
2024年の人材業界は、深刻な人手不足から採用意欲が旺盛なことを背景に、多くの企業で増収増益となりました。また、観光業やエッセンシャルワーク、高卒採用など各領域に特化した企業が上場し、業界全体が活発な動きを見せた1年でした。
それでは、2025年の人材業界はどのような1年となったのでしょうか。各社の通期決算をもとに売上高ランキングを作成し、トレンドをまとめたレポートをお届けします!
人材業界の売上高ランキングは、1位ランスタッドが、2位がアデコ、3位がリクルート、4位がマンパワーグループ、5位がパーソルとなりました。
売上規模で上位に位置するランスタッドやアデコといったグローバル人材企業は、世界的な採用需要の減速や景気変動の影響を受けながらも、引き続き巨大な売上規模を維持しています。特にアデコは、売上が減少する中でも比較的安定した営業利益を確保していますが、ランスタッドは売上・利益ともに減少しており、グローバル市況の変動リスクが業績に直結しやすい構造も改めて浮き彫りになっています。
リクルートホールディングスは3位となっていますが、その営業利益は4,900億円超と4桁水準に達しており、人材業界の中で圧倒的な収益力を記録しています。2025年3月期の通期決算ではAIへの注力施策が明確に示され、マッチング機能を強化する求職者向けの「Career Scout」と採用企業向けの「Talent Scout」が発表されました。HRテクノロジー事業においては新しいプログラムコードの3分の1がAIによって書かれており、米国においてはエンジニアの人員削減も発表されるなど、テクノロジーを活用し高収益体制を実現していることがわかります。
また、リクルートは2025年3月末でタウンワーク等の求人メディアの直接掲載を終了しました。「Simplify Hiring」の戦略を加速するため、2025年4月には人材領域をHRテクノロジー事業に統合し新子会社を設立するなど、Indeedを軸としたガバナンス体制の刷新を進め、同事業の成長戦略を加速させています。
国内の総合人材企業では、パーソルホールディングスも堅調な成長を示しています。同社は従業員数の増加を伴いながら売上・利益を伸ばしており、人材需要の底堅さを背景にスケールを拡大。2025年7月にはグループの事業戦略等を発表する「IR DAY 2025」を開催し、AIを活用したテクノロジードリブンの姿勢を強く打ち出しました。dodaではAIによる求人紹介の割合が増加し、一人当たりの書類選考合格数も2020年から2024年にかけて30%超増加するなど、リクルートと同様にAI活用が成果に結びついていることが伺えます。
1位~10位の企業において唯一非上場のマイナビは、昨年に続き増収増益を達成。売上高は2,000億円を突破しています。
人材業界の主要各社がテクノロジー活用による収益性向上を競う中、大手各社では成長基盤を再構築するための組織体制の抜本的な見直しが相次いでいます。
エン(2025年10月より「エン・ジャパン」から商号変更)は、2025年3月期を大きな転換期と位置付け、創業者の越智氏が社長に復帰する新体制へと移行しました。同社は、これまで重点投資してきた「engage」への過度な集中が既存サービスの改善を後回しにしたという反省に立ち、主力である「エン転職」の再強化を柱とした戦略方針の転換を打ち出しています。
ディップにおいても組織体制の変更が行われました。同社は2025年6月より、これまでの地域・企業規模別だった営業体制を「業種別」へと変更し、業種特有の課題に深く寄り添うソリューション能力の強化を図っています。
この新体制下でディップが特に注力しているのが、2024年10月にリリースしたスポットワークサービス「スポットバイトル」です。冨田社長自らが指揮を執る「第3ソリューション営業本部」の下で、既存の「バイトル」とのセット販売や代理店売上の拡大を推進。さらに、業界の健全化を目指す「オセロプロジェクト」を始動し、事業主都合のキャンセルに対する100%補償を規約に盛り込むなど、後発ながらも信頼性を武器に急速に掲載案件数と就業者数を伸ばしています。
このスポットワーク市場において、先行者として圧倒的な成長を続けているのがタイミーです。深刻な人手不足を背景に、物流・小売・飲食の主要3業界だけでなく、政策的な支援も背景にある介護業界へと領域を急拡大させています。同社は単なるマッチングにとどまらず、現場の「受け入れ負担」を軽減するためのフィールドマネージャー配置や、物流領域のBPOに強みを持つ企業の買収など、顧客企業の運営に深く踏み込んだソリューションを提供しています。
41位~70位の企業では、特定の領域への特化や、既存の強みを活かした人材業界への本格進出といった戦略の先鋭化が加速しています。
まず、独自の強みを活かして人材領域での存在感を高めているのが、スキルシェアプラットフォームを展開するココナラです。同社は120万人を超える圧倒的な人材データベースを基盤に、ITフリーランス向けエージェント「ココナラテック」や、実務サポートを行う「ココナラアシスト」を立ち上げ、人材業界への進出を本格化させています。
また、IT人材領域への特化戦略を鮮明にしているのが、売上高ランキング42位のギークスです。同社はゲーム事業などの他事業から撤退し、経営資源をIT人材事業に集中させる「新生ギークス」として再スタートを切りました。ROXXにおいても、主力事業であるエッセンシャルワーカーに特化した転職プラットフォーム「Zキャリア」への集中戦略を強化すべく、リファレンスチェックサービス「back check」をエンに売却しました。
その一方で、エンは2026年4月に「engage」事業を分割子会社化し、株式の85.1%をカカクコムに売却すると発表しました。カカクコムは求人検索エンジン「求人ボックス」を通じて人材業界で確固たる存在感を築いていますが、今回の事業取得により支援領域を大きく広げることで、業界内での影響力も更に強まっていくことが予想されます。
2025年3月18日に上場したTalentXは、リファラル採用やタレントプールの構築を通じて、企業のタレントアクイジションを支援するHRテック企業です。タレントアクイジションとは、マーケティングの考え方を取り入れながら、中長期的に転職潜在層へアプローチしていく人材獲得の概念を指します。同社の上場は、人材獲得を短期的な充足で捉えるのではなく、企業成長を見据えた経営戦略として捉えることの重要性が高まっていることを示唆していると言えるでしょう。
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engage事業の売却について
2025年の人材業界を振り返ると、深刻な人手不足という構造的な環境は変わらない中で、多くの企業が共通して「AI活用」と「事業ポートフォリオの見直し」に取り組んだ1年でした。
リクルートやパーソルに代表される大手各社では、AIを前提とした業務設計が進み、マッチング精度や生産性の向上が実績として表れています。また、リクルートやエン、ディップのように、従来の成長モデルや組織体制を問い直し、注力領域を明確にする動きも広がりました。
さらに2025年は、社内改革にとどまらず、企業間でも再編が動き始めた年でした。カカクコムによるengage事業の取得は、採用・求人領域が単一サービス競争から、複数事業を束ねたポートフォリオ競争へと移行しつつあることを示しています。
本格化したAI活用や事業ポートフォリオの再設計が、各社の業績や成長スピードにどのような影響を与えていくのか。HRog編集部では、2026年も人材業界の動向を読み解き、最新トレンドを発信していきます!
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