「レガシー」な士業・管理部門の採用を変革!ブランディングとDX化が今、必要な理由とは

株式会社ヒュープロ
セールス士業事業部 ユニットマネージャー
酒井 陽大 氏
さかい・ようだい/2017年3月横浜市立大学卒業後、株式会社ビーボに入社。新規事業開発や子会社の代表取締役を務める。2021年に株式会社ヒュープロへ入社し、税理士や会計士を中心とする士業業界の法人営業や、キャリアアドバイザーとしてキャリア支援を経験。現在は、士業事業部のユニットマネージャーとして部を牽引。

企業活動において欠かせない存在である士業・管理部門。近年、労働人口の減少や人材獲得競争激化により様々な業界で採用が難化する中、士業・管理部門においても採用につまずく企業が少なくない。その背景には業界特有の「レガシーな採用文化」などの問題が潜んでいるという。今回は、士業・管理部門に特化した採用転職サービス「ヒュープロ」を運営する株式会社ヒュープロに、業界を変革するための同社の取り組みについて伺った。

士業・管理部門が採用に苦戦する理由とは

レガシーな採用文化を持つ士業採用

士業とは、弁護士や税理士、公認会計士など「士」のつく国家資格を有している職業を指す。士業は難易度の高い国家資格に受かった人だけが就くことができ、その業務の独占性は法律で担保されている。そんな士業の人が所属するのが会計事務所や税理士法人などの士業事務所だ。

士業事務所は専門性を強みにした人の集まりである一方、採用に関しては一般的な企業と比べ経験が少なく不得意な傾向にあるという。

「士業事務所は規模が小さいところも多く、一般的な会社のような人事部がないケースも多いです。その場合、採用のご経験の少ない担当の方が手探りで採用活動を行うことになります。士業はスキルがある人の人数によって事務所の収益が決まる労働集約型的なビジネスモデルであり、持続的な発展・成長のためにも採用が必要不可欠です。しかし、不慣れなためになかなか採用がうまくいかない事務所が多くあります」

同社は、士業業界で採用に苦戦する数多くの企業を支援してきた。そんな中、士業業界特有の採用課題に気が付いたという。そのひとつが、採用における「アナログさ」である。

「現代では、求職者はネットで企業の情報収集をするのが一般的です。そのため一般的な企業のほとんどはホームページや採用サイトを採用活動に活用していますよね。しかし士業ではホームページを持っていない事務所も未だにあるのが現状です。ホームページがあっても、採用情報が更新されておらず、求職者が見てもどんな事務所なのか伝わりにくい事務所も散見されます。

また、求職者は口コミなどの情報を見て企業の判断をしますが、士業ではそういった情報がブラックボックスになりがちです。小規模な事務所が多く、口コミを投稿すると誰が書いたのかある程度察しがついてしまうため、積極的に投稿されないんです。ネット検索してもホームページがない、口コミすら出てこない事務所では、求職者が不安になってしまうのも仕方がありません」

士業業界特有の採用課題は、デジタル化が進んでいない点だけではない。専門性の高い業界の性質として、「求人検索の効率の低さ」が問題になっているという。

「現在、特定の士業の求人情報がまとまっているサービスはほとんどありません。総合型の転職サイトで求人を探しても上手くヒットせず、適切なマッチングがしづらい状況になっています。例えば『税理士』と検索すると『税理士の対応をしていた経験』などのノイズが混ざってしまうんです。結果求職者は、専門性のあるエージェントにいくつも登録しなくてはならず、仕事探しの大きな負担となっています」

こうした採用課題が要因となり、採用に難航する士業事務所が少なくない。そんな事務所の多くが今、人手不足による経営の危機に陥っている。

「近年、後継者がいなくて頭を抱える事務所が増えています。事務所内の人員が高齢化し、採用も上手くいかず、クライアントを今後引き継ぐ人がいないという問題が発生しているのです。

また日本全体で企業数が増える中で、会計士や税理士の需要は高まる一方です。このニーズに対応するためにも、早急に人員を確保する必要に迫られています」

緊急性と難易度の高い管理部門の採用

経理や人事、法務などの管理部門もまた、採用に苦戦する企業が多いという。その要因として、採用の緊急性や必然性の高さが挙げられる。

「どこの企業様も、『いかにはやく1名採用できるか』を考えて採用活動をされている印象です。管理部門の人員が急に退職してしまい、今すぐに人材を確保しないと会社を継続できないケースや、IPOに伴いすぐに必要人員を確保しなければならないケースなど、事業を維持・拡大するにあたって『今すぐに』採用をしたい企業様が多いです。

しかし、会社の維持や成長のためにはスキルや経験の条件を妥協できないケースが大半です。緊急性が高くても採用要件は下げられない、非常に難易度の高い採用になっているわけです。エージェントである弊社としても、お客様のニーズを深く理解し、細部まで要件を明確化しています。これにより、お客様の要望に最も適した人材を見つけてスピード感をもってご提案させていただいています。根本的な課題を見つけ、解決する。だからこそ我々の介在価値があるのだと考えています」

採用課題に根本からアプローチするヒュープロの取り組み

士業・管理部門に特化した転職サービス「ヒュープロ」を運営する同社は、人材紹介を起点にビジネスを行っている。ただ紹介するだけでなく、業界特有の採用課題の解決にもセットで取り組んでいる点が強みだ。

「人材紹介は、求職者との接点を作るところから始まります。接点づくりのためには、企業側がまず質の高い情報を十分に提供し、求職者に会社について知ってもらわなくてはなりません。その点で、ホームページも口コミもなく情報量が少ない状態では、興味を持ってもらうことすらできないんですね。そのため弊社では、レガシーな採用文化をもつ企業様に対し、人材紹介の前段階のサポートとしてブランディングや採用戦略を設計するところから支援を行っています。

そもそも、士業はどの事務所も業務が似ているため、普通に求人票を作っても他事務所と差別化するのが非常に難しいんです。そんな中で求職者の方に魅力を感じてもらうには、企業の強みを整理し、適切な切り口で求職者に訴えかける『ブランディング』が必要不可欠です。私たちは各企業様と魅力や強みを一緒に考え直し、どうしたら他の企業と差別化できるのか、どんな見せ方ならより求職者を惹きつけられるかを提案しています」

そうして見つけた魅力は、同社の運営するオウンドメディア「Hupro Magazine」で発信される。記事を書く上で大切にしているのは、求人票だけでは伝わらないその会社の空気感を伝えることだという。

「求職者の方から、事務所様に対し『ホームページがなくて不安』や『労働環境について詳しく知りたい』『代表の先生のお人柄・雰囲気をもっと知りたい』などのお声を頂くことが多々ありました。それを受け、『Hupro Magazine』では不安をなるべく払拭できるように、働く人の人柄や温かみ、会社の雰囲気が伝わるような記事を執筆しています。実際に求職者の方から『会社の雰囲気が伝わり応募のきっかけとなった』とお声を頂くこともあり、手ごたえを感じています」

もちろん、ホームページでの発信も忘れない。

「弊社では企業の魅力を映し出す鏡としてのホームページ作成のご支援も行っています。デジタルに明るくないお客様も多いため、時には『なぜそれが必要なのか』の説明から、包括的なDX支援をさせていただいています。

例えば最近では、コロナ禍の影響もありオンライン面接への対応が急務になったため、その導入支援も行いました。オンライン面接に挑戦したいけど、Zoomを一度も使ったことがなくやり方が分からないとお困りの企業様には、初期設定の段階からフォローさせていただくこともあります」

また同社は現在、求める人材に直接アプローチできるダイレクトリクルーティングのサービスの開発も進めている。

「ダイレクトリクルーティングでは、求める要件に合う人材を探すためにデータベースがどれだけ充実しているかが肝になってきます。その点で、特定の領域で収集し続けたデータベースにはそれ自体にとても意味があります。

現状、会計や税務領域に特化したデータベースは市場に多くはありません。弊社は士業・管理部門に特化してサービスを展開してきた分、この領域に特化した人材のデータベースが蓄積されているところが強みです。このデータベースを活かし、人材紹介以外にも企業様に新しいマッチングの手段を提供していけたらと思っています」

士業・管理部門をあたりまえの選択肢に

ここまで士業・管理部門の採用の難しさについて触れてきたが、実は採用側の問題だけではなく、人材の純粋な減少も人手不足に拍車をかけている。士業においては、税理士の受験者数、合格者数は年々減っており、管理部門でも売り手市場が慢性化している。酒井氏はこの二領域の重要性や魅力を次世代に伝えていく使命感を感じていると語る。

「士業・管理部門はどちらも企業経営を円滑に運営する上で絶対に欠かせない存在です。

税務・法務において顧問先は必須ですし、会社ごとに労務や経理も必ず存在していないと経営が回りません。縁の下の力持ちとして各企業の経営のバックを支えている士業・管理部門領域が脆くなってしまったら、国際的な環境の中での日本企業の立ち位置も失われていってしまいます。

その重要性がもっと認知されるように発信していくのが私たちの使命です。士業や管理部門が職業の選択肢としてもっと『あたりまえ』になるように、積極的に働きかけていく必要があると感じています」

その取り組みのひとつとして、同社は2023年6月24日に会計・税務領域に特化した就活イベント、『Finance Career Forum 2023』を開催した。

「会計領域に特化した企業様と候補者様が直接出会う機会はこれまでほとんどありませんでした。領域に特化した人を集められる弊社の強みを活かして、学生さんが士業・管理部門をもっと身近に感じられる機会を作れたのではないかと思います。

こういった取り組みを通し、商社やメーカーが学生さんに普通に志望されるように、新卒段階から士業・会計領域などのファイナンス業界も就活の軸として認知されるようになってほしいと思っています。

私たちは今後も、士業・管理部門の魅力を伝え続けていきます。まずは人材紹介のサービスを通じてこの業界に携わらせていただき、引き続き根本からの採用課題解決のためのデジタル化の支援や、違う方法でのマッチング機会の提供を模索していきます」