、採用スケジュール自体を早める意向を見せる企業が多いようです。

一方で、こうした採用スケジュールの早期化を懸念する声もあります。株式会社月刊総務が2023年4月に実施した「インターンシップについての調査」によれば、25.7%の回答者が採用直結のインターンシップに反対し、理由として「大手に優秀な学生を早期に確保されて厳しくなる」や「企業間での囲い込みが一層激しくなる」を挙げています。またインターンシップ実施における課題としては「学生の集客」が62.9%と最多で挙げられました。

引用:株式会社月刊総務「インターンシップについての調査
引用:株式会社月刊総務「インターンシップについての調査

今後はインターンシップにおいて学生の獲得競争の更なる激化が見込まれるため、人材サービスはより早期から併走して企業の集客やブランディングなどをサポートしていく必要があるでしょう。また「内容の設計」や「効果の検証」に課題を感じているとの声も多く、インターンシップの企画・設計・改善を支援するサービスの需要が高まりそうです。