緊急事態宣言の発令から、これまで「超売り手市場」だった求人市場は、新型コロナウイルスの感染拡大によって一変した。多くの企業が自社の採用活動を見直し、採用をストップ、もしくは採用に慎重になっている。
そんな中、人材紹介会社向け求人流通プラットフォーム「agent bank」や月額制のリファレンスチェックサービス「back check」を手がける株式会社ROXXは、総額9億円の資金調達を実施した。
今回の資金調達は、2020年2月に発表したサイバーエージェント、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルからの総額5億円の調達に続く、シリーズBラウンドに当たり、同社の累積調達額は約20億円となった。引受先はグローバル・ブレイン、日本郵政キャピタルである。
今回の資金調達の背景には、同社がある投資家のアドバイスによって不況に対する備えを進めていたことと、リファレンスチェックの重要性が高まっていることが起因している。
不況に対する備えをしていた件について、株式会社ROXX代表取締役の中嶋氏は次のように述べる。
「株主でもある、ANRIの佐俣アンリさんから『2020年、人材業界は厳しくなると思うから、苦しくなることを見据えて準備しておいた方がいい』とずっと言われていて。そのアドバイスもあったので、前回の調達が終わって、すぐ次の調達準備に取り掛かりました。結果的にグローバル・ブレインさん、日本郵政キャピタルグローバルさんに出資を決めてもらって、3年以上のランウェイを確保できたのは良かったですね」
同社は月額制のリファレンスチェックサービス「back check」を提供している。「back check」は、面接や書類からだけでは見えにくい採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得できるサービスである。採用予定の職種・ポジションに合わせて数十問の質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施できる。
新型コロナウイルスの影響で対面での面接ができず、候補者と深いコミュニケーションを取るハードルがあがっている中、候補者の経歴や実績に関する情報を知れるリファレンスチェックは採用のミスマッチを防ぐ手段として注目されつつある。
また、同氏は今後の展開について、「サービスの価値は変わらなくても、必要とされるお客様は一気に今変わりつつあるので、サービスのターゲットも急ピッチで変えていっているところです。そういったところは柔軟に対応しつつ、その中でチャンスがあれば新規事業、あるいは他のスタートアップを買収するという動きも一つの可能性として考えています。ただ、今は足元の基盤をしっかり固めて、一喜一憂せずに淡々と事業に取り組んでいきます」とコメント。
同社は今回調達した資金を、引き続き「agent bank」と「back check」の両事業への投資、採用強化に充てるという。