上場後初・タイミーの通期決算をまとめて解説!

2024年7月、スキマバイトアプリ運営の株式会社タイミーが東証グロース市場に上場しました。そして12月、上場後初の通期決算が発表されました。今回は決算発表資料の内容から、今後のタイミーの動向をやさしく読み解いていきます。

売上高・営業利益|大幅増収・増益を達成

タイミーの24年10月期通期売上高は前年比+66.5%の268.8億円と、大幅増収を達成しました。

タイミーと同規模の売上高である人材企業として、「リジョブ」「ドラピタ」などを運営するじげんグループ(232億円:24年3月期)や、大手求人広告代理店のクイック(295億円:2024年3月期)があります。

(参考:【2024年度最新版】売上高から見た人材業界地図

ビジネスモデルや狙うターゲットも異なるため単純な比較はできませんが、上場からわずか一年足らずでこれらの企業と肩を並べる売上高を達成しており、タイミーが開拓してきた「スポットバイト市場」の成長率の高さが窺えます。

また、24年10月期通期の営業利益は前年比+117.0%の42.4億円で、大幅増益となりました。営業利益率は21年以前は赤字でしたが、22年で2.0%、23年で12.1%、そして24年では15.8%と年々改善傾向にあります。

タイミーの急成長を牽引しているのは、アクティブアカウント数(AA数)の増加です。

人手不足が深刻な「物流」「飲食」「小売」業種の中でも、今期は「小売」「飲食」業界を中心にAA数が積み上がり、前年比+99%の64.9万拠点まで増加しました。

ワーカーの勤怠管理や労働関連法のリスク低減の観点から、スポットバイトサービスは通常の求人サービスとは異なり、求人企業が複数のサービスを併用したり、競合他社へリプレイスしたりするのが難しいという特性があります。

そのため先行者利益が非常に大きく、競合が乱立している国内スポットバイトサービス市場の中でも、タイミーは引き続き一定のシェアを保持・拡大していくことが予想されます。

営業利益率大幅改善の背景として、月に8回以上稼働する「コアワーカー」が拡大し、ワーカーのマーケティング費用を抑えることができた点も見逃せません。

高い認知度を活かした案件数の多さや、ワーカーのスキルや働きぶりを「バッジ機能」で可視化する機能改善など、ワーカーにとっても「使い続けたくなる」プロダクト作りを実現することで高い稼働率を実現しています。

不正利用防止に係る対応強化を図りながらさらなる拡大を目指す

続いて、タイミーの来期の業績予測を見ていきましょう。

同社の25年10月期売上高は343億〜357億円(前期比成長率+ 28.0%〜+ 32.8%)、営業利益は60.0億〜67.1億円(前期比成長率+ 17.3%〜+ 18.6%)を見込んでいます。24年10月期と比較すると、売上高の成長率については控えめな数値予想となっております。

この予想の理由として、同社は①競争環境の激化、②サービス不正利用防止の対応強化による影響度 を挙げています。

正規の求人情報と見せかけて犯罪に加担させることを目的としたいわゆる「闇バイト」が社会問題化している今、タイミーは2024年12月6日、不正利用防止に向けた取り組みを開始すると発表しました。

発表によると今後は「不正な事業者に使わせない」「不正な求人を掲載させない」「働き手の保護」というキーワードのもと、

  • 事業者の実体・事業実態の確認
  • 24時間365日求人原稿を掲載前に全件チェックする体制構築
  • 通報機能などワーカーの安全・安心の確保、個人情報保護のための機能改善

など、不正利用防止のためにさまざまな取り組みを新たに実施していくとしています。

こうした取り組みにより、主に小規模クライアントのコンバージョン悪化が見込まれており、来期の売上高予測はその影響を織り込んだものとなっています。

一方で営業利益については、不正利用防止にかかる対応強化コストを計上しているものの、AA数の減少に合わせてワーカーマーケティングの投資額を調整することで最適化、さらなる収益性の改善を図るとしています。

出典元:株式会社タイミー「2024年10月期 通期決算説明資料

またタイミーは中長期戦略として新規事業「タイミー キャリアプラス」の成長を掲げています。

2024年2月にリリースした「タイミー キャリアプラス」は、タイミーで蓄積されたワーカーのスキルや勤務実績のデータをもとに正社員求人を紹介、企業とのマッチングを行う人材紹介サービスです。

25年10月期は営業人員の採用と対応業種の拡大を行い売上拡大を目指すとともに、タイミーでの勤務実績データをもとに履歴書を自動生成、企業にワーカーの魅力を訴求するための機能を開発する予定です。

同社は「ワーカー観点では、同じ職場に一定期間リピートして働きたいニーズがあり、クライアント観点では纏まった期間同じ人が勤務できるのであれば任せたい業務が多くあるというニーズがある」とコメントしています。

短期的には「スポットバイトとしての『タイミー』拡大」に注力するものの、中長期的にはこうしたニーズを反映し、これまで蓄積してきたデータとナレッジを活かしながら1日単位だけではない多様な形のマッチングを実現することが期待されます。

まとめ

タイミーは上場後初の通期決算で大幅な増収増益を達成しました。スポットバイト市場のリーディングカンパニーとして、不正利用防止への取り組みや正社員への転換などにチャレンジしながら、今後も多くのマッチングを生み出していくことが予想されます。

2025年以降もさらなる成長が期待されるタイミーの挑戦に、引き続き注目していきたいと思います。

(鈴木智華)