【ビズリンクの人材市場改革#01】ビズリンクが目指す「未来の“はたらく”あたりまえ」とは?

株式会社ビズリンク
代表取締役
姜 大成 氏
かん・てそん/大学在学中に経営者インタビュー雑誌の立ち上げやSNSシステムの開発に携わる。2009年、経済や組織を学ぶために新卒で銀行に入行。2012年、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア)に転職し、社内ベンチャーの立ち上げを経験。トップセールスとして事業拡大に貢献。2015年に現在の株式会社ビズリンクの前身にあたる株式会社Growtherを創業し、2019年に社名変更。

「未来の“はたらく”あたりまえ」を創るビズリンクの人材市場改革

2015年に設立された株式会社ビズリンク。人材市場の改革を目指し、まずはフリーランス市場で「未来の“はたらく”あたりまえを創る」をビジョンに掲げる。本特集では、ビジョンの実現に向けて突き進むビズリンクのこれからを追う。

近年は働き方が多様化し、フリーランスの道を選ぶ人も増えている。そんな中、ITフリーランス向けマッチングプラットフォーム「Bizlink」をはじめとしたサービスを展開するビズリンク。今回はビズリンクの軌跡を追う特集第一弾として、起業の背景や「未来の“はたらく”あたりまえ」とは何か、そして今後の展望について代表取締役の姜氏に話を伺った。

まずはフリーランス市場の改革から

15歳から起業したいと考えていた姜氏は、前職で初めて人材市場に関わり、中でもフリーランス市場に着目をする。

「2015年当時、人材市場はまだ未成熟な部分もあり、パラダイムシフトが起きている最中だと感じたんです。その中で当時フリーランスでライターをしていた姉は、営業が得意ではなかったので安価な案件ばかりを請け負っていました。

技術があっても良い仕事を見つけられないという課題を目の当たりにし、人材の流通における不透明さやミスマッチが起きている現状を認識したんです。働き方自体のパラダイムシフトが起きている中、フリーランスの方を支えるサービスを作っていかないと社会が成り立たなくなってしまうと感じてビズリンクの起業にいたりました」

自身の周りからフリーランスの市場の課題に着目した姜氏。現在フリーランス市場で起きている課題は大きく3つに分けられるようだ。

フリーランス市場が抱える3つの課題

1つ目の課題は、自身に合った仕事を見つけにくいことだ。フリーランス人材は自分自身を売り込んで案件を探すという性質から、営業経験のない人は仕事を探しづらい現状がある。

「フリーランスと言っても、エンジニアやライター、ウェブデザイナーなど様々な職種があります。スキルがあっても営業は得意ではない方のために、案件を探すプラットフォームももちろん存在します。ですが、その案件のほとんどが単価の安いものなんです。よい仕事を見つける手段がまだ確立されていないことが一番大きな課題だと感じます。

続いて、フリーランス人材の社会的立場が弱いことが2つ目の課題です。例えば福利厚生が確立されていない点。そして仕事をしても対価が支払われなかったり、賃貸契約において審査が通りにくかったりします。フリーランスが安心して働くための環境整備がまだまだされていないんですね」

中でもIT業界においては多重下請け構造が原因となり、ミスマッチや業務に見合った対価が支払われないなどの課題を抱えているフリーランスが多いと姜氏は語る。

多重下請け構造とは

発注者から委託された業務が、元請け企業から二次請け企業やさらにその下層の企業に流れていく構造。IT業界ではクライアントから発注を受けた元請け企業が、下請けに仕事を依頼して実際の作業を行ってもらう構造が主流である。

「多重下請け構造の原因は日本特有の開発構造にあります。例えば、アメリカなどではプロジェクトごとに人材が集まるんですね。ですが、日本では大手企業が下請けとなる会社を作り、その会社がまた下請けに案件を流していく。日本における組織や経済の成長の在り方が作り出した負の遺産だと思っています。

なぜ開発案件の業務を下請け企業に依頼する慣習が強いのかというと、特に大手企業ではゼネラリストの管理職が役職についた際に、まずは『リスクをとりたくない』と考える人が多いからです。そうすると開発の案件は過去に取引実績のある発注先に依頼する方がリスクが低いため、こうした考えが日本全国で波及的に起こってしまいました。結果として、多重下請け構造のようなモデルができたのだと考えます。また、フリーランス人材は多重下請け構造の中でも下層に位置するケースが多いので、労働に見合う対価を得られなかったり案件が急に終わってしまったりすることもあるんです」

最後に、フリーランスは1人で働くことが多いため成長できる幅が狭いことも課題だという。

「最近では特にコロナ禍でリモートワークが普及して、人と全く話さずに仕事をする人もいます。そうすると新しい気付きや学びが生まれにくいんですね。外部的な刺激が少ないことで、点として強い人材になる環境が生まれやすくなってしまいます」

「未来の“はたらく”あたりまえ」の実現に向けて

課題を抱えるフリーランス市場の改革に取り組むビズリンクは、「未来の“はたらく”あたりまえを創る」ことを目指している。姜氏が考える「未来の“はたらく”あたりまえ」とは何か伺った。

「『“はたらく”あたりまえ』とは、その時代における働き方の価値観を指しています。例えば過去のあたりまえは、大手企業に新卒入社して同期は500人程いてみんなで競い合う。そして現在のあたりまえは新卒入社した会社から3年くらい経ったら転職して、転職を数回したのちはフリーランスになったり起業したりする人もいますよね。そんな中我々は、『未来の”はたらく”あたりまえ』とは何かという部分に着目しています。

私が考える『未来の”はたらく”あたりまえ』とは、会社や時間、場所にとらわれない働き方です。実は会社の寿命は年々短くなっているので、会社に固執せずに働く必要性が高まっています。フリーランスで働くことやプロジェクトごとに人材が集まったり解散したりするのはもちろん、リモートワークで海外の仕事をすることなどを『未来の”はたらく”あたりまえ』と定義しているんです」

「未来の“はたらく”あたりまえ」の実現に向け、姜氏は人材市場そのものを改革するためにある目標を掲げていると語る。

「もちろん現在運営しているサービスを必要な人に届けることも重要ですが、それでは人材市場に数多くある課題のうち1つしか解決できないんですね。『未来の”はたらく”あたりまえ』と現状には未だたくさんのギャップが存在しているので、その1つ1つのギャップを埋めていく必要があります。

そのため、私はずっと『1つの課題を解決する事業を売上100億円規模で1,000個作る』を目標にしています。そうすることで未来の目標に対するギャップを埋め、我々が思うあたりまえに到達したいですね」

現在ビズリンクは、エンジニア等のフリーランス人材を企業へマッチングする『ビズリンクフリーランス』を筆頭に、5つの事業を展開している。『ビズリンクフリーランス』以外では、DXプロ人材のスキルをシェアする『ビズリンクプロシェアリング』やBPO事業を運営。また子会社として、人材紹介業を行う株式会社ビズリンクキャリアや、フリーランス人材に福利厚生や社会保障制度を提供する一般社団法人ITフリーランス協会を展開している。

「現在は5つの事業を並行的に展開していて、今後も新しい事業のスタートを計画しています。全ての事業を右肩上がりに成長させていくことは非常に難易度も高いですが、マネジメントを仕組化することで再現性のある状態にできると考えています」

姜氏が見据えるフリーランス市場の今後

最後に、フリーランス市場が今後どう変わっていくかを伺った。

「自分自身がスキルを持つ人材は、社員として働くよりもフリーランスになる方が給与が高くなる傾向があります。したがって短期的な目線で考えると、特にエンジニアやデザイナーなどがフリーランスに転じる傾向は今後強まっていくんですね。

長期的には、フリーランス市場における二極化が進むと考えます。フリーランスとしてしっかり収益をあげられる人とそうでない人が出てくるので、それぞれのレイヤーに応じたプラットフォームに二極化していくのではないでしょうか」

フリーランス市場が今後拡大していく中、ビズリンクはまず国内市場に注力してプラットフォームとしてサービスの向上に努めたいと語る姜氏。その後の更なる展望を伺った。

「現在は、フリーランス市場でダイレクトリクルーティングができる仕組みも作っています。ただ、普段は案件を下請けに発注している大手企業が、いきなりフリーランスに直接オファーすることはなかなか難しいんですよね。したがってまずは、情報感度高くフットワークの軽いベンチャーやメガベンチャー企業の方々に利用していただきたいと考えています。また、システム開発などの案件にエンジニアを提供しているSES企業の方々にも活用いただく予定です。

SES企業はエンジニアを多数採用しているのですが、多重下請け構造の下層で仕事をしているケースも多いんですね。我々が開拓した案件の発注元に直接応募できる仕組みを作ることで、SES企業の売上や利益を高めることができます。中期的にはエンジニアのデータベースを集めることで、マッチングの自動化やリコメンド機能の実現を進めていきたいですね」

「未来の“はたらく”あたりまえ」を目指し、人材市場の改革に向けて動いているビズリンク。社会的なパラダイムシフトを起こすビズリンクの動向に注目だ。