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【HRog決算解説】パソナグループの2025年5月期通期決算から見える人材業界の最新トレンドは?

株式会社パソナグループの2025年5月期通期決算が発表されました。この記事ではその決算・IRの内容をわかりやすくまとめて分析・解説し、人材業界の最新トレンドに迫ります。ぜひチェックしてください!

2025年5月期のパソナ決算一覧はコチラ

2025年5月期第2四半期
2025年5月期第3四半期
2025年5月期通期(当記事)

一目でわかる! パソナ決算情報のグラフィックまとめ

パソナの今期決算について、売上高や純利益の増減率とその要因をグラフィックで一目でわかるようまとめました。

連結子会社ベネフィット・ワンの株式売却によるアウトソーシングセグメントの除外と、BPO大型案件のピークアウトなどが主な減収要因となりました。この減収に伴う売上総利益の減少に加え、人件費上昇や成長領域への先行投資による販管費の実質的な増加、そして大阪・関西万博出展関連費用の特別損失計上が最終的な赤字へと影響。来期は人材需要の拡大、各事業収益の改善および全社的なコスト見直しを進めることで、黒字転換を見込んでいます。

もう少し詳しく! 今期セグメント別の業績は?

パソナの今期決算について、主に決算短信をもとにセグメント別の業績や業績予想について詳しくまとめました。

主要セグメント・サービスの業績について

出典元:決算説明資料(p.7)

HRソリューション事業

パソナグループの主要事業であるHRソリューション事業は、以下のサービスを展開しています。

・BPOソリューション(委託・請負)
・エキスパートソリューション(人材派遣)
・キャリアソリューション(人材紹介・再就職支援)

BPOソリューションは、大型受託案件のピークアウト影響が続いたことにより減収減益となりました。しかし、デジタルテクノロジーを活用したX-TECH BPO領域でのDX支援や、AIエージェントを組み合わせた新たなBPOサービスの提供が拡大し、粗利率は改善。

エキスパートソリューションも、コロナ禍での特需終了や一部企業の契約縮小により稼働者数が減少したことで減収減益となりましたが、2025年4月以降は派遣稼働者数が前年を上回る回復基調にあり、派遣料金単価も上昇しています。

キャリアソリューションはハイキャリア領域での安定した需要継続に加え、再就職支援事業の市場が拡大したことで増収増益となりました。

HRソリューション事業全体では、売上高は2,865億(前年同期比3.7%減)、セグメント利益は148億円(前年同期比5.2%減)となりました。

その他事業

パソナグループでは他にもこれらのソリューションを提供しています。

・グローバルソリューション(海外人材サービス)
・ライフソリューション(子育て支援、介護等) 
・地方創生・観光ソリューション

グローバルソリューション事業は、北米地域でのBPOサービスやHRコンサルティング、人材紹介の伸長に加え、アジア地域での人材需要好調により増収増益となりました。

ライフソリューション事業は、受入れ可能人数の多い施設の開設や保育施設の運営補助金の増加などにより増収となりましたが、増員や保育士の処遇向上に伴う人件費等のコストが増加したため、営業利益は赤字に転換しました。

地方創生・観光ソリューション事業は、インバウンド客の増加や、ハローキティ関連施設の来場者増加により増収となりました。原材料の高騰や人件費増加があったものの、減価償却費の減少などにより営業損失の赤字幅も前期から縮小しました。

来期の業績予想について

出典元:決算説明資料(p.22)

パソナは来期から黒字転換を見込み、売上高3,300億円(前期比6.7%増)、営業利益25億円、純利益5億円での着地を予想しています。

業績予想の根拠について

①市場の追い風
景気回復が続く前提で、企業の採用意欲は維持、拡大と見込み、人材派遣や人材紹介、B再就職支援ニーズ等の需要拡大を想定。

②BPOソリューションの改善
大型受託案件のピークアウトで前期並みの減収影響を想定するも、BPOの需要自体は堅調と見込みつつ、オペレーション効率化で粗利率の改善に取り組む。

③地方創生・観光ソリューションの強化
インバウンドや万博開催の影響で観光客が増加しているため、集客/ブランディング/体験価値向上を強化し収益の拡大を見込む。

今期決算資料の注目トピックは?

出典元:中期ビジョン(p.3)

パソナは決算発表タイミングに合わせて、同グループ初となる中期ビジョンを発表しました。万博パビリオンのテーマでもある「NATUREVERSE」の実現を長期VISIONとして掲げ、既存事業を基盤にあらゆる人々の「からだの健康・こころの健康・社会の健康」が実現した世界を目指すとしています。

出典元:中期ビジョン(p.10)

その具体的な事業戦略として、①BPOソリューションの高付加価値化、②地方創生・観光ソリューションの深化、③新産業の創造を掲げています。

地方創生・観光ソリューションでは「地方の持続可能な成長モデルの確率」を基本方針に、顧客戦略・ブランディング・体験価値の向上といった事業価値の最大化を目指し、2030年5月期は売上高200億円(今期実績:71億円)、営業利益20億円(今期実績:▲19億円)を目標とします(中期ビジョン,p.26)。

出典元:中期ビジョン(p.16)

同グループの主力事業であるBPOソリューションについては、「X-TECH BPOへの進化と専門分野の拡大」を基本方針に、2030年5月期は売上高1700億円(今期実績:1372億円)、売上総利益率24%(今期実績:21.3%)を目標とします。

出典元:中期ビジョン(p.41)

また、事業戦略以外の重点戦略として人的資本の強化も挙げられています。上記の事業戦略達成のため、社内における高度な専門性を持つエキスパート人材の割合を13%から20%に、新たな付加価値を創造するDX人材の育成数を1,200人から3,000人まで引き上げることを目標にしています。

まとめ~人材業界の最新トレンドは?~

2025年5月期第3四半期の決算タイミングで、創業50周年を節目に創業者である南部代表の退任を発表したパソナグループ。新体制のもと発表された通期決算では同グループ初の中期ビジョンも発表され、「次なる50年」に向けた動きが本格化したことが伺えます。

中期ビジョン「PASONA GROUP VISION 2030」では、既存事業の深化と新規産業創造を両輪とし、特にBPOソリューションにおける専門性の強化やDX推進、そして地方創生・観光ソリューションの強化に重点を置いています。

そして、これらの付加価値の高いソリューションを提供するためには、社内においても専門性の高い人材を育成・確保することが不可欠です。パソナグループは人的資本の強化にも注力し、高度専門人材やDX人材の育成を戦略の根幹に据えています。

生成AIの進歩で様々な業務の自動化が進み、より高度で専門的なソリューションが求められるようになりつつある昨今。それに応える戦略を明確に打ち出したパソナグループの動向に、HRog編集部では引き続き注目していきます!

2025年5月期のパソナ決算一覧はコチラ

2025年5月期第2四半期
2025年5月期第3四半期
2025年5月期通期(当記事)

【参考URL】
中期 VISION「PASONA GROUP VISION 2030」
2025年5月期通期 決算短信
2025年5月期通期 決算説明資料