【地方×HR#03】求人データから見るデジタル人材需要と実態(前編)【ウェビナーレポート・11月11日開催】

(右)登壇者:株式会社YOUTURN
代表取締役
高尾 大輔 氏
たかお・だいすけ/2005年リクルートエージェントにて人材紹介のキャリアをスタート、2009年よりプロコミットにてベンチャー企業に特化した転職支援に従事。2018年よりYOUTURN取締役として人材紹介事業責任者を務め、2021年10月より代表取締役就任。

(中央)モデレーター
藤澤 さしみ 氏
芸人・落語などの演者としての活動の傍ら、一部上場企業にてイベントプロデュース事業部の責任者を経て独立。営業~制作~プロデュース~演者と、イベントの全行程のプロデュースを行う。

(左)登壇者:株式会社フロッグ
代表取締役 /HRog編集長
菊池 健生
きくち・たけお/2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、2017年ゴーリストへジョイン。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務め、2019年より取締役、2021年より株式会社フロッグ代表取締役に就任。

ウィズコロナ時代を見据えて 地方×HRの最前線

新型コロナウイルスは「はたらく」のあり方を大きく変えました。リモートワークが一般的な働き方として社会に受け入れられるようになり、一部の企業では本社機能を首都圏から地方へ移転するなど、ビジネスにおける距離の壁はどんどんなくなってきています。そして地方の中にはこの状況を地域経済成長のチャンスととらえ、人材系企業とともに戦略的な経済・雇用支援に取り組んでいるところもあります。本特集では地方と人材系企業の協業プロジェクトや地方における求人動向のトレンドを取り上げながら、地方×HRの最前線を紐解きます。

2021年11月11日に開催された、福岡県企業のDXをテーマにしたVR展示会とオンラインセミナーなどの総合イベント「FUKUOKA DX WORLD」では、株式会社YOUTURNの高尾氏とHRog編集長の菊池、モデレーターのさしみ氏がディスカッション。データをもとに地方採用の現状を確認しながら、地方企業が改革を担える優秀人材を採用するために重要なことについて語りました。今回はその様子を前後編に分けてレポートします。

求人データで見る、東京一極集中の実態

さしみ「まずは、東京と地方の正社員の求人数にどれぐらい差があるのか伺いたいです」

フロッグ菊池「弊社が提供している『HRogチャート』を用いて、11月第1週目の正社員系求人数を検索してみましょう。まずはこちらがハローワークの都道府県別求人数です」

ハローワークの都道府県別求人数

菊池「東京が最多ですが、全国に求人が分布しています。次に人材紹介と求人広告媒体の求人数を見てみましょう」

求人広告・人材紹介系媒体の都道府県別求人数

さしみ「一か所が突出しているグラフですね」

菊池「突出している部分は東京で、5万件ほどあります。2番目に多い大阪が1万件程度ですので、掲載されている求人のほとんどが東京の企業ですね。掲載無料のハローワークでは比較的まんべんなく求人が分布しているのに対し、人材紹介や求人媒体を利用して有料で採用している企業の数で見ると、このような東京一極集中になります」

さしみ「高尾さん、このグラフを見ていかがでしょうか」

YOUTURN高尾「予想以上の一極集中ぶりに私もびっくりしました。ハローワークよりも有料の求人サービスの方がその傾向が顕著なのは、これまで東京に比べて地方の企業は『お金を出して人を集める』ことをしてこなかったからではないでしょうか。福岡の経営者や事業責任者、人事の方にお話を聞くと、これまでは年間の採用計画に合わせ、欠員補充の人員や決まったポジションの人材を集める単純な採用活動だけを行う企業が多い印象でした。しかし、これからそのスタンスも変わってくると予感しています。

近年、地方でも会社の規模を問わず、組織変革やDXを担う人材が必要だという声が増えています。一方で、そのような人材は従来のやり方ではなかなか採用できません。地方では優秀な人ほど大企業に入社してずっとその企業で働き続ける風潮があり、いわゆるハイクラス人材が流動しないため、そもそも即戦力市場がないんですよね。だからこそ東京や大阪などの大都市からお金をかけて採用していかなければならないという認識が、少しずつ地方企業の間に広まってきているようです。特に地方の比較的大きな都市圏では、東京にいる人材の採用がこれから加速するのではないでしょうか」

どこでも働ける今だからこそ、地方企業に必要な「ビジョンマッチ」の考え方

さしみ「菊池さんが『今後リモートワークが浸透してグラフの形も変化するのでは』と仰っていましたが、福岡にいながら東京の企業で働く、また東京にいながら福岡の企業で働くなど、自由な場所で働く人が増えるということでしょうか」

菊池「増えると思います。コロナ禍をきっかけに『そもそも東京に居る理由がないよね』と移住した方も一定数いますよね。弊社でも、埼玉在住で東京のオフィスで勤務していたメンバーが、新事業所の立ち上げに伴って今年2月に宮崎に移住したのですが、日報で『サーフィンを始めました』と報告があるなど、非常に充実した生活を送っているようです」

さしみ「サーフィンをはじめ地方じゃないとできない体験というのが、地方求人の成功パターンの1つでもある、都市との違いをいかに発信していくかというポイントなのでしょうか?」

高尾「現状はそうです。実際、福岡の企業に『御社で働くメリットはなんですか』と聞くと、『住みやすい』『自然が近い』など会社の魅力よりも福岡の魅力を挙げる傾向があります。

ただ菊池さんのお話のように、東京の会社が地方に住むことをOKとし始めていますよね。最近の事例をお話しすると、とある福岡の企業から内定をもらった候補者が東京の会社に退職交渉をした際に、『福岡に帰りたくて退職するなら、辞めずに福岡からフルリモートで働けばいいよ』と言われ、結局転職せずに福岡に移住したということがありました。リモートワークの普及により、もう地域の魅力で訴求するだけでは人材が取れなくなってきています。今後は会社のビジョンなどでもっと訴求していかないと、地方企業の採用は厳しくなってくるでしょう」

菊池「その観点でデータを見るなら、ビジョンマッチ型のビジネスSNS『Wantedly』の求人分布が象徴的です」

Wantedlyの都道府県別求人数

さしみ「一本槍!」

菊池「ほぼ東京の求人しかないんですよ」

さしみ「栃木や山形は全くないように見えます。確かにWantedlyではあまり地方企業を見かけないなと思っていました」

菊池「ご存じの通り、Wantedlyはビジョンの発信をメインとした求人サービスなのですが、利用企業が極端に東京に偏っているのが現状です。しかし、改革を担う優秀人材を採用したい地方企業ほど積極的にビジョンを発信していった方が良いと私は考えます。このあたりは高尾さんの方が詳しくお話できるところでしょうか」

高尾「現在ニーズの高まっている変化・変革を担う人材というのは、いわば優秀な方であり、今働いてる場所で大活躍している方がほとんどです。転職の必要に迫られている訳ではないし、とくに地方への転職もアリだと考えている方々にとっては、転職の軸は年収などではありません。ビジョンに共感できるか、この企業に貢献したいと思えるかどうかを判断基準に転職する方が多いので、地方の企業ほどビジョンや理念など共感を引き出す情報発信がより重要になると考えています。

また、これまでの求人票は年収や福利厚生が重視される前提で書かれていました。東京の求人と比べて、地方の求人は年収や福利厚生に関してはどうしても見劣りするので、どこか自信なさげな求人が多いんですよ。しかしウェルビーイングの考え方が広まってきている中で、一人一人の大切にしたいものが非常に多様になってきているので、今後は『どんな思いを重視している人に来てほしいか』を軸にメッセージを考えていくことが重要だと感じています。

実際に移住転職した方にアンケートを実施したところ、転職で年収が下がった方が6割~7割程度いる一方で、9割以上の方が幸福度が上がったと回答しています」

さしみ「なるほど、幸福度という指標もあるんですね。個人が大切にしたいものと会社のビジョンを上手くマッチングさせていければ、この一極集中の求人分布も全国に散らばっていきそうですね」

会社のフェーズ・ライフスタイル…自分に合った「環境」を求めての転職が増えている

さしみ「ビジョンマッチでの転職と定着率の関係についてはいかがでしょうか?」

菊池「定着率について話すと、1社あたりの就業期間はどんどん短くなってきていますね。事業の段階を『0→1』のフェーズ、『1→10』のフェーズ、『10→100』のフェーズと分けたとき、どのフェーズで活躍できるかは人それぞれです。『0→1』の得意な人が『1→10』フェーズの企業にいても真価を発揮できませんから、『0→1』のフェーズが終わった時には次の『0→1』の会社に行こうということで、ベンチャー企業に転職する方はこの10年~20年で確実に増えました。自分の強みで勝負していくために、企業のフェーズが変わるタイミングで転職をする。大手でない限り、1社あたりのキャリアはどんどん短くなっていると思います」

さしみ「なるほど。昔は1つの企業で働き続けることが一般的でしたが、今では自分のやりたいことに応じて転職という選択肢を選べるわけですね。続いて高尾さん、地方と都市で定着率に違いはありますか?」

高尾「東京の方が転職のチャンスや流通している情報量が多いので、転職しながらキャリアアップしていく方の割合は多いと思います。地方では東京ほど仕事の選択肢が多くないので、『この環境でどう頑張るか』を軸にキャリアを考える方が多いです」

さしみ「東京から地方への転職という話で言うと、Uターンという形で地元に戻る方以外に、全くの新天地に行くIターンの方も増えてるのでしょうか?」

高尾「Iターンも増えています。ただ地方と東京では働いている人の雰囲気が違いますし、仕事のスピード感や成果の追い方などにギャップがあります。ずっと東京で働いてきた人からすると『仕事のスピード感が遅いな』『もっとコミットしようよ』など、この違いをストレスに感じる方もいますね。

東京や大阪に出る選択肢もあったけれど、あえて地元で働くことを選んでいる方には、どちらかというと仕事よりも暮らしを大事にしている方が多いと感じます。自身もその価値観を持っている人か、そういう方々をリスペクトしながら良い距離間で一緒にやっていける人が地方で活躍できるのではないでしょうか。地方移住転職はただの転職活動とは少し違い、人生や生き方を再設計するプロセスでもあると日々感じています」

後編では、地方企業が「勝てる」求人の見せ方と、優秀な人材に刺さるアピールポイントについて紹介します。

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集計条件

集計対象日  :2021年11月1日
集計対象媒体 :ハローワーク、エン転職、doda、マイナビ転職、リクナビNEXT、リクルートエージェント、Wantedly
その他集計条件:雇用形態を「正社員」「契約社員」「人材紹介」に絞って集計

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