交通費支給の派遣求人が増加 同一賃金対応で

正社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁じた「同一労働同一賃金」ルールの適用が2020年4月に始まることを受け、人材派遣企業各社は交通費の支払いをうたう求人を増やすなど、派遣社員の確保のために前倒しで対応をはじめています。

同一労働同一賃金 (同一価値労働同一賃金) とは

「同一労働同一賃金(同一価値労働同一賃金)」とは、 「同一の仕事(職種)に仕事に対して同一水準の賃金を支払うべき」という考え方のことです。正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差が問題視される中で、2018年6月に政府は同一労働同一賃金の導入を含む「働き方改革関連法」を可決。2020年4月から改正法が施行されることになっています。

待遇差の改善対象には基本給や賞与、通勤費用などの手当などが含まれます。改善方式は「同じ仕事をする派遣先企業の従業員に合わせる方式」と「働く地域や業務内容ごとに国が示す賃金基準に応じて派遣会社内でそろえる方式」の二通りあり、人材派遣企業各社はどのように待遇差の改善するか検討をせまられています。

「交通費支給」含む求人は昨対比153%と大きく増加傾向

以下は派遣求人を取り扱う求人メディアの「はたらこねっと」「エン派遣」「リクナビ派遣」において、過去1年間で出稿された求人広告のうち 「交通費支給」 という文言が含まれるものの掲載件数推移を表したグラフです。8月26日時点で3媒体の合計求人件数は36,944件(昨対比153%)と大きく伸びています。

媒体別に見てみると、はたらこねっとの求人件数は19,528件(昨対比139%)、エン派遣が11,313件(昨対比127%)、リクナビ派遣が6,103件(昨対比539%)と、各媒体で交通費支給の対応をしている求人は増加しており、各社が求職者を確保しようとする様子がうかがえます。また、各媒体ともに「同一労働同一賃金に関する省令・指針」が公布・告示された2018年12月末前後を境に件数が増加していることも分かります。

「交通費支給」を含む求人案件の掲載件数推移
HRogリストのデータを元に編集部作成)

派遣料金への転嫁で派遣元企業の負担は増

人手不足を背景に、エンジニアや医療・介護職など幅広い職種で派遣料金は上昇を続けています。今回同一労働同一賃金ルールの適用へ向けた待遇改善に各社が乗り出したことにより、今後さらなる派遣料金の上昇が予想されます。

派遣先企業の負担が増える中で、今後派遣社員の活用に慎重になる企業も出るかもしれません。働き方改革関連法に関連する求人マーケットの変化に今後も注目です。

【参照URL】
派遣に交通費支給 同一賃金対応、人材会社が前倒し
派遣料金、続く上昇 企業負担重く
働き方改革関連法が成立 参院本会議 
一労働同一賃金特集ページ

(HRog編集部)