エン・ジャパンの第3四半期決算が発表されました。
エン・ジャパンの決算説明会資料は、伝えたい点が端的に大きく書かれていて、力強い印象を受けます。
一方で、会社全体との比較が見えにくい構成になっています。数字を整理して、会社全体の姿を見ながら分析を行いましょう。
ポイント
ここまで、決算説明資料に点在している数字を拾い集めて整理してみました。
ポイントは以下の4点です。
・売上げ全体は134%成長、営業利益は160%成長
・売上げの大半は採用事業セグメントによる
・採用事業セグメントの売上げは、採用サイト事業がメインだが、30%は人材紹介事業による。
・一方、教育・評価事業は赤字であり赤字額も増えている。
今まで採用サイト事業を中心にしていたエン・ジャパンが次の柱として人材紹介事業・海外事業を開始し、採用サイト事業とともに順調に売上げを伸ばしていることがわかります。
しかし、こうなると気になるのが教育・評価事業です。普通に考えると、赤字事業に追加投資をして赤字額を増やすより、伸びている新規事業に経営資源を投入する選択の方が賢いように思えます。教育・評価事業に投資をする狙いはどこにあるのでしょうか?
エン・ジャパンが教育・評価事業に投資をする理由は「採用サイト・人材紹介事業とのシナジーを発揮する競争力に育てるため」ではないかと推測します。
採用サイト・人材紹介はマッチングビジネスです。
企業によって、求める人物像や評価するポイントは全く違ってきます。同じ職種でも、ある企業では体力を重視する、ある企業では対人折衝能力を重視する、技術力を重視する、など採用の基準となるポイントが違ってきます。
さらには、例えば対人折衝能力を重視するとした場合、能力があるか無いかをどのようにして判断するか?判断基準も企業によって変わってきます。ある企業では優秀とされる人材でも他の企業では優秀と評価されなくなることもよくあります。顧客企業に人を紹介するにしても、その企業がどのような基準で人を採用したいかわからなければ、うまく行きません。
ところが、エン・ジャパンは、顧客企業に対して「人材教育・人材評価」のコンサルティングを行うことで、その企業がどのような基準で人を採用するか、どのように評価するか、情報を得ることができます。
また、評価基準が確立していない企業には、エン・ジャパンが考える評価基準を企業に指導することもできます。
こうして企業の評価基準を理解することができれば、その企業に人材を紹介する時のマッチング率を高めることが可能になります。さらに、企業に紹介し、採用された人材に対して教育をすれば、その企業での評価が高まります。
エン・ジャパンは、このサイクルを新たな競争力とするために教育・評価事業に投資をしているのではないでしょうか。
リクルート、テンプスタッフに代表される老舗大手企業とエン・ジャパン、ディップ、リブセンスなどの新興勢力の戦いの構図が見えてきます。今年は景気の回復に伴い各社好調でしたが、次の不況期に備え、「競争力」を模索しています。特に新興勢力企業は、大手の圧倒的な資本力に対抗できる競争力を持たなければ、競争激化が進む人材業界を生き残ることが難しくなってくるでしょう。
これからどの企業が頭一つリードするか、楽しみですね。