今年も人材業界各社の通期決算がほぼ出揃いました。昨年に引き続き、各社の売上高・営業利益から人材業界をまとめたレポートをお送りします。
昨年度はこちら。
昨年度は決算月によって、新型コロナウイルスの影響を受けた企業と受けなかった企業で差が表れていましたが、今回は全ての企業がコロナ禍での決算となっています。大打撃を受けた企業と業績を伸ばした企業、その違いはどこにあったのでしょうか? ご覧ください。
総合サービス企業
総合人材サービスでは、リクルートホールディングス、パーソルホールディングスは第4四半期に、パソナグループでは第3四半期~第4四半期に新型コロナウイルスの影響を受けました。
リクルートホールディングスは、上半期に新型コロナウイルス感染拡大を受けて全ての事業セグメントが減収となり、広告宣伝費や販売促進費などの大幅なコスト削減を行いました。第4四半期には米国や欧米各国で経済状況の改善や規制緩和が行われ、採用活動や求職活動が回復したため、「Indeed」や「Glassdoor」を展開しているHRテクノロジー事業では増収しました。一方で、売上収益の約30%を占める「リクナビ」などのメディア&ソリューション事業が第4四半期に日本国内で発出された緊急事態宣言などの影響を受け、グループ全体の営業利益は昨対比79%となりました。
パーソルホールディングスは主力の人材派遣事業において、2020年4月に同一労働同一賃金制度が施行され人材派遣の請求単価が上昇したことに加え、BPO領域での受託案件の獲得が進み、昨対比3.9%増の増収となりました。一方で、2019年にアルバイト・パート求人メディア「an」が終了した影響と、新型コロナウイルス感染拡大による企業の採用控えが継続したことにより、収益性の高い就職サービス事業において減収となり、グループ全体では昨対比減収減益の着地となりました。
パソナグループは各事業でコロナ禍の影響を受けつつも、BPOサービスの拡大と再就職支援事業の伸長により、売上高は昨対比3%増の3,345億円となりました。またコロナ禍での営業活動抑制やオペレーションの効率化でコスト抑制が進み、営業利益は昨対比189%の199億円となっています。
外資系企業3社においても、今回は各社第3四半期を中心に新型コロナウイルスの影響を強く受けており、減収減益の結果となりました。
求人媒体企業
新型コロナウイルスの影響を受け、求人広告出稿の減少や、転職・就活イベントの中止などが相次いだことで求人メディア・人材紹介企業は大きな影響を受けました。特にアルバイト系求人媒体「バイトル」を運営するディップや飲食業界特化の「クックビズ」などでは、緊急事態宣言に伴う飲食店の営業自粛が向かい風となり、大幅な減収減益となっています。
一方で、IT業界中心の転職サービス「type」を運営するキャリアデザインセンターは、リモートワークの普及をきっかけにIT人材の採用需要が上昇したことでIT派遣事業の取引社数を伸ばしました。同じくITやWeb業界に強い転職サイト「Green」を運営するアトラエも大幅な増収となっており、求人メディア運営企業の中でも得意とする業種・職種によって売上への影響が分かれる結果となりました。
また、サーキュレーションのプロシェアリング事業やビジョナルの提供する「BizReach」でも売り上げが伸長しています。コロナ禍で景気の先行きが見通せなくなり、社員の教育コストを削減したい企業が増えたこと、ビジネスモデルの転換に伴い即戦力人材の需要が高まったことなどが、プロフェッショナル市場の好調な推移に繋がったと考えられます。
人材派遣サービス企業
派遣業界では、景況悪化の煽りはあったものの製造業が比較的早くに回復したことを受け、求人メディアや人材紹介企業と比較して好調な傾向が見られました。特に技術者派遣の領域では、需要が伸びているIT・DX業務や、情勢に関わらず一定の需要がある建築関連業務、科学・バイオ関連業務などの底堅い顧客需要に支えられ、多くの企業の業績は堅調に推移しました。
医療・介護・保育分野でも需要が拡大しました。ライクは不安定な情勢の中でも安定したサービスを供給できるよう運営体制を強化する一方で、認可保育園の新規開設を控えることで開設コストを抑え、営業利益昨対比181%の36億円を達成しました。
また、ゲーム業界向けの人材派遣を行うコンフィデンスは、巣ごもり需要によるゲーム市場の成長を受けて増収増益、17%という高い営業利益率で着地しました。
まとめ
全ての企業が少なからず新型コロナウイルスの影響を受けた2021年度。採用の縮小やイベントの中止などにより業績にダメージを受けた企業がある一方で、生活様式やビジネスモデルの変化に伴って新たな需要が生まれた領域もありました。
特に減収が多かった求人メディア・人材紹介企業に対し、製造業や技術職、医療関係の案件を扱う派遣業界の減収は限定的であり、業態の特性による違いが顕著に表れたと言えます。また、景況感の悪化に対して素早くコストカットなどの対処ができた企業は堅調な業績を維持していました。
アフターコロナではどんな人材業界地図となるのか、来年度も引き続き注目していきます。
・総合サービス企業
リクルートホールディングス決算短信
パーソルホールディングス決算短信
パソナグループ決算短信
アデコ 不確実な環境でも業績が堅調
ランスタッド2020年第4四半期及び通期決算発表
マンパワーグループ決算
・求人媒体企業
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(HRog編集部)