【ビズリンクの人材市場改革#02】2023年は新たなフェーズへ。ビズリンクの軌跡とこれから

株式会社ビズリンク
代表取締役
姜 大成 氏
かん・てそん/大学在学中に経営者インタビュー雑誌の立ち上げやSNSシステムの開発に携わる。2009年、経済や組織を学ぶために新卒で銀行に入行。2012年、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア)に転職し、社内ベンチャーの立ち上げを経験。トップセールスとして事業拡大に貢献。2015年に現在の株式会社ビズリンクの前身にあたる株式会社Growtherを創業し、2019年に社名を株式会社ビズリンクに変更。

「未来の“はたらく”あたりまえ」を創るビズリンクの人材市場改革

2015年に設立された株式会社ビズリンク。人材市場の改革を目指し、「未来の“はたらく”あたりまえを創る」をビジョンに掲げる。本特集では、ビジョンの実現に向けて突き進むビズリンクのこれからを追う。

株式会社ビズリンクは「未来の“はたらく”あたりまえを創る」をビジョンに掲げ、フリーランス・副業人材のマッチングプラットフォーム「Bizlink」をはじめとするサービスを展開している。第二弾となる今回は、ビズリンクがビジョン実現のために行ってきた施策を振り返り、さらに今後の動向について深堀っていく。

ビズリンクが見据える「未来の”はたらく”あたりまえ」

近年は終身雇用制度の崩壊や企業寿命の短命化などにより、一つの企業に固執することなく働く人が増加傾向にある。フリーランスで働くことやプロジェクトごとに人材が集まったり解散したりすること、リモートワークで海外の仕事をすることなどは、これからますます一般的になっていく。ビズリンクはこうした会社や時間、場所にとらわれない働き方を「未来の”はたらく”あたりまえ」と定義し、そのあたりまえを「創る」ことを目指している。

代表の姜氏は特集の第一弾で、ビジョン「未来の“はたらく”あたりまえを創る」の実現に向けて人材市場そのものを改革するために、ある目標を掲げていると語った。

「人材市場に改革を起こすためには、『未来の”はたらく”あたりまえ』と現状の間に存在するたくさんのギャップを一つひとつ埋めていく必要があります。そこで、私は『一つの課題を解決する事業を売上100億円規模で1,000個作る』ことを目標にしています。そうすることで未来の目標に対するギャップを埋め、我々が思うあたりまえに到達したいと考えているんです」

現在ビズリンクは、エンジニア等のフリーランス人材を企業へマッチングする「ビズリンクフリーランス」を筆頭に、5つの事業を展開している。「ビズリンクフリーランス」以外では、DXプロ人材のスキルをシェアする「ビズリンクプロシェアリング」やBPO事業を運営。また子会社として、人材紹介業を行う株式会社ビズリンクキャリアや、フリーランス人材に福利厚生や社会保障制度を提供する一般社団法人ITフリーランス協会を展開している。

事業拡大に費やした2022年

多角化経営により複数事業を展開しているビズリンク。2022年は既存事業の拡大と新規事業の展開に注力してきたという。

「既存事業については、拡大路線で投資をした1年でした。主要事業である『Bizlink』に関しては、フリーランスエンジニア専門のエージェントサービス『REA tech(リアテック)』を事業譲受し、登録者の情報や顧客の拡大を図りました。営業リソースを増やしつつ、フリーランスの集客を目的とした広告にも力を入れています。

また『ビズリンクプロシェアリング』では、一都三県を中心にDXやマーケティングの課題に対してプロのスキルをシェアしています。同事業に関しても投資を続け、従業員数など組織の規模はこの1年で3倍近く拡大しています」

主要事業の拡大と並行して、ビズリンクは業務提携も積極的に進めている。地場の顧客を持つ全国の税理士法人やフルリモート求人特化型転職サイト「ReWorks」、プログラミングスクール「DMM WEBCAMP」を運営するインフラトップ社など様々な業態との提携により業務拡大を図ってきた。さらに新規事業においては、新卒採用イベントの定期開催やエンジニア特化型ダイレクトリクルーティングサービス、就労移行支援事業の展開を進めている。

「ビズリンクキャリアという子会社では、『ビズコン』と『テクスカ』という二つのサービスを新たに展開しました。『ビズコン』では、コロナ禍でビジネスパーソンと関わる機会が減ってしまった新卒の学生向けに、就職イベントを定期的に実施。今年度当社に新卒入社したメンバーを開発室長に抜擢するなど、若い組織でアグレッシブに展開している事業です。

もう一つの『テクスカ』は、事業を譲り受けて新規参入した事業ですね。エンジニア特化型のダイレクトリクルーティングサービスで、転職したいエンジニアとエンジニアを採用したい企業のマッチングを行っています。これにより今まで以上にエンジニア人材を紹介できる体制が整ったので、企業だけでなく個人の方も含めてより多くの方にサービスを提供したいです。

さらに就労移行支援事業の展開を進めており、2022年12月に『ビズリンクウェルビーイング』というグループ会社を設立しました。社会福祉事業を展開したく、まずは2023年4月に就労移行支援事業所を開設する予定で立ち上げに動いています。うつ病などの精神障害や発達障害を持つ方を対象にした就労移行支援施設で、プログラミングやITの一般的なスキル、デザインスキルなど、IT企業で求められるスキルを習得してもらうことで一般企業への就職を支援します。完全な新規事業として、5年間で100事業所の開設を目指して展開したいですね。

もっと多くの方が豊富な選択肢からキャリアを選べて、前向きに生きられる社会を作るための施策に取り組んでいるところです」

人材業界を牽引する大手企業の影響もあり、終身雇用から転職が当たり前の時代に切り替わっている。近年ではさらにリモートワークやフリーランス等、働き方のパラダイムシフトが起こっている。その中でビズリンクは、”はたらく”を軸としてライフプランに沿った事業を展開していきたいという。

「魅力ある組織づくり」で採用を強化

事業の拡大には、人員確保のための採用が欠かせない。ビズリンクは採用強化のため、会社全体で魅力ある組織づくりに取り組んでいる。2022年11月には世界60カ国7,000社を超える企業の働きがい調査を行う「Great Place to Work® Institute Japan」より、日本における「働きがいのある会社」にも認定された。

「より良いサービスをお客様に届けるには、どうしても人員が必要になります。そのため、ビジョンに共鳴してくれる優秀な人材の採用にはかなり力を入れています。数多くあるベンチャーの中から当社を選んでもらうためにも、魅力ある組織づくりが必要だと考え、会社の文化や社内制度にも非常に注力していますね」

魅力ある組織づくりの一環として、ビズリンクは社員が自発的に起案できる環境を大事にしている。そのための社内制度の充実も図り、すでに多くの社員が制度を利用して起案し実行に移していると姜氏は続ける。

「たとえば、2022年に入社したばかりのメンバーが自分で勉強会を起案して運営まで行っています。また社内エンゲージメントの向上については、役員主導ではなく社員自身がやるべき施策など考え、役員にプレゼンしたり運営したりしています。具体的には、社内掲示板やサークル部活動などが社員によって自発的に行われています。やはり人間誰しも人に指示されてやるより、自分たちで考えてやった方が楽しいですよね。なので我々は、楽しみながら仕事して成長できる組織文化をベースに、様々な制度に取り組んでいます」

2023年は新たなフェーズへ

2022年は基盤固めと新規参入に注力してきたビズリンクだが、2023年は新たな成長段階に入るという。ビズリンクの2023年はどのようなフェーズへと移っていくのだろうか。

「年明けから新しいオフィスでの営業を開始しました。最寄り駅から徒歩1分の好立地と旧オフィスの2.5倍という広さで、社員にとっても来訪者にとっても快適な環境になっています。さらに、セミナールームも設けられているので、自社開催イベントの頻度や質の向上が期待できるとともに、パートナー先との共催セミナーなど幅広い企画を進めることができそうです。

また、2023年は地方展開にもチャレンジしたいと考えています。既に大阪・福岡・札幌に事業所を開所しているのですが、いずれも協業先の事務所に間借りをさせてもらっているなど常駐するメンバーがいない形式上のオフィスなんですね。今後はしっかりと常駐できる人材を置いてエリアを拡大し、課題を抱える地方の企業や登録者の方々のサポート充実させていきたいです」

環境の整備によるサービスの質の向上や地方への展開を進めたいと語る姜氏はさらに、人材業界において存在感を示す1年にしたいと続ける。

「3月末までとなる今期は、グループ全体で20億円の売上を目指しています。20億円を達成した先は、前年比で200%となる年商40億円をどう達成するかが壁となる中で、大手競合他社の中でどれだけ存在感を示せるかが重要となる1年だと思っています。競合他社と比較して選んでもらうためには我々のサービスの真価を発揮することが重要ですね。これまでは拡大一直線で幅を広げることに集中してきましたが、これからは今まで以上にサービスの質を高めて競合優位性を磨くことにフォーカスしていきたいです」

世界一の総合人材カンパニーとなるために

2023年は新たなフェーズに向かうビズリンク。さらに3年後には上場、そして将来は世界一の総合人材カンパニーになるために突き進んでいくという。

「3年後の上場を視野に入れているので、上場するまでの道筋について解像度を高めていきたいです。そのためには売上を上げるだけでなく、目標予算に対する実績管理の確実性やサービス品質の向上、社員一人ひとりの水準を高めるなど、細かい部分をきちんと醸成したいですね。そして、上場出来て初めて人材市場に変革を起こせるスタートラインに立てるんじゃないでしょうか。そこからが人材市場を支えていく本格的な戦いとなりますが、中でも海外マーケットをどう捉えるかが特に重要ですね。海外マーケットでの成功例が少ない市場の中で、突破口を見つけて長期的に成長していく仕組みを作っていきたいと考えています。

大手企業のように知名度やイメージが先行して人材が集まる現代において、中小企業やベンチャー企業は良いサービスや組織を持っていても人材を採用しづらい環境にあります。凝り固まった基準で面接力を評価する現代の採用では、成果を出す機会を得られていない人材も多くいます。そういった人たちを救い、働く機会を平等にして人材の流通を最適化させることが未来の”はたらく”あたりまえを創ることだと考えています。そして日本だけではなく、世界レベルでの人材市場の改革に向けてひたすらに進み続けていきたいですね」