
日本能率協会マネジメントセンターが実施した調査によると、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と回答(※1)。給与と責任が見合わないことや、自分には向いていないという意識を背景に、管理職への昇進を望まない若手社員が増えているといわれています。
一方、管理職になることを望む人にその理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「報酬アップのため」でした。では実際に、管理職になると給与はどれほど上がるのでしょうか。
本記事ではフロッグが保有する求人ビッグデータをもとに、営業職に絞ってレイヤー別の管理職の給与を比較・分析しました。管理職採用・育成に悩む企業の採用戦略や報酬設計の参考にしてください。
目次
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| 管理職レイヤーの定義について 本調査では、求人情報に記載されたキーワードをもとに、求人を以下の4つのレイヤーに分類しました。役職名の表記は企業によって異なるため、「マネージャー」「主任」「部門責任者」など、同等の役割を示す代表的なキーワードを用いて分類しています。 メンバークラス:管理職(リーダークラス・課長クラス・部長以上)に該当するキーワードを含まない求人。 リーダークラス:「リーダー」「主任」「チーフ」「係長」のいずれかを含む求人。 課長クラス:「課長」「マネージャー」「管理職」のいずれかを含む求人。 部長以上:「部長」「事業部長」「部門責任者」「事業責任者」「役員」のいずれかを含む求人。 |
管理職レイヤー別の給与を徹底比較!
営業系求人の管理職レイヤー別の給与を分析する前に、求人市場における管理職求人の割合を確認しましょう。

2026年6月時点では、管理職(リーダー以上)の求人は全体の約11.5%にとどまっており、企業の採用ニーズは現場で実務を担う人材に大きく偏っていました。
特に部長以上などの上位役職求人は約1.7%と、厳選採用が行われていると考えられます。

次に、営業系求人の管理職レイヤー別の給与を見ていきましょう。
給与下限の平均額は、リーダークラスが約35.5万円、課長クラスが約41.1万円、部長以上が約51.3万円でした。役職が上がるにつれて給与水準が高くなっていますが、注目すべきは役職が一つ上がったときの昇給率です。
一つ前の役職と比較すると、給与の平均額は下記のようにアップしていました。
- メンバーからリーダー:約6.5万円アップ(+22.3%)
- リーダーから課長:約5.6万円アップ(+15.7%)
- 課長から部長以上:約10.2万円アップ(+25.0%)
メンバーからリーダーへの昇進は、プレイヤーからチームを率いる立場への変化が評価され約2割の給与上昇が見込まれます。一方、リーダーから課長への昇進は、責任は増しながらも昇給率はやや緩やかでした。
そして課長から部長以上へ昇進する際には、マネジメントだけでなく事業や経営に関与することが期待されており、その責任範囲の拡大が報酬にも大きく反映されていると考えられます。
この給与の上がり幅を、従業員はどう捉えているのでしょうか?
マイナビ転職が実施した調査によると、リーダークラス(係長・チーム長)では「管理職になって良かった」と回答する人は約半数に留まる一方、役職が上がるほど満足度は高まり、部長クラスでは7割強が「管理職になって良かった」と回答しています(※2)。

また「管理職になって良かった」と感じている人の年収中央値は700万円なのに対し、そうでない人の年収中央値は550万円と、明確に年収差がありました。

この「管理職になって良かった」と感じている人の年収中央値700万円を一つの目安とし、月給50万円・賞与2か月分と仮定して、各レイヤーにおける給与の分布状況を深掘りしていきましょう。

営業系求人において年収700万円相当の月給である月給50万円以上の求人割合は、メンバークラスで3.8%、リーダークラスで9.6%、課長クラスで24.9%、部長以上で52.9%でした。
年収700万円相当が多数派になるのは部長クラスからであり、リーダー・課長クラスで700万円に届く求人はまだ少数派であることが分かります。
このことから、業務量や責任が増える一方、部長クラスと比較すると給与の上昇幅が抑えられがちなリーダー・課長クラスでは、「管理職」という役割の魅力や満足度が低くなっている可能性が考えられます。
企業が管理職候補を確保するには、「管理職は割に合う」と感じられる環境づくりが重要です。特にリーダー・課長クラスにおいて負荷や責任に見合った待遇を整え、その先の部長以上のキャリアパスで待遇が大きく向上すると示せる企業が、今後管理職候補の確保・育成において有利になるでしょう。
また注目すべきは、役職が上がるほど企業間で給与のばらつきが大きくなっていることです。リーダークラスは20~40万円台に約9割が集中しているのに対し、課長クラスは30~60万円台、部長以上では40万円台から100万円以上まで幅広く分布していました。
管理職の中でも上位レイヤーほど、企業規模や業界によって報酬差が大きくなる構造になっているようです。
職種別に管理職の給与レンジを比較してみた
続いて、職種別で管理職レイヤーごとの給与の変化を比較しました。その結果、給与の上がり方には職種ごとに違いがあることが分かりました。

営業/企画職では給与の平均額は下記のようにアップしていました。
- メンバーからリーダー:約6.4万円アップ(+22.3%)
- リーダーから課長:約5.5万円アップ(+15.7%)
- 課長から部長以上;約10.8万円アップ(+26.4%)
他の職種と比較すると比較的バランスよく給与が上昇しており、管理職としての責任が増えるたびに、待遇も段階的に改善される職種と言えるでしょう。
一方ITエンジニアは、メンバーからリーダー、リーダーから課長への昇給率がそれぞれ約+8%にとどまる一方、課長から部長以上への昇進では+56.4%と急激に上昇します。IT系職種では中間管理職までは待遇が抑えられ、経営に近いポジションへ昇進すると給与が一気に高くなる報酬体系を取る企業が多いようです。
また、建設/土木では課長への昇進時の昇給率がわずか+2.5%、医療/福祉では部長以上昇進時の平均給与が課長を下回るなど、職種によっては役職が上がっても給与が伸びないケースもありました。
近年は、部下のマネジメントだけでなく、自らも現場業務を担う「プレイングマネージャー」が増えています。リクルートワークス研究所の調査によると、約9割の管理職が何らかのプレイング業務を兼務していました。
職種別に見ると、営業では86.3%、システムエンジニアリングでは88.1%がプレイング業務を担っています。さらに、業務時間の半分以上をプレイング業務に費やしている管理職は、それぞれ35.4%、34.5%に達していました(※3)。

このことから、営業やエンジニアの管理職は、単にチームをマネジメントするのではなく、自ら成果も出しながら組織も率いる働き方が一般化していることが分かります。
このプレイング業務の負担に対して、各職種の給与はどの程度見合っているのでしょうか。
先ほどの調査結果の通り、営業職はプレイング業務を担う管理職が多いものの、役職の上昇に応じて待遇が向上しやすくなっています。プレイング業務とマネジメント業務を両立する負担は大きいものの、マネジメントを担うことへの経済的なリターンを実感しやすい職種と言えそうです。
一方でITエンジニアは、営業職と同程度にプレイングマネージャーが多いにもかかわらず、リーダー・課長クラスにおける給与の伸びは限定的です。そのため「プレイヤーであり続けた方がよい」「管理職になるメリットを感じにくい」と考え、マネジメントスキルではなく専門性を高めるスペシャリスト職を望む人が増えやすい構造になっている可能性があります。
裏を返せば、IT系職種で管理職人材を採用・育成したい企業にとっては、リーダー・課長クラスの報酬や待遇を見直し、プレイング業務とマネジメント業務の両方を担う負担に見合った評価を行うことが、競合他社との差別化につながるかもしれません。
高年収求人が多いのはどの媒体? 媒体別の年収ランキングを調査
最後に、営業系求人の掲載年収の平均額を求人媒体別で比較していきます。

各媒体の営業職求人の年収を比較すると、「ビズリーチ」は843万円と他媒体を大きく上回りました。2位のAMBI(581万円)との差は約260万円と大きな差があり、ハイクラスに特化した求人媒体の中でもトップ人材を対象とした求人が多いことがうかがえます。
一方「AMBI」「エンミドルの転職」「リクルートダイレクトスカウト」の掲載求人の給与は500万円台前半~後半と、ハイクラス転職市場の中でもミドル層の給与レンジで競合していると考えられます。
また総合転職媒体同士で比較すると、営業求人の給与額は「type」が558万円で最も高く、「マイナビ転職」「エン転職」「doda」が続きました。
ちなみに、媒体ごとに給与の記載形式が異なるため、平均月収で算出すると「type」に次いで「doda」が高い結果となっています。

総合転職媒体の平均月給の推移を見ると、すべての媒体で給与水準が上昇していました。2020年の約24.9万円から2026年には約29.1万円へと、約6年間で16%以上伸びています。
媒体別に比較すると、2025年〜26年にかけて「type」の給与額がdodaを逆転していました。また、エン転職も高い給与の伸び率を示して両媒体との差が縮まりつつあるようです。
まとめ
今回の調査では、管理職に昇進すると給与は着実に上昇するものの、その上がり方は役職や職種によって大きく異なることが分かりました。
特に、リーダー・課長クラスでは責任や業務負荷が増える一方で、給与の伸びは部長以上ほど大きくなく、「管理職は割に合わない」と感じる要因の一つになっている可能性があります。
今後、管理職の担い手を確保できる企業とそうでない企業の差は、こうした「昇進後の納得感」をどれだけ設計できるかによって、ますます広がっていくのではないでしょうか。
| 調査概要 【集計対象期間】 月給下限:2026年6月8日に掲載されていた求人 推移グラフ:2021年6月7日~2026年6月8日の各月第一月曜日時点に掲載されていた求人 【集計対象媒体】 主要4媒体:「doda」「type」「マイナビ転職」「エン転職」 ハイクラス媒体:「ビズリーチ」「AMBI」「リクルートダイレクトスカウト」「エンミドルの転職」 【集計対象雇用形態】 正社員、その他 【職種について】 複数の求人媒体の情報をまたいで集計するため、媒体記載の職種カテゴリーを使用せず、独自のキーワードマッピング処理に基づいた職種カテゴリーを使用して求人情報を分類・集計した。またグラフ作成時、同系統の職種は「○○系」と統合した。 |
今回の調査で使用したように、「HRogチャート」では様々な求人媒体の求人データを横断して、媒体・地域・職種など様々な軸で集計できます。時給だけでなく、求人数や広告出稿金額なども調査することが可能です。
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出典元
※1:日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査」2026年8月20日時点
※2:マイナビ「マイナビ転職、「管理職の悩みと実態調査」を発表」2026年8月20日時点
※3:リクルートワークス研究所「プレイングマネジャーの時代」2026年8月20日時点
(鈴木 智華)
