人が集まる会社は知っている 「動画採用」のすすめ【2022年8月22日開催・セミナーレポート】

登壇者
株式会社船井総合研究所

第三経営支援本部 副本部長
山根 康平 氏
やまね・こうへい/中小企業向けデジタルマーケティングの専門家。国内最先端のマーケティングノウハウと船井流経営法を駆使し、数多くの企業の業績アップを実現してきた。机上の空論を嫌い、実現可能性の高い提案のみで構成されたコンサルティングは、多くの経営者から支持されている。同社史上最年少の28歳で部長に昇格し、現在は人材ビジネス専門コンサルタントが所属する部門の責任者を務める。

株式会社船井総合研究所
人材ビジネス支援部 人材ビジネスグループ① チーフコンサルタント
荻原 元輝 氏
おぎわら・げんき/営業マン育成、キャリアコンサルタント研修、WEB募集マーケティングを得意としており、多くの派遣会社・紹介会社で業績アップを実現しているコンサルタント。現在は求人広告事業をメインに手掛けており、新規事業立ち上げのサポートに従事している。

株式会社フロッグ
代表取締役 HRog編集長
菊池 健生
きくち・たけお/2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、退職。2017年、ゴーリストへジョイン。2019年取締役就任。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務める。2021年より株式会社フロッグ代表取締役に就任。

2022年8月22日、人材募集に苦戦する人材会社のための動画活用セミナー「コロナ禍で定番化した新たな採用スタイル『動画採用』のすすめ」が開催された。当日は船井総研の人材ビジネスコンサルタントの山根氏とHRog編集長菊池が登壇。採用市場の現状と採用動画活用のポイントを解説した。今回はその様子をレポートする。

マーケットはコロナ禍以前にまで回復?採用市場の現状とは

セミナーの冒頭では、HRog編集長菊池が採用マーケット動向の現状を解説した。

求人倍率推移(厚生労働省より)

菊池:まずみなさんに知っていただきたいことは、新型コロナウイルスが流行し採用マーケットが冷え込んだ2020年でさえ、有効求人倍率は1.0倍を割ることはなかったということです。

つまり、コロナ禍においても人材不足の状況は基本的には変わっていません。そして徐々に規制が緩和されている今、2022年の求人倍率はさらに上昇フェーズに入っています。

今回は弊社が保有している求人広告掲載データを分析し、さまざまな軸からコロナ禍の求人動向を解説します。

正社員・派遣の求人数はコロナ禍以前まで回復。人材採用競争が苛烈化

転職系媒体・人材紹介 求人出稿件数推移(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:まずは正社員求人や人材紹介の出稿件数を見てみましょう。2022年現在はコロナ前の水準を大きく上回り、右肩上がりに求人数が増加していることがわかります。

また調査したところ、正社員の求人の中でもハイクラスの求人はコロナの影響をほとんど受けることなく純増しているというデータもあります。

派遣 求人出稿件数推移(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:また派遣社員を募集する求人広告媒体の出稿件数も、正社員募集と同じく2022年現在コロナ前の水準にまで回復していました。

2020年の前半は採用ストップがあったものの、2021年の秋頃から徐々に「人が採用できない」という実感を持ちはじめた派遣会社さんも多いのではないでしょうか。

アルバイト・パート 求人出稿件数推移(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:一方で、コロナ禍で採用がガラッと変わったのが「アルバイト・パート」領域です。コロナ初期に大きく求人件数が減少、その後も感染拡大防止の観点から規制の大きかった観光系・エンタメ系のアルバイト求人が特に大きな影響を受けていました。

そして現状、アルバイト系の求人広告媒体の件数はコロナ禍以前の水準まで回復しきっていません。これはコロナ禍で採用手法が変化し、Indeedなどの求人検索エンジンに求人が流れているからだと考えられます。

このように、基本的には年収レンジが高い求人ほどコロナの影響は受けづらくなります。

そのため中途採用や経験者採用など、即戦力を求める企業は、今後さらに「人が採用しにくくなる」可能性が高いでしょう。

地方求人はハローワークの独壇場。首都圏求人は手法が分散傾向に

菊池:次に、エリア別の採用手法の変遷を見ていきましょう。

ハローワーク 出稿件数:都道府県別(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:上記はハローワークに掲載されている求人を、勤務地都道府県別に集計・グラフ化したものです。東京・大阪・愛知などの三大都市周辺が多いものの、他のエリアにも求人があることがわかります。

転職系媒体・人材紹介 求人媒体 出稿件数:都道府県別(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:一方で民間企業が運営している転職サイトの有料求人広告媒体や、人材紹介の求人を勤務地都道府県別に見てみると、東京を中心として首都圏が一極集中になっています。この首都圏一極集中の傾向はアルバイト・パート求人や派遣社員向け求人にも同様に見られます。

Wantedly 出稿件数:都道府県別(株式会社フロッグ HRogチャートより)

菊池:Wantedlyなどでは首都圏一極集中の傾向がさらに顕著です。主要都市圏であっても、東京以外の都市ではまだまだハローワークを中心に採用活動が行われていることがわかります。

一方で求職者の仕事探しのあり方は、SNSの登場によって飛躍的に進化しています。TikTokやInstagramなどで仕事を探すことは決して珍しいことではなくなりました。

新しい採用手法が浸透しにくい地方でも、新しい採用手法に取り組むことで採用競合に一歩リードできるのではないでしょうか。

2022年に採用のルールチェンジが起きる。採用動画が必要な理由

続いて船井総合研究所の山根氏がこれからの採用の変化と採用動画の重要性を解説した。

山根:私からは今後採用市場に起こるであろうルールチェンジ、求人閲覧単価の上昇についてお話ししたいと思います。

「閲覧単価高騰」の時代へ

山根:採用市場において「閲覧課金」は一般的なものとなりました。求職者に見られようが見られまいが料金が発生する掲載課金型とは異なり、閲覧されて初めて料金が発生する閲覧課金型の求人プラットフォームはコストパフォーマンスが高く、求人企業にとって魅力的な採用手法でした。

しかし近年、この閲覧課金の閲覧単価が高騰しはじめているんです。

閲覧単価高騰の理由の一つは、採用競合の増加です。人材紹介会社の増加や、ATSなどで簡単に自社採用サイトが制作できるようになったこともあり、そこまでリテラシーの高くない企業でも気軽に求人情報をweb上に公開できるようになりました。

山根:そしてもう一つ、日本最大の求人検索エンジンなど一部のサービスで、クリック単価の調整ができなくなってしまいました。設定できるのは日額の予算と大まかな方針の設定だけです。この仕様変更により、対策が出来ないままだと最低でも2〜3割、採用難度が高い職種の場合2〜3倍にまで単価が高騰してしまうことも考えられます。

今後の人材募集戦略のカギは「応募率を高めるUI・UX」

山根:応募数を増やすためのロジックは「閲覧数を増やす」か「応募率を上げる」、この二つしかありません。そして先ほどもお伝えした通り閲覧単価が高騰していく中で、閲覧数を上げることに力点を置いた採用活動は今後難度が上がっていくと考えられます。

なので今後は「応募率をいかに上げるか」が採用戦略のセオリーとなるでしょう。そして応募率の改善施策として一番効果があるのがUI・UXの改善、すなわち「ユーザーが快適に情報をインプットできるコンテンツを提供すること」。そしてその肝となるのが動画活用になります。

不動産業界が物件紹介に動画を使ったり、観光業界がホテルツアーや観光地の動画を積極的に出して拡散したりするように、他の業界ではすでに動画を活用したマーケティングが一般的なものとなっています。今後人材業界でも求職者が快適に情報をインプットできる手段として、採用動画が広まっていくのではないでしょうか。

採用動画コンテンツのポイント

最後に、船井総合研究所の荻原氏がこれからの採用動画のポイントを解説した。

動画制作で意識したい5要素

荻原:私からは動画活用時に必須となる5要素についてお伝えします。

動画活用の5要素①|構成

荻原:最終的に視聴者へ伝えたいキーメッセージは何かを明確にして、それが伝わる構成を考えましょう。「1日の仕事の流れ」「求める人物像」「従業員のパーソナリティー」など、企業によって伝えたいことは異なるはずです。

SNSなどを参考にすれば良質な採用動画コンテンツは必ず見つかると思うので、それらを参考にしながらテンプレート化していくのがおすすめです。

動画活用の5要素②|情報量

荻原:視聴者が視覚的に処理できる情報量に収めることが重要です。

アニメーションが多過ぎる、字幕がすぐに消えてしまうなど、頭に残らない情報になってしまっては意味がありません。あくまでも情報を伝達することを意識しましょう。

動画活用の5要素③|長さ

荻原:視聴者は動画の冒頭数秒で視聴するかどうかを判断すると言われています。長すぎる動画は最後まで閲覧されないことも多いです。冒頭でどれだけ視聴者の心を掴むこと、また30秒以内に魅力的な情報を伝えることを念頭に置いて動画を作成しましょう。

動画活用の5要素④|サイズ

荻原:現在、動画視聴者が利用しているデバイスの80~90%がスマートフォンと言われています。従来の横長サイズの動画ではなく、スマホで見られることを意識した縦長動画のプラットフォームも一般的になりつつあります。

なので動画を配信する上でも、スマートフォン上で見やすいものになっているかを確認しましょう。デバイスごとに最適な画面サイズで配信できているかどうかは最低限意識したいところですね。

動画活用の5要素⑤|音

荻原:「音がなくとも伝わる動画になっているか」がポイントです。通勤中や音を出してはいけない空間で開くこともある中、聞こえてる人にしか伝わらない情報があるのはもったいないと思います。字幕をきちんとつけるなど、音がなくても成立する動画にする工夫をしてみてください。

採用で動画活用を進める3つの型

荻原:また、採用で動画活用を進める際の選択肢についてもお伝えします。

オウンドメディア型

荻原:オウンドメディア型とは、自社の採用ホームページに動画を掲載して応募率を高める活用方法です。

オウンドメディア型のメリットは、短期的な効果の出やすさ。応募率を改善させたい求人ページから優先的に動画を制作・掲載すれば良いので、比較的取り組むハードルが低いことです。

SNS型

荻原:TwitterやInstagram、Facebookに動画を掲載することで母集団形成をする方法です。フォローの仕組みがあることで、転職潜在層を効率的に集めることができます。

SNS型のポイントは、運用コストを下げること。オリジナルの構成にこだわっていると、SNS運用担当者の負担はどんどん増えてしまいます。他社のフォーマットは積極的に活用していきましょう。

プラットフォーマー型

荻原:人材会社さんの中は、自社の案件を集約した求人メディアのようなものを持っておられるところもあるかと思います。そういったプラットフォームでも、動画を効果的に活用できます。

プラットフォーマー型のメリットは、募集経路を他のメディアに頼らなくて済むため、人材募集コストを抑えられること。またプラットフォームを立ち上げることで、新たな収益源にも繋がります。

多くの求職者を募集する必要がある人材会社さんには、ぜひ動画掲載枠がある求人プラットフォームを立ち上げることをおすすめします。

荻原:ただ、実際に動画を活用したプラットフォームを作成するにはかなり工数がかかってしまいます。そこで、動画を活用した求人メディア「ムビワーク」を共同開発いたしました。「ムビワーク」は、作成いただいた求人原稿から自動で文字を抽出して動画を生成する、完全自動型プラットフォームのパッケージです。

まだまだ採用動画に精通している企業は多くありません。だからこそ、これらの動画マーケティングの成功のセオリーを抑えることで効果的な採用活動に繋がります。

採用を成功させる取り組みとして今後非常に重要な手法となる動画を、今からぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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(鈴木智華)