【HRog決算解説】エン・ジャパン株式会社の2025年3月期第3四半期決算から見える人材業界の最新トレンドは?

エン・ジャパン株式会社の2025年3月期第3四半期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすく解説し、業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!

2025年3月期のエン・ジャパン決算一覧はコチラ

2025年3月期第3四半期(当記事)
2025年3月期第4四半期(5月頃発表予定)

一目でわかる! 決算情報のグラフィックまとめ

エン・ジャパンの2025年3月期第3四半期の決算における売上高や純利益の増減率とその要因について、グラフィックで分かりやすくまとめました。

もう少し詳しく! 今期セグメント別の業績は?

エン・ジャパンの第3四半期の業績を、セグメント別にもう少し詳しくまとめました。

主要セグメント・サービスの業績について

出典元:決算説明資料(p.14)

HR-Tech engage

投資フェーズに位置付けられているHR-Tech engageセグメントは、求職者向けの求人情報提供やマッチングサービスを展開しています。

広告宣伝費の積極投資により、求職者会員数と有料求人数が増加し、売上高は69億円(前年同期比 +40.7%)となりました。投資効率の向上により広告宣伝費を抑制した結果、営業損益は20億円となり、前年同期の32億円と比較すると赤字幅は縮小しました。

人財プラットフォーム

同じく投資フェーズに位置付けられている人財プラットフォームは、企業向けに求職者とのマッチング支援を行うサービスを展開しています。

積極的な投資により利用企業数と求人数が増加し、売上高は59億円(前年同期比13.1%増)となりました。広告宣伝費の効率化が進んだことで費用も削減され、営業利益は8.2億円(前年同期は2.7億円の損失)となりました。

国内求人サイト

国内求人サイトセグメントは、「エン転職」や「エン派遣」など、国内向けの求人情報サイトを運営しているセグメントです。

エン転職ではengageとの組織統合により掲載領域を絞ったため掲載件数が減少しました。その結果、売上高は184億円(前年同期比 -14.2%)営業利益は49億円(前年同期比 -12.3%)となりました。

国内人材紹介

国内人材紹介セグメントは、「エン エージェント」や「エンワールド・ジャパン」など、人材紹介サービスを提供するセグメントです。

エンエージェントにおいて新卒採用を強化し増員しましたが生産性の向上にはつながらず、売上高は73億円(前年同期比 +0.7%)と微増にとどまりました。増員により人件費が増加し、営業損益は0.6億円の損失計上(前年同期は8.2億円の利益計上)となりました。

国内その他

国内その他セグメントは、適性テストや入社後活躍フォローサービス、新規事業開発など、企業の人材活用を多角的に支援するセグメントです。

営業支援事業の「エンSX」と活躍定着支援事業が成長し、売上高は37億円(前年同期比+48.7%)と大幅に増加しました。営業利益は採用管理システム「ゼクウ」の好調が寄与し、5.4億円(前年同期は0.2億円)となりました。

今期の業績予想について

出典元:決算説明資料(p.3)

同社は収益拡大を目指し大規模な組織統合を実施しましたが、営業戦略の再構築や業務調整に想定以上の時間を要し、「engage」「エン転職」の売上高・営業利益が計画を下回る見込みになったことから、2025年3月期の連結業績予想を下方修正しました。

売上高は6,580億円(前期比 -2.8%)、純利益は73億円(前期比 +75.2%)での着地を見込んでいます。

今期決算資料の注目トピックは?

出典元:決算説明資料(p.18)

HR-Tech engageセグメントでは、MAU(月間アクティブユーザー)を以外のKPIが順調に推移。特に求職者会員数は前年同期比+52%、有料求人数は+63%と大きく増加していました。

出典元:決算説明資料(p.20)

人財プラットフォームのKPIもすべて順調に推移。特に利用企業数と求人数は前年同期比+60%と大きく増加しました。

出典元:決算説明資料(p.19)

またミドルの転職が売上と営業利益をけん引し、当第3四半期累計期間の営業利益が前年同期と比べて黒字化しています。

出典元:決算説明資料(p.29)

また同社は、中期経営計画に基づき来期以降の株主還元を、固定配当から配当性向50%にするとしています。

中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)では、この5年は投資事業と既存事業を並ぶ規模にする期間であり、engageとAMBIへの積極投資をすることで売上高、営業利益ともに2倍強の水準まで引き上げるとしています(pp.14~15)。23年3月期から25年3月期(当期)は中計前半で先行投資に振り切る期間であり、中計後半に入る来期からの利益リターンが見込まれています(p.16)。

まとめ~人材業界の最新トレンドは?~

エン・ジャパンの2025年3月期第3四半期決算では、HR-Tech engageの売上高が前年同期比40.7%増と成長し、人財プラットフォームも前年同期比で黒字化を達成しました。新領域への投資が着実に成果を上げていることが伺えます。

売上・利益の面では一時的な落ち込みも見られましたが、これは期初に実施した大規模な組織統合による影響が大きいようです。今回の統合は「オペレーションの統一」(25年3月期第2四半期 決算説明資料,p.12)と「経営基盤の強化」(決算短信,p.4)を目的としたものであり、長期的な成長に向けた布石と捉えることができます。

また、中期経営計画では、投資事業と既存事業の規模を並ぶ水準に引き上げることを掲げており、来期以降の利益成長が期待されます。さらに、配当性向を50%にするなど、株主還元の強化にも注目が集まるでしょう。

長期的な成長戦略に向けた準備が着々と進んでいるエン・ジャパン。HRog編集部では引き続き、その動向を追っていきます!

2025年3月期のエン・ジャパン決算一覧はコチラ

2025年3月期第3四半期(当記事)
2025年3月期第4四半期(5月頃発表予定)

【参考URL】
エン・ジャパン25年3月期第3四半期 決算短信
エン・ジャパン25年3月期第3四半期 決算説明資料