アベノミクスの「雇用制度改革」まとめ

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アベノミクス第三の矢の一つとして上げられている雇用制度改革・人材力の強化。
過去3回に渡り廃案となっていた派遣法の改正案が成立する見込みとなるなど、雇用制度改革関連のニュースが出ない日がないほどです。
HRogでも派遣法改正に関するニュースや、労働基準法改正に関するニュースなど、雇用改革に関するニュースを頻繁に取り上げています。
労働関連法や雇用政策の影響が大きい人材業界の方は、その動向に注目しているのではないでしょうか。

そこで今回、HRogでは、改めてアベノミクスの「雇用制度改革・人材力の強化」において計画されている施策や法案について、
簡単な解説と、厚生労働省などが出している公の資料へのリンクをまとめました。
普段見ているニュースをより良く理解するためにも、改めて「日本再興戦略」についておさらいしてみてはいかがでしょうか。

日本再興戦略における「雇用制度改革・人材力の強化」とは?

「日本再興戦略」(下記参考リンクを参照)では、経済のグローバル化、少子高齢化の中で、働き手の量の確保と質の向上に向けた思い切った政策が必要としています。具体的には、

  • 働き方の改革
  • 女性の更なる活躍促進
  • 外国人材の活用

等を実施するとしています。
それぞれの具体的な改革案や政策、そして現在の進捗状況を見てみましょう。

新たな成長戦略 ~「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」~ 日本産業再興プラン
「日本再興戦略」改訂 2015
労働市場改革

働き方の改革

経済のグローバル化や少子・高齢化の中で、働き手の数の確保と、労働生産性の向上を実現するための改革。
失業なき労働移動の実現、多様な働き方の実現を掲げ、「失業期間6ヶ月以上の者の数を今後5年間で2割減少」「転職入職率(パートタイムを除く一般労働者)を今後5年間で9%」をKPIとしています。

労働者派遣法の見直し(6月19日に衆院を通過、現在(8月10日)参院厚生労働委員会で審議中)

雇用維持型から労働移動支援型への転換を図る、雇用制度改革の要の一つ。
衆院通過後も、批判の声も多い本法案ですが、政府・与党は10月1日前の施行を目指しているようです。
詳しくは、厚生労働省のページ、及びHRogのまとめ記事「派遣法改正案2015まとめ」をご参照下さい。

改正のポイント
1.特定労働者派遣事業の在り方について
特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別がなくなり、すべての労働者派遣事業が許可制になる。
2.労働者派遣の期間制限の在り方等について
専門業務等からなるいわゆる26業務(現在は28業務)は、分かりにくい等の課題があることから廃止する。派遣労働者個人単位の期間制限において、3年を上限とする。
無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣については期間制限を撤廃。
派遣先の事業所単位の期間制限を3年とするが、受入開始から3年を経過する時までに過半数労働組合等から意見を聴取した場合には、さらに3年間延長可能とする(その後の扱いも同様)。
3.派遣労働者の均衡待遇の確保・キャリアアップの推進の在り方について
派遣元事業主と派遣先の双方において、派遣労働者の均衡待遇確保のための取組を強化する。
派遣元事業主に計画的な教育訓練等の実施を義務付けること等によって、派遣労働者のキャリアアップを推進する。

労働者派遣法の見直しについて
派遣法改正案2015まとめ
派遣法特集

労働基準法の改正(今国会での成立を断念)

「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2020年までに5割減らす」「年次有給休暇取得率を2020年までに70%以上に引き上げる」を目標に、ワーク・ライフ・バランスの観点から、長時間労働を是正するための改正案。具体的には、

  • 高度プロフェッショナル労働制
  • 裁量労働制の対象拡大
  • 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の引上げ(25%→50%)(2019年4月)
  • 年次有給休暇の取得促進等

等が盛り込まれています。

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)とは?
  • 一定の年収(少なくとも1,000万円)以上であること
  • 職務の範囲が明確で、高度の専門知識を必要とする業務に従事していること
  • 健康確保措置等を講じること

等の要件を満たす場合に、労働時間・休日・深夜の割増賃金等の規定を適用除外とすることができる制度。 「残業代ゼロ法案」等の批判も多い。

裁量労働制とは?

業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に携わる労働者について、労働時間の計算を実労働時間ではなくみなし時間によって行うことを認める制度。
改正案では、対象を広げ一定の専門知識を持つ法人向け提案営業職にも適用する。

労働基準法等の一部を改正する法律案の概要
今後の労働時間法制等の在り方について
裁量労働制の新たな枠組み、フレックスタイム制の見直しについて
法定割増賃金率の引上げ
年次有給休暇の取得促進
「高度プロフェッショナル労働制」の危険性

未来を支える人材力の強化

「人口減少社会において、人への投資が最もリターンがある」との考えに基づいて「主体的な学び」を支援する施策。インターンシップの充実や、セルフ・キャリアドック(仮称)の創設、経験を重ねた中高年齢者の活躍促進など。

未来を支える人材力強化~ いつでもキャリアアップが可能な社会へ ~

予見可能性の高い紛争解決システムの構築等(2015年6月16日、事実上見送り)

不当解雇と判断された際、労働者から申し立てがあれば金銭補償で解決する制度。
不当解雇の抑止力がなくなる等の批判があります。

労使双方が納得する雇用終了の在り方

外部労働市場の活性化

ハローワークをインフラ的役割に据え、民間の人材ビジネスを積極的に活用することで、労働市場全体のマッチング機能を最大化する政策です。
ハローワークの求人情報の開放(2014年9月〜)、求職情報の開放(2015年度中)、求職者に対する民間人材ビジネスへの誘導(2015年11月〜)。

外部労働市場の活性化について
外部労働市場の活性化 【工程表】
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女性の活躍推進

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(今国会で審議中)

301人以上の企業は、

  • 一般事業主行動計画を策定し、厚生労働大臣に届け出なければならない
  • 女性の活躍に関する情報を定期的に公表しなければならない

等、女性の職業生活における活躍を推進するための法案。

女性活躍加速のための重点方針2015 (ポイント)
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案の概要
女性活躍推進法案/格差なく実効及ぼすものに
「女性活躍の見える化」 法律で義務化のインパクト

有価証券報告書における役員の女性比率の記載を義務付け(2015年3月施行)

「上場企業で女性役員1人登用」に意味はあるか

子ども・子育て支援新制度(2015年4月開始)

2017年度末までに約40万人分の保育の受け皿を整備することを目指しての取り組みの一つ。
子ども・子育て支援給付に施設型給付や地域型保育給付を創設。

制度の概要 – 子ども・子育て支援新制度 – 内閣府
おしえて!子ども・子育て支援新制度

子ども・子育て支援新制度、母親の半数以上「理解していない」

育児休業給付を拡大

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育児休業給付金は2013年度まで賃金の50%でしたが、2014年4月から67%の給付となりました。そのおかげが、「育児休業給付」を受け取った男性が、2014年4月から2015年1月までに4227人にのぼり、前年同期と比べ31.8%増えたことが、厚生労働省の集計で判明しています。
とは言え、女性は前年同期比5.6%増の22万191人で、男性は女性の50分の1程度にすぎないそうです。

育児休業給付金が引き上げられました!!
育休給付を受ける男性が3割増えるも女性の50分の1、弁護士「異次元的改革が必要」

男女雇用機会均等法施行規則を改正(2014年7月に施行済)

男女雇用機会均等法施行規則を改正する省令等を公布しました

外国人材の活用

高度な資格・資質を有する外国人材の受け入れを容易に

  • 高度人材ポイント制の認定要件を緩和(2013年12年)
  • 高度外国人材を対象に在留期間無制限の新しい在留資格を創設(2015年4月施行)

人材の活躍強化
~日本の中もグローバル~

高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度

入管法が変わります

外国人技能実習制度の見直し (2015年通常国会に法案提出)

  • 悪質な仲介団体を排除する
  • 受け入れる管理団体を許可制に改める

日本に技能研修に来て日本の印象が悪化する外国人技能実習生が多いようです。立場の弱い外国人を劣悪な条件で働かせている事例が多く、制度を改善する必要があるようです。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案の概要
「日本の印象良かった」97%→来日後58%に激減 ベトナム人技能実習生調査 龍谷大
特別リポート:「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者

国家戦略特区での受け入れ (2015年通常国会に法案提出)

  • 創業人材等の多様な外国人の受入れ促進など
  • 外国人家事支援人材の活用

国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律の概要

海外子会社等の外国人従業員の日本への受け入れ促進

介護分野での外国人の受け入れ
出入国管理及び難民認定法の一部を改正

出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の概要

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