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市場縮小を恐れずに、人材業界に一石を投じる。ABABA代表が語る「人を救い、世に尽くすHR」とは

株式会社ABABA
代表取締役社長
久保 駿貴 氏
くぼ・しゅんき/1997年生まれ。兵庫県明石市出身。岡山大学4年次に友人が就職活動を通して”うつ状態”になったことを機に就職活動の過程が評価されるスカウト型サービス『ABABA』を開発。現在では、新サービス『REALME』と合わせて約3,000社の企業と累計15万人以上の就活生が利用するまでにサービスを拡大する。これまでに18.2億円の資金調達を実施し、最年少で経団連に入会したほか、経済産業大臣賞、東京都知事賞、「Forbes30 Under 30 Asia」など数々の賞を受賞。現在も会社経営の傍ら岡山大学大学院に在学中。

最終面接で不合格になった学生が、他社からの優遇スカウトを受けられる──そんなユニークなサービスを展開する株式会社ABABA。サービスが開発された背景には、「ミスマッチを減らし、人材の価値を最大化したい」という想いがあった。

本記事では、ABABA代表の久保駿貴氏にインタビュー。同社の掲げる「人を救い、世に尽くすHR」という理念や、従来の採用プロセス・人材業界の構造に一石を投じる挑戦について掘り下げていく。

人材業界の「ミスマッチで収益を上げる構造」に対する課題意識

スカウト型サービス「ABABA」最大の特徴は、選考の「過程」が評価される点だ。学生が最終面接まで進んだ末に不採用となった企業を登録すると、採用競合や同じスキルを求める企業から選考免除などの優遇スカウトが届く。

「ABABA」開発のきっかけは、仲の良い友人が就活で苦しんでいる姿を目の当たりにしたことだった。

「第一志望で最終面接まで進んでいた企業から『お祈り』されたことでひどく落ち込み、最終的にはうつのような状態になってしまったんです。今までその会社に受かるために頑張ってきたのに、報われないのは辛いですよね。就活生の頑張りがきちんと評価され、報われるサービスを作りたい。そんな思いで『ABABA』を開発しました」

こうした原点を持つ同社は、創業当時から一貫して「就活生ファースト」をプロダクト開発の基本方針に据えている。2024年にはAI面接で可視化された学生の能力や価値観と、企業の採用要件をもとにマッチングを行う「REALME」をリリースするなど、学生目線のサービスを続々と世に送り出している。

「最終面接データ」に基づいた独自性の高いプロダクト設計が話題を呼び、業界からはさまざまな反響が寄せられている同社。久保氏は、ある人材業界関係者から印象的な言葉をかけられたという。

「ABABAのプロダクトは高いマッチング精度で、人と企業のミスマッチを減らすことができるだろう。でもミスマッチが減少すると、HR市場そのものも縮小してしまうのではないか?」

これに対し、久保氏は「それこそが、今の人材業界の構造的な問題だ」と指摘する。

「今の人材市場は、企業と人材のミスマッチが多いほど儲かるようになっています。たとえば新卒社員がせっかく就職しても、3年後には約3割の人が『自分に合わない会社だった』と転職してしまう。一因として、人材会社がメディアや広告を通じて転職を煽っている影響もあるのではないでしょうか」

同社が目指すのは、「自分にマッチする一社」で長く活躍し、キャリアアップができる社会だ。ミスマッチ由来の転職が増えると、求職者のキャリア形成の遅れや企業の生産性低下にもつながる。久保氏は「今の人材業界の構造は、日本社会全体にとってマイナスが大きい」と言い切った。

ミスマッチ解消のために「あえて人材を見せない」? スカウトの疲弊感を減らす、業界初の試み

「就活生ファースト」「ミスマッチ解消」という信念に基づき、他社とは異なるアプローチを取るABABA。その姿勢はセールスの方針やプロダクトの機能にも現れている。

たとえば「ABABA」では、あえて企業側の画面に「全学生を表示させない」仕組みを採用している。登録情報から明らかに要件と合わない学生は、企業画面に表示されない設計だ。

「「学生は何十通ものスカウトを受け取ると、その選別だけでも疲弊してしまいます。また人事担当者も、自社が埋もれないように、何百通もスカウトを送らなければいけなくなる。この状況に陥るとミスマッチも生まれやすいですし、誰も幸せにならないなと思いました。

もちろん、採用で偶然の出会いが功を奏することもありますが、スカウトサービスではその確率はごくわずか。それなら、企業の採用ターゲットにマッチする学生を中心に表示させ、スカウトが乱発される状況を避ける方が重要です」

就活生ファーストとミスマッチ解消を徹底したサービス設計に、学生からは「就活のときにこんなサービスがほしかった」と好意的な声が集まった。一方、業界関係者や投資家からの反応は冷ややかだったという。

「新卒市場はそもそもそこまで大きくないですし、学生起業家が就活系サービスを立ち上げるのはよくあること。色々な業界関係者やエンジェル投資家に話をしても冷たくあしらわれ、相手にされないことの方が多かったですね」

しかし、そんな苦労の時期を乗り越え、現在は約3,000社の企業と累計15万人以上の就活生に利用されるまでに成長を遂げた。サービス成長の背景には、企業を巻き込んだ取り組み「お祈りエール」があった。

お祈りエールとは、企業が学生へ不採用メールを送る際、「最終面接まで頑張ったあなたへ」といった前向きなメッセージとともに「ABABA」を紹介してもらう取り組みだ。「不採用連絡をもらった学生が次の一歩を踏み出せるように」。そんな思いに共感するクライアントを中心に広がったこの取り組みが、今ではビジネス上の差別化につながっているという。

「不採用通知は、企業が学生に送る1通きりの接点です。この文面に入り込めるサービスはうち以外ほとんどない。そこを抑えることができたのは大きいです。近年は不採用者が多い大手企業の導入が進み、『ABABA』の認知もさらに広がっています」

草の根的な活動を積み重ねて事業をスケールさせた同社。「初期は本当に大変だったが、応援してくれる方たちの力を借りながらここまで来れた。頑張って本当によかった」と久保氏は当時を振り返った。

「日本一の最終面接データ」を武器に業界変革へ

同社は今後「最終面接のデータを日本一持っている」という強みを活かし、データとAIを活用してマッチング効率を向上させる方針を掲げている。そのカギを握るのが、ABABAが収集している学生の合否情報データだ。

現在「ABABA」には「最終面接まで進んだ学生が、いつ、どの企業に受かり、どの企業で落ちたのか」「同じ学生が複数の企業でどう評価されたのか」など、各採用企業の相対比較が可能な形でデータが蓄積されている。

「ナビサイトや就活クチコミサイトで得られる情報に加えて、この『合否情報データ』を掛け合わせることで、新卒採用企業の『実質的な採用ライン』や『評価項目の傾向』を、高い精度で推測できるようになるんです。これはデータを持っている僕たちにしかできない。最終的には、学生・企業が就活の軸や採用要件を入れるだけで、AIエージェントがぴったりの1社/1人を推薦してくれる仕組みを作りたいですね」

学生にとって、何通ものスカウトが届き、何十社もエントリーしなければいけない今の就活の現状は決して健全とは言えない。企業も、採用予定10名に対して100倍以上の応募を「処理」する状態が続いている。そんな構造から両者を救い出すことがABABAの目標だ。

久保氏は「大手サービスの批判をしたいわけではない」と前置きしながらも、「新卒領域では、とりあえずで大手のサービスを使う状況が長く続きすぎている。その仕組みから抜け出さないと、採用は一生効率化できない。そろそろゲームチェンジが必要なんじゃないか」と話す。そう語る口調には、新卒採用市場そのものをアップデートしようという強い決意が感じられた。

久保氏は最後に、日々求職者と向き合う人事へ向けて、「求職者を導くために、まず自分たちが変わろうという意識を持とう」と呼びかけた。

「例えば採用活動を行う中で、面接をドタキャンされることもあるじゃないですか。そのときに文句を言うのではなく、ドタキャンされないためにはどうしたらいいかを考える。そういう姿勢を示せる方こそ、採用を前に進められるんだと思います」

そして日本全体の成長を見据える久保氏は、「外資企業に負けない魅力を日本企業にもっと持ってほしい」と締め括った。

「採用力は給与水準などに左右されるため、どうしても外資企業が有利になりがちです。でも、それに勝る魅力を日本企業は持っているし、自らつくり出せるはずです。優秀な人材が国内企業で活躍できる、そんな環境を一緒に作っていきたいです」