2020年は新型コロナウイルスによるビジネス環境の変化が追い風となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)に着手する企業が増えました。そしてその流れは採用領域にも及んでいます。今後多くの企業が変化する採用市場へ適応するために、採用のDXに取り組む必要があるでしょう。本特集では採用DX支援事業を行うHeaR株式会社監修のもと、採用DXの定義や正しい考え方、実践方法についてご紹介します。
新型コロナウイルスの影響で、採用を取り巻く環境は大きく変化しました。オンライン企業説明会やweb面接などの普及が進むことで、物理的な距離を越えて優秀な人材にリーチできる環境が整ってきています。
しかしオンライン採用への適応がうまくいかず「イベントが開けなくなったので、求職者にリーチできなくなった」「候補者のグリップがうまくできず、内定辞退が増えた」などの課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
そこで必要となってくるのが、急激な変化に適応した採用設計と組織作り、すなわち「採用のデジタルトランスフォーメーション(採用DX)」です。
第一回となる本記事では、日本におけるDXの取り組みの現状と、採用DXを実現するための3ステップを紹介します。急激な変化の時代において、いかに採用における競争優位性を確立していくかのヒントとなればと思います。
また本記事で紹介するステップについて、より詳細なポイントを知りたい人はこちらの資料を参考にしてみてください。
採用DXホワイトペーパー(HeaR株式会社ホームページより)
諸外国と比較してDXが遅れる日本
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「IT技術を適切に活用することで、サービスやビジネスモデル・業務プロセス・組織を変革し、顧客体験を向上させる取り組み」のことです。不確実かつ変化の激しいビジネス環境の中、多くの企業がDXに取り組み始めています。
しかし今までの商習慣や組織の硬直化が足かせとなり、なかなか施策が前に進まない企業も多いようです。
では諸外国と比較したとき、日本のDXの現状はどのようなものとなっているのでしょうか?
2019年にIMD世界競争力センターが発表した「世界デジタル競争力ランキング2019」によると、日本はデジタル競争力において63か国中23位という結果となりました。
また測定項目別の順位では、51項目中「国際経験(≒留学や就業の海外経験)」「機会と脅威(≒対応力)」「企業の機敏性(≒事業変革の機敏性)」「ビッグデータの活用と分析」の4項目で最下位に。人材・組織レベルでのデジタルへの適応力の低さが表れた結果となりました。
日本の各企業がIT化・デジタル化を中長期的な全社戦略とし、組織レベルでいかに実現・定着させるかが、日本企業がDXを進めるうえでの鍵となることがうかがえます。
しかし経済産業省が行った調査によると、DX=単なるクラウドサービスやデジタルツールの導入と認識している人が過半数を占めていることが分かりました。
DXにおいて、ツールの導入は単なる手段(=HOW)にすぎません。「DXを通して何を実現し、組織をどう進化させるか」という”ビジョン”を明確にすることが、DXを実現する上で大切なことと言えるでしょう。
採用DX=採用CX(候補者体験)+EX(従業員体験)の進化
では採用領域におけるDXで、私たちは何を実現するべきなのでしょうか? それを紐解くために、まずは新型コロナウイルスの影響で採用のオンライン化が加速した結果、どのような採用課題があらわれたのかを整理しましょう。
上記のように、「認知」「応募」「選考・内定」「入社・活躍」全てのフェーズであらたな課題が発生していることが分かります。
ここでお伝えしたいのは、今までオフラインでおこなっていたことをそのままオンラインに置き換えただけでは、オンライン採用はうまく機能しないということです。採用力向上を実現するためには、時代の変化に適応できる新たな採用基盤を構築することが求められています。
そこでHeaR株式会社では、採用DXの定義を「オンライン採⽤時代における採⽤⼿法・組織開発の進化」であると提唱しています。
従来の採用活動は「”現在の”企業の魅力を発見し、発信する」のが基本的な考え方です。しかしその考え方の下では、現時点で魅力が多い企業が採用上で有利になり、反対に魅力が少ない企業が採用上で不利になります。
一方採用DXでは、EX(従業員体験)の進化・改善にまで踏み込んで魅力的な組織をつくることが取り組みの第一歩となります。
EXとは、従業員が会社の中で働くことを通して得る全ての経験のことです。これは、働くことで得られるスキルや経験のみならず、福利厚生をはじめ、組織内のさまざまな要素から構成されています。感情的な経験も大いに関係してくるのが特徴です。
そのうえでオンライン採用における最適な採用CX(候補者体験)を設計することで、採用力向上を実現できます。単なるツールの導入にとどまるのではなく、事業戦略に根差した採用戦略や組織開発、すなわち強い採用基盤を作ることが、採用DXの考え方です。
採用CXとは、候補者が企業を認知してから選考を終えるまでのタッチポイント一つひとつに価値を提供することで、採用力向上ならびに自社のファン獲得に繋げる活動です。「(採用の合否に関わらず)この企業を受けてよかった」と感じてもらえるかが一つの指標になるでしょう。
採用DX実現までの3STEP
では具体的に、どのように採用DXを実現していけばよいのでしょうか? HeaR株式会社によると、採用DX実現のためには3つのSTEPを踏む必要があると言います。
組織のデジタル化とは、組織文化の進化を通してEX(従業員体験)を向上させるための取り組みです。
HeaR株式会社では「メンバーが立ち返れるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を作る」「仕組化を行う」「改善サイクルをつくる」など、すべての企業が行うべき組織改善のポイントを「第⼀原理」として整理しています。
第一原理をきちんと満たしたうえで、その組織ならではの「ユニークさ」を定義・整理することで、採用戦略を磨き上げていきます。
ツールのデジタル化とは、効率的な採用を実現するために自社にとって最適な採用ツールを選定し、活用することです。
現在はHR領域の業務を支援する様々なサービスがありますが、やみくもに導入しても成果はでません。「採用したい人物像(ペルソナ)」と予算や採用活動へのインパクトなど「自社リソースや意向」をかけ合わせながら、自社が今取り組むべき課題を明確にしたうえで適切な選定を行いましょう。
候補者体験のデジタル化とは、一貫した採用コンセプトを体現しながら採用のオンライン化を実現することです。
採用がオンラインに移行すると、「アメニティやオフィスなどといった物理的な物・施設による候補者への訴求が難しくなる」「職場や社員の雰囲気を伝えづらい」などの課題が出てきます。候補者の心理状態を想定しながら、魅力的な体験を設計していきましょう。
また採用DXについて、より具体的な取り組み事例が知りたい方は、こちらの資料を参考にしてみてください。
企業の魅力を採用力に換える~Airbnb社の取り組み~(HeaR株式会社ホームページより)
まとめ
今回は日本におけるDXの取り組みの現状と、採用DXを実現するための3ステップを紹介しました。次回は「組織のデジタル化」においてポイントとなる「企業のユニークさ」の見つけ方と、採用戦略への落とし込み方をご紹介します。
[…] 『採用領域のニューノーマル!2020年代の成功の鍵、 採用DX特集』 URL: https://hrog.net/knowledge/map/92328/ […]